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焦点:FRB、新戦略公表から4年 試される雇用優先の決意

ロイター / 2024年8月20日 7時6分

8月19日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長(写真)は2020年の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で、新型コロナウイルス禍のさなかに物価より雇用を重視する意向を表明した。ワシントンで7月撮影(2024年 ロイター/Kevin Mohatt)

Howard Schneider

[ワシントン 19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は2020年の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で、新型コロナウイルス禍のさなかに物価より雇用を重視する意向を表明した。足元では失業率が悪化、インフレは抑制されており、政策金利は依然として25年ぶりの高水準にある。4年前に表明した決意は今、重大な試練に直面している。

FRBは9月17─18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げ開始が見込まれており、高金利は終了に向かう可能性がある。今月23日のジャクソンホール会議の講演では、パウエル氏が金融緩和についてさらに情報を提供するかもしれない。

だが政策金利のフェデラルファンド(FF)金利は1年以上、5.25─5.50%に据え置かれており、高金利が景気に及ぼす影響はまだ波及過程にあることが考えられる。FRBが利下げを開始しても、利上げの影響を相殺するには時間がかかる可能性があり、ソフトランディング(軟着陸)期待に水を差しかねない状況だ。

エバンス元シカゴ地区連銀総裁は「パウエル氏は労働市場が正常化しつつあると述べている」と指摘。賃金上昇率は鈍化し、求人件数もまだ健全な水準にあり、失業率はFRBのインフレ目標2%と整合的な水準付近にあるとした上で「これだけ見れば素晴らしいが、歴史を振り返ると良い状態ではない」と述べた。

確かに歴史を振り返ると、過去数カ月に見られたような失業率の悪化はその後もさらに続く傾向がある。

現状ではそう見えないが、さえない雇用統計があと1回か2回続けば失業増大に対応するため、積極的な利下げが必要になり得るとし、「長く待てばそれだけ、実際の調整が難しくなる」と述べた。  

<インフレ対雇用>

エバンス氏は、新型コロナが猛威を振るっていた20年8月のジャクソンホール会議でパウエル氏が発表したFRBの新戦略策定を進めた中心人物だった。当時は当局者がオンラインで会議に参加。失業率は、同年4月の14.8%から改善していたものの8.4%だった。

こうした状況では、雇用よりもインフレ抑制を優先する長年のバイアスを新戦略で修正したのは理にかなっているように見えた。

標準的な金融政策ではインフレ率と失業率は切っても切り離せない逆相関の関係にあるとされていた。失業率がある一定の水準を下回ると、賃金と物価が上昇する。低インフレは雇用停滞のシグナルだった。だが、07─09年の景気後退(リセッション)後は、この関係の再検討が始まり、低失業率を必ずしもインフレリスク自体として取り扱う必要ないとの結論が出た。

新戦略では、雇用市場の周縁部にいる人々に対する公平性を考慮し、全体として最善の結果を出すため「雇用の最大水準からの不足分」を注視すると表明した。

パウエル氏は20年のジャクソンホール会議で「今回の変更は微妙に見えるかもしれない」が、「インフレの高進を招かずに力強い雇用市場を維持できる可能性があるとのわれわれの見解を反映したものだ」と述べた。  

FRBはその後、インフレ抑制のため利上げを迫られた。インフレ率は鈍化したが、最近まで雇用市場に大きなダメージは見られなかった。失業率は4月まで2年以上にわたって4%を下回り、1960年代以降で最長の記録となった。

今年のジャクソンホール会議の議題はまだ発表されていないが、金融政策が経済にどのような影響を及ぼすかが大きなテーマになっている。これはFRBが今後の選択肢とトレードオフをどのように評価するか、またインフレが始まる前に予防的な措置を講じるといった戦術をどう評価するかにも関係してくる。

こうした研究の一部はすでに、マイケル・カイリー氏などFRBのエコノミストらから発表され始めている。カイリー氏は政策の「非対称性」が本当に役立つかどうかを問う論文を執筆。また、最近の別の論文では国民のインフレ期待が短期で形成され、変動しやすいと考えられる場合は、それに応じて早めに対応し、金利を引き上げるべきだと提言している。

国民のインフレ期待がインフレ進行や金融政策に重大な影響を及ぼすことは、22年にまざまざと示された。FRBはインフレ期待がさらに高まる恐れがあると判断し、4会合連続で75ベーシスポイント(bp)の利上げを実施。その後、パウエル議長はジャクソンホール会議の講演でインフレと戦う決意を強調した。20年に示した雇用優先の立場からの大きな転換だった。

<あまりにもタイト>

パウエル氏は現在、逆方向の試練に直面している。インフレ率は2%に戻りつつあるが、失業率は4.3%と23年7月から0.8%ポイント悪化。FRBが完全雇用を示す水準と見なす4.2%をわずかに上回っている。

また、現在の失業率はコロナ禍以前のパウエル氏の任期中で最も高い。18年2月の就任時点の失業率は4.1%で、その後は低下傾向にあった。

言い換えれば、パウエル氏が20年に対応を約束した雇用の「不足」がすでに始まっている可能性がある。

コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツのシニアグローバル金利ストラテジスト、エド・アルフセイニー氏は、FRBが失業リスクに先手を打つべき時がすでに来ていると指摘。FRBは国民のインフレ期待を抑制する能力があることを証明したが、「雇用に対する下振れリスクも生じさせている」とし、「現在の政策スタンスは反則だ。あまりにもタイトで、行動を起こすことが正当化される」との考えを示した。

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