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アングル:ウクライナの越境攻撃にさらされるロシア若年徴集兵

ロイター / 2024年9月2日 15時51分

8月29日、 ロシア軍の徴集兵フサインさん(21)は、ウクライナ軍の捕虜になる直前の妻リアナさん(19)との通話で、いつもと変わらない調子でこう話していた。「全部大丈夫だよ」。 写真は招集された徴集兵。ロシア南部バタイスクで5月撮影(2024年 ロイター/Sergey Pivovarov)

Lucy Papachristou Mark Trevelyan Filipp Lebedev

[ロンドン 29日 ロイター] - ロシア軍の徴集兵フサインさん(21)は、ウクライナ軍の捕虜になる直前の妻リアナさん(19)との通話で、いつもと変わらない調子でこう話していた。「全部大丈夫だよ」

フサインさんは、7月中旬に所属部隊とともにロシア西部クルスク州の基地に派遣された。ウクライナとの前線までの距離は15キロだと話していたという。

リアナさんによると、フサインさんから最後に電話があったのは8月4日で、戦況は落ち着いているようだと話していたという。ウクライナとの戦争の気配といえば、眠る兵士たちを守るために上空で警戒するドローンの唸りだけだ、と。

その2日後、ロシア側の虚を突いて、ウクライナ軍の大部隊が国境を越えてクルスク州に電撃的な攻撃を仕掛けた。

フサインさんからの連絡はほぼ3週間途絶えた。25日になって、モスクワの病院にいる本人から電話があった。クルスクで捕虜になった他の100人以上のロシア兵とともに解放されたという。

所属部隊はウクライナ軍からの激しい砲撃を受け、生き残ったのはフサインさんの他2人の徴集兵だけだったと、フサインさんはリアナさんに話したという。

ロイターでは、フサインさんの証言の裏付けを取ることができなかった。

2人の姓を伏せる条件で取材に応じたリアナさんは、「夫は死ぬと思ったと話していた」と語る。

フサインさんとの間に18カ月の息子のいるリアナさんは、夫が生きていることに安堵しつつ、建設作業員だった夫が再びクルスクの前線に送り返されないか心配している。

「まだ若いし、人生は始まったばかりなのに」と、リアナさんは言う。

<口にしにくい話題>

ロシア人男性は30才になるまでに1年間の兵役を義務付けられており、毎年約28万人が徴兵される。ウクライナがロシア領に攻撃を仕掛けたことで、新参の徴集兵を戦場に投入すべきかどうか、国民的な議論が再燃している。

プーチン大統領は2022年、ウクライナ侵攻を開始してから2週間も経たない時期に、「徴集兵は戦闘行為に参加していないし、今後も参加することはない」と述べた。

だがその翌日、ロシア国防省は一部の徴集兵がウクライナで戦闘に参加していることを認めた。プーチン大統領は調査を命じ、責任者の処罰を約束した。

それから2年後、BBCロシア支局とロシアの独立系調査報道サイト「インポータント・ストーリーズ」が調査したところ、ウクライナ側の前進を阻むために数百人の徴集兵がクルスクに派遣されていることが分かった。そのうち数十人が行方不明、または捕虜になっているという。

ロイターでは、ソーシャルメディアへの遺族の投稿により、徴集兵2人が死亡したことを確認した。

ロストフ州南部の少年空手大会で入賞したこともある士官学校卒業生のアルチョム・ドブロダムスキーさんは、クルスクで死亡した。22才だった。

ロシア北西部出身のダニイル・ルブツォフさんは23年12月に召集令状を受け取った。母親が露「ノバヤ・ガゼタ」紙に語ったところでは、将来の夢は刑事になることだったという。8月7日にクルスク州で死亡した。18才だった。

徴兵回避の方法について男性らにアドバイスを提供しているロシアの市民団体は、徴集兵たちに職業軍人になる契約に署名するよう圧力がかかることを懸念しているという。

法務支援団体「シュコラ・プリジイブニカ(徴集兵学校の意)」の創設者であるアレクセイ・タバロフ氏は、10代の若者を中心とする徴集兵たちはこうした圧力に屈しやすいと話す。

電話での取材に応じたタバロフ氏は、「こうした若者たちを欺き、操り、脅迫することは簡単だ。脅しつけ、身体的な暴力を振るっておいて何のとがめ立てを受けないことだってできる」と語った。

タバロフ氏によれば、クルスクに配備された徴集兵の多くはほとんど軍事教練を受けておらず、「修理屋」同然に保守点検など簡単な任務を与えられているという。

「兵器に触れることさえないと話している徴集兵も多い。戦闘に参加する、何かを防衛するといった想定ではないことが確認できる」とタバロフ氏は言う。

タバロフ氏によれば、最近では極東ロシアやウラル山脈に近いバシコルトスタンといった地域の徴集兵からも相談を受けている。徴集兵らは、クルスクやその近隣のブリャンスク、ベルゴロドといった国境地帯への配備を告げられたと話しているという。

ロイターでは、ウクライナによるロシアへの越境攻撃が始まって以来、どの程度の人数がこれらの地域での戦闘に送り込まれたのか確認できなかった。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は、徴集兵がクルスクに配備され、職業軍人としての契約を強要されているというメディア報道に関する質問に対して、「大半の場合、そうした報道は事実を完全に歪めている。コメントする必要を感じない」と答えた。

<「国民皆兵」の主張>

ウクライナからの越境攻撃後、クルスクのロシア軍司令官の1人は、自分の息子は戦闘に参加するには若すぎる、あるいは経験不足なのではないかという親たちの懸念を一笑に付した。

チェチェン共和国の特殊部隊「アフマト」の指揮官であるアプティ・アラウディノフ少将は、テレグラムへの投稿で、「18才の徴集兵は男であり、おしゃぶりを与えてベッドに送り込むべき幼児のように扱うわけにはいかない」と語った。「弱い者から偉大な者まで、国内の全員が軍の隊列に加わらなければならない」

ロシアの軍事アナリストは、クルスクで戦闘に参加している徴集兵たちに、戦場で鍛えられたウクライナ軍部隊に対抗する術があるとは考えにくいと述べている。

米シンクタンクの欧州政策分析センター(CEPA)のパベル・ルチン氏は、捕虜になった中でも、5月か6月に徴兵されたばかりの兵士は、最低限とされる45日間の訓練しか受けていなかった可能性がある、と述べている。

CEPAの国防専門家ニコ・ランジ氏は、「ロシア軍の徴集兵にとって最善の策は、ただちにウクライナ側に投降することだ。彼らが戦闘で生き延びるのは無理だ」と指摘した。

(翻訳:エァクレーレン)

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