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アングル:メタのニュース配信停止、政治分野で高まる情報操作リスク

ロイター / 2024年4月16日 15時20分

 4月15日、 米メタ・プラットフォームズが昨年8月、カナダでメディア企業への対価支払いを避けるためにニュースへのリンクをブロックして以来、右派のミーム(ネット上の流行ネタ)プロデューサーであるジェフ・バリンガル氏は、自身のフェイスブック・ページ「カナダ・プラウド」のクリック数が急増した。写真は、「カナダ政府の法律制定への対応として、ニュースコンテンツはシェアできません」との内容のメッセージ。5日撮影(2024年 ロイター)

Byron Kaye

[15日 ロイター] - 米メタ・プラットフォームズが昨年8月、カナダでメディア企業への対価支払いを避けるためにニュースへのリンクをブロックして以来、右派のミーム(ネット上の流行ネタ)プロデューサーであるジェフ・バリンガル氏は、自身のフェイスブック・ページ「カナダ・プラウド」のクリック数が急増した。

「数字は伸びており、日々より多くの人々に届くようになっている」と言うバリンガル氏は、1日に最大10件の投稿を行い、約54万人のフォロワーを持つ。

「メディアはどんどん少数部族的に、よりニッチになっている。この状況がさらにそれを後押ししている」とバリンガル氏は述べる。

カナダはメタとグーグルを中心とするネット大手に、ニュースへのリンクの対価をメディア企業に支払うよう義務付ける法律を制定。同様の法律を制定、あるいは検討してメタと対立する国々の中で「一丁目一番地」となった。

メタのフェイスブックは、自社ビジネスにとってニュースには経済的価値がないとして、料金支払いに応じる代わりにカナダにおけるニュースの提供をブロックした。

オーストラリア政府は2021年、カナダと同様の法制化を行っており、この法律を執行しようとすればメタは同様の対応を採る可能性が高い。フェイスブックは、近く期限を迎えるメディア企業との契約を延長しないと表明しており、法律の施行に先駆けて一時的にニュース記事の提供を停止した。

ニュースのリンクが阻まれたことで、カナダのフェイスブック利用者が政治に関する情報に接する方法が大きく変化している。そのことが、ロイターに提供された二つの調査結果によって明らかになった。

調査の一つに関わったマギル大学メディアセンターのディレクター、テイラー・オーウェン氏は「政治グループで話題になるニュースが、ミームに取って代わられつつある。われわれのフィードではかつて、ジャーナリズムや真実の情報が常に流れ、信頼感の印となっていたが、それが消えてしまった」と話した。

調査を行った研究者らによると、プラットフォーム上からニュース報道が消え、意見や検証されていないコンテンツへのユーザーの関与が増えれば、特に選挙年において政治的言説を弱体化させる可能性がある。カナダとオーストラリアはともに来年、総選挙を控えている。

米カリフォルニア州や英国などでも、ネット大手にニュースへの対価支払いを義務付ける法律が検討されている。インドネシアは今年、同様の法律を導入した。

<ブロック>

カナダでメタのプラットフォームにニュース記事へのリンクを投稿すると「カナダ政府の法律制定への対応として、ニュースコンテンツはシェアできません」というメッセージが記されたボックスが表れる。

マギル大学とトロント大学のプロジェクト、「メディア・エコシステム・オブザーバトリー」によると、カナダではかつてフェイスブックへのニュース投稿が1日に500万から800万ビューを集めていたが、それもなくなった。

党派的なコメンテーター、学者、メディア専門家など、政治的影響力を持つアカウントへのユーザーの反応に変化はなかったが、政治的なグループ内での画像付き投稿への反応は3倍に増え、かつてのニュース投稿と肩を並べる規模になった。

メタの広報担当者は、この調査によって「プラットフォーム上にニュースがなくても、人々はフェイスブックやインスタグラムを利用する」という同社の見解が確認されたと述べた。

カナダの人々は今もフェイスブックで「様々な情報源からの権威ある情報」にアクセスすることができているし、同社のファクトチェックは「誤情報の拡散を阻止することに尽力している」と広報担当者は言う。

一方、ロイターの委託でニュースガード社が実施した調査によると、「信頼できない」情報源への「いいね」とコメント、シェアは、メタがカナダでニュース投稿を禁止する前の90日間は全体の2.2%だったのに対し、禁止後の90日間では6.9%に上昇した。

ニュースガードはニューヨークを拠点とし、ウェブサイトの正確性を評価するファクトチェック企業。ゴードン・クロビッツ共同最高経営責任者(CEO)は「これは特にやっかいな問題だ」と言う。

クロヴィッツ氏は、おりしも虚偽の主張を流すAI生成のニュースサイトが急増し、敵対国の政府が選挙に影響を与えるために作った偽音声、偽画像、偽動画が増えていると懸念を示した。

カナダのサントンジュ民族遺産相はロイターへの電子メール声明で、メタのニュース提供ブロックは「遺憾で無謀な選択」であり「山火事、緊急事態、地方選挙など、知る必要のある状況において偽情報や誤情報がプラットフォーム上で広まるのを放置している」と批判した。

オーストラリアのスティーブン・ジョーンズ財務次官補は、調査結果について電子メールで「信頼できる質の高いコンテンツへのアクセスはオーストラリア国民にとって重要であり、そうしたコンテンツを支援することはメタ自体の利益になる」と述べた。

ジョーンズ氏は、フェイスブックとメディア企業とのライセンス契約を巡り、仲裁人を起用するかどうかの決定を行うことになっている。

メタは、オーストラリアでの今後の事業決定についてはコメントを控えたが、政府との関与は続けるとした。

調査によると、フェイスブックは今も時事コンテンツで最も人気のあるソーシャルメディア・プラットフォームだ。若いユーザーがライバルに流れている上、メタが政治の優先順位を下げる戦略をとっているため、ニュース・ソースとしての地位がここ数年で下がっているにもかかわらずだ。

メディア・エコシステム・オブザーバトリーの調査によると、人口の5分の4がフェイスブックを利用しているカナダでは昨年、51%がフェイスブックでニュースを入手していた。

オーストラリアでは国民の3分の2がフェイスブックを利用しており、昨年は32%がニュースを得るためにフェイスブックを利用したとキャンベラ大学が発表している。

グーグルはフェイスブックと違い、オーストラリアのメディア企業との契約変更を示唆していない。カナダ政府とは、メディアを支援する基金への支払いで合意している。

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