焦点:中国当局、IT大手の独禁法違反に空前の締め付け
ロイター / 2020年12月20日 8時6分
12月15日、 中国の当局が巨大IT企業による独占禁止法違反に対し、空前の締め付けに乗り出した。これはほんの序の口と言えそうだ。写真はテンセンとのロゴ。北京で8月撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)
[香港/北京 15日 ロイター] - 中国の当局が巨大IT企業による独占禁止法違反に対し、空前の締め付けに乗り出した。これはほんの序の口と言えそうだ。
中国国家市場監督管理総局(SAMR)は14日、アリババ・グループ・ホールディングや騰訊控股(テンセント・ホールディングス)といったIT大手が後ろ盾になった複数の案件について、罰金を科すとともに調査開始を発表した。SAMRはかつてインターネット業界に対して「自由放任」の姿勢で臨んできたが、今後は方向転換し、さらに多くの案件を監視していく構えだ。
中でも「見せしめ」にしようと狙っている案件が、インターネット検索企業の捜狗(ソゴウ)を株主のテンセントが35億ドルで買収を強め、非公開化する計画だ。この問題を直接知る2人の関係者が明らかにした。
別の関係者によるとSAMRは、プライベートエクイティ企業MBKパートナーズによる中国オンライン自動車レンタル最大手CARに対する買収提案にも、目を光らせている。MBKは業界2位の企業を既に所有しており、独禁法違反の問題が生じるとの懸念からだという。
テンセントによる捜狗の買収については、SAMRは徹底検証することが見込まれているため、2021年の買収完了期限に間に合わなくなる可能性があるという。「この案件は今、大きな不透明感に直面しており、計画通り買収を完了できない確率は大きい」と関係者の1人は語った。
この関係者によると、検索エンジンは中国当局にとっては機微な分野であり、SAMRはテンセントが既に複数のセクターで主導的な地位を確立していることも踏まえて、対処していくことになりそうだ。この案件が世間から大きな注目を集めていることも、監視の標的にする一因という。
捜狗は今月、独禁法上の検証を受けるためこの案件を届け出た。中国のIT企業は最近まで自ら進んでこうした届け出を行うことはしておらず、珍しい動きだ。
政府文書によると、MBKもCAR買収計画について同様に届け出た。関係筋によると、MBKは傘下の自動車レンタル企業とCARを統合する計画だ。
テンセント、捜狗、MBKはコメントを控えた。SAMR、CARからはコメント要請への返信がない。
<新たな章>
中国の巨大IT企業は世界的にも最大級の規模を誇る。同国当局は、これらの企業が競争を阻害する市場支配力を築き、消費者データを悪用し、消費者の権利を侵害しているとの懸念を理由に監視強化に乗り出した。当局は先月、中国の当局としては初めて、インターネット企業による独占的行動を防ぐための規則案を公表した。
世界的には規制当局は、たとえば欧米やインドの当局などが既に米フェイスブック、米アルファベット傘下のグーグルについて独禁法違反の取り締まりを強めている。
法律事務所アレン&オベリーのジャミン・シャン氏は、SAMRは今のところ、こうした国々の当局ほどは「見出しを飾る」案件に取り組んでいないと指摘。ただ、「最近のすべての展開を踏まえれば、SAMRはインターネット業界への法執行で新たな章を開く用意があるようだ」と述べた。
<特別扱いは終わり>
SAMRの14日の「VIE(変動持ち分事業体)」が関係する3案件処罰は、「インターネット業界も独禁法上の監視から除外しない」姿勢を明確に打ち出した形だ。VIE絡みの案件に対する処罰は初めてだった。
VIEは、外国に上場する法人が中国の外国投資規制をすり抜けて中国企業を支配できる仕組み。これにも2008年成立の中国の独禁法が及ぶのか、中国の当局に買収計画を届け出る義務が生じるのかどうかは、14日時点までは不明確だった。しかし弁護士らによると、今回のSAMRの動きにより、VIE企業にも届け出が当局に期待されていることが示された。
アリババ、テンセント、配車アプリの滴滴出行、電子商取引の美団、短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)など、中国の大手IT企業のほとんどは、このVIEを利用している。
法律事務所ホーガン・ラベルズの共同経営者エイドリアン・エーマック氏は「純粋に独禁法違反の観点で考えると、『なぜVIEを特別扱いするのか』という疑問もあった。今後は『同じような案件なのに違うアプローチを取る』ことはなくなりそうだ」と語った。
(記者:Julie Zhu、Kane Wu、Cheng Leng、Zhang Yan、Yingzhi Yang、Sophie Yu)
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