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高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 給与明細に明記義務付けで大不評の定額減税、タイミングも「完全な失敗」

J-CASTニュース / 2024年5月23日 17時0分

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定額減税は給与明細に減税額を明記することが義務付けられた(写真はイメージ)。民間の負担は増えるばかりだ

政治資金は非課税かつ領収書なしなのに、定額減税は給与明細に減税額を明記することが義務付けられた。民間ではインボイスでも1円もきっちり書くし、もちろん領収書なしでは経費にならないので、かなり事務負担になっている。それに加えて給与明細に減税額を書けとなると、民間会社の給与担当者はかなり頭に来るだろう。政治家と民間の格差は、なぜこんなに大きいのか。

もし総選挙があれば、ということで仕組まれた話であるのはミエミエ

政治資金が非課税とは、正確に言えば政治団体が政治活動に使用する資金が非課税ということだ。政治家個人では政治活動に関して受けた政治資金については、雑所得となり、他の所得と合算して課税対象になる。ただし、この雑所得の計算では、政治活動のために支出した経費は控除する。もっとも、このあたりは、民間企業は領収証がないと経費にならないが、政治家では政治資金で領収書なしでも構わないとされ、それほど厳格に経費認定されていないようだ。こうした政治と民間の格差にも腹立たしい。

さらに、今回定額減税について減税額を給与明細に明記しなければならないときた。その義務の根拠は何か。給与明細を従業員に交付しなければならないというのは所得税法第231条に規定されているが、その中身は財務省令である所得税施行規則だ。その財務省令は、この3月31日に出された。さすがに、財務省令は国会ではなく財務省だけの判断だけで発出できるので、国民はそれに従わなくても罰則までをくらうことはないだろう。なので、林芳正官房長官もお願いしている、と低姿勢だ。

しかし、もし総選挙があれば、ということで仕組まれた話であるのはミエミエで、事務負担を課した上に国民をいらだたせている。

決定時点で「規模が小さく、遅い」と主張していた

筆者は、今回の定額減税について、決定された23年10月の段階で、「規模が小さく、遅い」と断じ、せめて23年12月にすべきだったとしている。その当時から、今通常国会の解散・総選挙があり得るので、23年12月に実施すべきを、24年6月に後回しするともうわさされていた。

筆者としては、23年12月に定額減税しておけば、今1-3月期のGDP速報で、民間消費を含む民間経済需要が総崩れになり、全体でも前期比年率2.0%減という惨めな数字にならなかったと思っている。政策タイミングにおいて完全な失敗である。

要するに、今回の定額減税は、選挙というタイミングを優先し、経済政策としてのタイミングを無視したから、筆者は批判せざるを得ない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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