アングル:トランプ次期米政権、LGBTQなど「政府用語」も変更か
ロイター / 2025年1月12日 7時48分
トランプ次期大統領の下で、米国は政策を大幅に変えるとともに、政府が使用する文言も大きく変更するとみられている。2024年12月、アリゾナ州フェニックスで撮影(2025年 ロイター/Cheney Orr)
David Sherfinski
[リッチモンド(米バージニア州) 7日 トムソン・ロイター財団] - トランプ次期大統領の下で、米国は政策を大幅に変えるとともに、政府が使用する文言も大きく変更するとみられている。
政府の公式ウェブサイトや文書から気候変動やLGBTQ+の権利に関する目立つ記載が削除されるとともに、移民問題では「書類のない移民」や「非市民」といった表現に代わって「不法在留外国人(illegal alien)」という用語が復活する可能性があると、専門家はみている。
非営利団体の環境データ&ガバナンス・イニシアチブでウェブサイトの監視を統括するグレッチェン・ゲルケ氏によると、トランプ氏の1期目就任前、研究者らは微妙な文言の変化を予想していた。しかし、実際には「ストレートな削除」が大半で、「大幅なアクセス削減や、多くの情報抑制を目にした」と指摘した。
ゲルケ氏らは今回、さらに極端な変化を覚悟している。気候変動から「多様性、公平性、包摂(DEI)」政策に至るまで、そうした変更は単なる言葉の定義を超えて重大な変化をもたらすかもしれない。
<正義を削除>
トランプ氏の政権移行チームの報道官、キャロライン・レビット氏は気候変動に関する言及がどの程度変更または削除されるのかという質問に直接回答しなかった。
ゲルケ氏と同僚がまとめた2018年の報告書によると、第1次トランプ政権は政府ウェブサイト上の気候変動に関するコンテンツを削除、もしくは目立たないようにしたり、気候変動の国際的な義務に関する情報を消した。
「問題を指摘できる情報を取り除くことが、目的の一部だったようだ」とゲルケ氏は言う。
バイデン政権は気候変動問題に再び焦点を当てた。環境汚染による負荷を、コミュニティーや人種にかかわらず平等に分配すべきだとする歴史的な「環境正義」を重視したこともその1つだ。
ゲルケ氏は、トランプ次期政権下で「正義に関する文言はすべて削除されると予想している」と語った。
<移民に関する表現>
不法移民を大量に追放することを掲げるトランプ氏の政策は、次期政権の政策優先事項の中で最も具体的に検討されている課題だと言える。
有効なビザ(査証)を持たずに米国に滞在する人びとを示す「書類のない移民」や「非市民」といった用語が廃止され、「不法在留外国人」という表現が復活する可能性もある。
非営利団体の米移民評議会の政策ディレクター、ネイナ・グプタ氏は「『不法』のような用語を使用すると犯罪性を連想させ、不法移民が経済や地域社会に貢献しているという現実を損なうことになる」と話す。
政権移行チームのレビット報道官は「不法在留外国人」という用語の公式使用を完全復活させる計画があるかどうかの質問に対し、トランプ氏は「不法移民の流入を阻止し、国境を安全にし、コミュニティーの安全性を損なう危険な犯罪者やテロリストを国外追放することを米国民から負託された。必ずやり遂げるだろう」と答えた。
<トランスジェンダーを抹消か>
トランプ氏が前回大統領に就任した際、政府はLGBTQ+問題への言及を減らした。今回も同様の措置を取る可能性があると、LGBTQ+の権利を訴える非営利団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンで政府対応をするデービッド・ステイシー氏は予想している。
保守派の活動家らがトランプ第2次政権誕生に備えて作成した政策青写真「プロジェクト2025」では、表現の自由を妨げる可能性があるとみなされた場合、「性的指向」、「性自認」、その他の用語を「現存する連邦規則、政府機関の規制、契約、補助金、規制、および法律の全てから」削除するよう求めている。
トランプ氏の選挙戦広告で、反トランスジェンダーのメッセージは最も頻繁に発信されたテーマのひとつだった。
ステイシー氏は「トランスジェンダーを社会から抹消し、社会での機能を奪うことを真に信奉する人を、彼らは増やそうとしているようだ」とし、「その意味で、最初の政権よりもはるかに危険な政権だ」と語った。
レビット報道官は、トランプ氏は「常識的な政策」を公約に掲げたと述べた。その政策とは、「教室でのジェンダーや性に関する議論の廃止、読み書きと算数に焦点を当てた公教育の再構築、連邦刑務所の受刑者に対する税金によるトランスジェンダー手術の廃止」だという。
調査によると、LGBTQ+コミュニティーの保護に対する国民の強い支持はほぼ変わっていない。
ステイシー氏は、この問題に関する敵対的なキャンペーンにもかかわらず、基本的な状況は変わっていないとし、「市民からの強い反対が予想される」と語った。
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