アングル:中国で薬草や茶葉に投機の波、経済低迷受け
ロイター / 2024年9月5日 7時39分
8月30日、 低金利、株安、不動産不況に見舞われている中国では、投機筋が高いリターンを求めて取引実態がよく分からない市場にまで資金を振り向け、中薬(伝統薬)の素材となる薬草や、高級茶葉などの価格が高騰している。写真は四川省雅安の茶畑で茶摘みのやり方を見せる職員。6月撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)
Samuel Shen Tom Westbrook
[上海/シンガポール 30日 ロイター] - 低金利、株安、不動産不況に見舞われている中国では、投機筋が高いリターンを求めて取引実態がよく分からない市場にまで資金を振り向け、中薬(伝統薬)の素材となる薬草や、高級茶葉などの価格が高騰している。
当局は一般の人々に、これらの商品の急な値上がりを巡る熱狂に惑わされないよう注意を促し、投機筋には価格つり上げを控えるよう警告した。
一部の薬草はこの2年で3倍も値上がりした。何種類かの高級茶葉は、数カ月で値段が倍になっている。
背景には、中国株の主要銘柄で構成するCSI300指数がが昨年まで3年続けて下落した後も低調な動きが続いていることや、債券利回りは過去最低圏に下がり、投資リターンを得られる先が限られるという事情がある。7月の新築住宅価格も9年ぶりの下落率を記録し、不動産不況の長期化が改めて示された。
こうした一般的な市場の低調ぶりが、相応のリターンを求める投機筋を茶葉や薬草の市場に駆り立てているようだと、取引業者は話した。
広州市のある茶葉ディーラーは、投機筋は常に存在するが、経済悪化で茶葉市場が彼らにとってより魅力的になっていると明かした。
<渦巻く熱狂>
中薬市場では「康美中国中薬材価格指数」が7月に過去最高水準に達した。3年間でおよそ50%上昇している。
健胃薬などに使われるオウレンなど幾つかの薬草は2年のうちに価格が3倍強に跳ね上がった。
中薬産業の拠点として知られる安徽省亳州市のディーラーの1人は、値上がりの一因として洪水による供給引き締まりがあるものの、より大きな要素は投機だとの見方を示した。
亳州市の中薬業界団体が7月、投機筋に価格つり上げをしないようくぎを刺すと、値動きにやや調整が入り、康美中国中薬材価格指数は最高値から約4%下がっている。
中国国家市場監督管理総局(SAMR)が8月9日に中薬を含めた医薬品セクター向けに独占禁止問題対応のガイドラインを公表したことも、投機筋の心理を圧迫し、当局による監視が厳しくなるとの観測が高まった。
一方で茶葉市場では、専門家の間で熟成が進むと品質が向上するされる高級なプーアール茶の取引が盛んで、ビンテージワインのように売買されたり収集されたりしている。
中国中央テレビ(CCTV)は今年1月に、茶葉取引拠点である広州市産のプーアール茶ブランド「昌世茶」の価格がレンガ型2.5キログラム当たり一時5万元(103万円)に上昇した後、翌日に80%余り急落して投資家に大打撃を与えたと伝えた。
こうした乱高下に伴って、中国茶のトップブランドを自認し、中国全土に500店を展開している泛茶控股(ファンチャ・ホールディングス)は8月に微信(ウィーチャット)の公式アカウントを通じた声明で、同社が「重大な危機」に陥ったと述べた。
危機の原因は明らかにされていないが、この声明発表をきっかけにファンチャの商品を買っていた人々からの返金要求が殺到。同社は買い手に対して茶葉と株式の交換を提案し、資産売却と増資の方針も打ち出している。
広州市の茶葉卸売市場があるリワン区当局は7月25日、茶葉取引には「膨大なリスク」があるとして投資家に厳重警戒を呼びかけ、安易な一攫千金の考えを捨てるべきだと訴えた。
ファンチャの茶葉を買った投資家の1人は、最初大きな利益を得られたが、声明発表後はつぎ込んだ資金が戻ってくるかどうか不安で眠れない日々を過ごす。
「もうけがあまりに魅力的でその誘惑に負けてしまった」と悔やんでいる。
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