中銀デジタル通貨、一般利用型は銀行預金侵食の恐れ=元日銀局長
ロイター / 2020年11月18日 10時11分
11月18日、元日銀決済機構局長で、フューチャー取締役の山岡浩巳氏はロイターのインタビューで、日銀が検討を進める中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、企業や家計など幅広い層の利用を想定した「一般利用型」には課題が多いと指摘した。写真は2016年10月、東京都で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 18日 ロイター] - 元日銀決済機構局長で、フューチャー<4722.T>取締役の山岡浩巳氏はロイターのインタビューで、日銀が検討を進める中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、企業や家計など幅広い層の利用を想定した「一般利用型」には課題が多いと指摘した。民間の銀行預金がCBDCにシフトするリスクを解決する制度設計は難しく、実現までに数年かかるとの見通しを示した。一方、民間デジタル通貨にはCBDCができないサービスの可能性があり、すみ分けは可能だと述べた。
日銀は10月に一般利用型のCBDCの取り組み方針を公表。来年度の早い段階で実証実験を始める計画だ。
山岡氏は「大きな問題は民間の銀行預金を侵食するのではないかという点だ」と、一般利用型CBDCの課題を指摘。普通預金の金利が0.001%という現在のような超低金利下では、信用リスクがより低いCBDCに資金が流れる恐れがあるとした。
「一般の人々の中には、銀行の信用リスクが残っている銀行預金と信用リスクが概念的にはないCBDCではCBDCの方がいいと思う人もいる。そうすると、預金を引き出してCBDCにしてしまおうということになりかねない」と述べた。
CBDCの保有高に上限を設けるのが解決策の1つだとする議論があるが、それでは「CBDCに希少性が生じてしまい、CBDCと預金・現金の交換比率が変動しうる。これは決済の利便性を損なう恐れがある」と語った。金利面の妙味を落とすため、CBDCにマイナス金利を付けると「現金を廃止しない限り現金が選好され続け、CBDCが使われなくなる」と述べた。
山岡氏は「銀行預金を侵食しないようにして、現金だけを代替できるように設計するのは至難の業だ」と語り、日本で実現するとしても数年はかかるとの見通しを示した。
<民間との共存>
民間のデジタル通貨勉強会の座長も務める山岡氏は、「民間のデジタル通貨と(CBDCの)すみ分けは可能だと思う」と指摘。企業取引における納品と入金のタイミングのずれは「スマートコントラクト」を通じて解消できることを例に挙げ、「民間が不便だと思っていることはCBDCだけでは解決できないはずだ」と指摘した。
CBDCを巡っては、中国がデジタル人民元の実証実験を行うなど先行し、日銀、米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)など7つの中央銀行と国際決済銀行(BIS)が共同で研究を進めている。
山岡氏は7中銀とBISの連携について「中国に対するある種の包囲網だ」と語った。その一方で、CBDCの研究開発には先行者利益が大きいとして警戒感を示した。
CBDC発行には匿名性を保護する技術や膨大な計算量、取引を処理する能力といった技術が必要になるが「そうした技術を圧倒的に特定の国に押さえられてしまったり、管理が甘くてハッカーに攻撃されてしまうようなケースは要注意だ」と述べた。
インタビューは17日に実施しました。
(和田崇彦、木原麗花 編集:久保信博)
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