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焦点:一進一退の景気回復、首相不出馬で不透明感も リスク選好に距離

ロイター / 2024年8月15日 10時12分

 実質国内総生産(GDP)が2四半期ぶりのプラス成長となった。ただ、景気は一進一退の状況から脱しきれたとは言えず、本格的な成長には及ばない。写真は岸田文雄首相。8月14日、首相官邸で代表撮影(2024年 ロイター)

Takaya Yamaguchi Kentaro Sugiyama

[東京 15日 ロイター] - 実質国内総生産(GDP)が2四半期ぶりのプラス成長となった。ただ、景気は一進一退の状況から脱しきれたとは言えず、本格的な成長には及ばない。岸田文雄首相の自民総裁選不出馬に伴う不透明感もあり市場がリスク選好に傾くにはなお時間が必要とみられ、当面は下振れリスクに身構える展開となりそうだ。

<「反動の域」脱せず>

「自動車の挽回生産が消費や企業の設備投資などで広くプラスに寄与し、明るい兆しがみえた」。2024年4―6月期の実質GDPがプラス成長となったことについて、内閣府幹部の1人はこう語る。

消費はリーマン危機以来となる4四半期連続のマイナスから脱し、先行きも回復期待が広がる。6月の実質賃金が2年3カ月ぶりにプラスに転じ、政府内には「今後プラスが定着していく」(別の内閣府幹部)との声がある。首相周辺からは「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は底堅く、良い方向に向かっている」との声が聞かれる。

とはいえ、専門家の間では「1―3月期以前のゼロ成長やマイナス成長分は取り戻せていない」(民間シンクタンク)との見方が残り、景気は一進一退の状況から脱しきれたとは言えない。

内需を支える消費は、依然としてコロナ前のピークには及ばない。内閣府が公表した実質季節調整系列によると、24年4―6月期の消費支出額は約297兆円だった。14年1―3月期には約310兆円に達していたが、23年4―6月期からは300兆円に届かない状況が続く。

設備投資は約93兆円と過去最大となる19年7―9月期の規模に迫ったものの、「力強さに欠く」(前出のシンクタンク)と受け止める声が目立つ。

<株安・円高なお警戒>

市場が復調を続けられるかどうかも、今後の景気に影響しそうだ。日経平均株価は今月5日の史上最大の下落からは戻り歩調で推移しており、「株安について、正直そんなに政府に動揺はない」と、関係者の1人は語る。

一方で、「市場が落ち着きを取り戻すには、それなりの時間を要する」と、複数の政府関係者は口をそろえる。

岸田首相が14日に党総裁選への不出馬を表明したことで、新たな不透明要因も浮上。総裁候補として取り沙汰される河野太郎デジタル担当相や自民党の茂木敏充幹事長は7月の利上げに先立ち日銀に異例の注文を付けた経緯があるだけに、市場が再び動意付く可能性もある。

日銀の利上げとともに、市場の動揺を招いた一因とされる米景気後退懸念を巡っては「経済と物価の好循環実現は、米経済が崩れないという前提がある。今のところ懸念が先走りして米景気そのものが後退しているわけではないが、実際に米景気が後退すれば日本も無傷ではいられない」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志・上席エコノミスト)との見方がある。

    また、年初からの「頭痛の種」(首相周辺)だった円安圧力は株安とともに緩和したが、急速な円高進行にもリスクが伴う。

    市場では「株安を通じた不透明感の高まりが個人消費を下押しするほか、急速に円高に振れると企業業績が下振れし、来年の賃上げ機運が後退しかねない」(みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・主席エコノミスト)との指摘が出ている。

    直近の日銀短観によると、事業計画の前提となる企業の24年度想定為替レートは全規模全産業で1ドル=144.77円となっており、為替がどう推移するかは、今後の投資姿勢を左右しかねない。

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