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「『日本株と言えばこれ』と言われる旗艦ファンド作る」「投資先企業との対話深め、企業価値を高める」…アセットマネジメントワン・杉原規之社長

読売新聞 / 2024年9月5日 18時0分

インタビューに答えるアセットマネジメントワンの杉原社長(東京都千代田区で)

 投資家から資産を預かり、投資信託のような金融商品を組成、運用する資産運用会社。アセットマネジメントワンは、みずほフィナンシャルグループと第一生命ホールディングスが共同出資している。投資を通じた日本企業の底上げについて、杉原規之社長に話を聞いた。

(聞き手・市川大輔)

資産運用立国、10年20年のスパンで

 ――日本株の投資に力を入れる理由は。

 「政府が資産運用立国に向けて旗を振っているが、すぐには実現できない。米国でも、1980年頃に『401k』と呼ばれる確定拠出年金制度が始まって30年くらいかかって貯蓄から資産形成の流れが根付いてきた。日本も10年、20年ぐらいのスパンで、腰を据えて取り組まなければいけない大きなテーマだ。実現させるためには、マザーマーケットである日本市場を強くするのがカギだと思っている。

 我が社の日本株運用は、国内随一の体制を持っていると自負している。業界をリードし、運用会社に求められる役割と期待に応えたい。

 具体的な取り組みの一つが、株価指数を上回る成長を目指す日本株のアクティブ型投信だ。これまでは外国株の方が投資家の関心が高かった。いま一度、日本株に焦点を当てて、既存のラインアップを表に出す。資料を作って投資家に訴求する。

 日本市場は変革期にあり、変革にコミットして、投資先企業の成長を促す。そうすることで、企業価値が上がり、株価も上がって投資家にリターンとして戻るので、国富の増大にもつながる。そういった好循環を生み出していきたい」

 ――日本株に特化した投信を作るという。

 「米国では何十年と、長期にわたって、お金を集めている大きな旗艦ファンド(投信)がある。そういうファンドをわれわれも作れないかと思って準備をしている。まずはファンドを作ってファンドマネジャーを指名し、種となるお金を入れて育てていって、トラックレコードを作ることを目指す。5年後、10年後になるかもしれないが、中核ファンド、『日本株と言えばこれ』と言われるファンドを作りたい。

 日本株は過去20年間、低成長とデフレで低迷していたので、投資対象として魅力がなかった。今ここに来て賃上げも含めて企業業績がすごく高まっている。東証からPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業は引き上げろという要請もあって、海外から日本市場への関心が高まっている。日本株を中長期で買う材料は多くある。金融政策の見直しで金利がある世界になった。日本株の魅力を発信していきたい。

 我が社の運用実績で優れたファンドは中小型株向けが多い。銘柄の特性が出やすいし、値動きが良く、実績が出やすいからだ。ただ、ジレンマと言えるのが、時価総額があまり大きくないことで、投資できる金額が限られて、投信の規模に制約がある。投資家から評価があるのに、ファンドを大きくできないという悩みがある。

 準備している旗艦ファンドは、大型株を中心に50銘柄前後を厳選して集中投資し、運用資産5000億円規模を目指す。大型株は従来、株価が大きくて動きづらく、こうした投信は少なかった。企業価値の向上に真剣に取り組む大企業は増えており、しっかりと見極めることができれば、中長期で利益が上げられる。海外投資家からの投資マネーも呼び込みたい」

稼ぐ力高める企業努力にフォーカス

 ――投信以外の取り組みは。

 「投資先企業に対するエンゲージメント、対話を深めていきたい。今までもずっとやってきたが、4月に体制を強化して、アナリストやエコノミストを含むリサーチャーを集めた40人強の部隊を発足させた。銘柄の発掘もするが、投資家の立場から、企業の変革に向けた取り組みを後押しし、伴走する。その結果、企業価値を高めて株価の上昇につなげていきたい。

 現在、年間2000件くらい、対話の機会があり、これを増やしていく予定だ。中でも、特に資本効率の向上をテーマにした対話に力を入れたい。端的に言えば、このテーマで対話をすると、株価の向上につながることが過去2年間の実績で示されているからだ。短期の自社株買いや遊休不動産の売却をやっている企業が多くて、それも大事だが、もう少し中長期の目線で、稼ぐ力を高める企業努力にフォーカスしたい。

 対話する企業の相手が、社長なのか最高財務責任者(CFO)なのか、もう少し下のレベルなのかによっても内容が変わってくる。社外取締役との対話があまりできていない。多角的に対応することで、質の向上を図っていきたい」

 ――国民の資産運用の現状をどう見ているか。

 「8月に株式相場が急落した時に、投信が売られて現金化され、その後に相場が戻った時に買い戻される動きが出た。これはとても非合理的な行動だといえる。急落で驚いて売ったわけだが、上がってから買い戻しているので、損失を確定しまった。運用は長期で行っていくものだとしっかり伝えていかなければいけないと改めて感じている。

 8月に相場が急落した翌日、(組成した投信を扱う証券会社や銀行などの)販売会社に対し、弊社のエコノミストが市場の分析内容を伝える臨時のオンライン勉強会を開いた。参加者は不安な人も多かったようで、オンライン会議サービスの上限の1000人を超えて接続できない人も出た。『市場は落ち着いてくるので慌てずに行動するように伝えてください』と発信し、ありがたいと思ってもらえた。これからも正しい情報をタイムリーに出していきたい」

 ――今後も政府に期待することは。

 「新NISA(少額投資非課税制度)は、間違いなく岸田政権の大きな成果だ。資産運用立国の推進という今までなかったような動きは、我々にとって大きい。次の政権でも続けてほしい。社会保障が抱える問題の間接的な解決策にもなり得る。我々、民間が実現していく立場だが、政権側にも引き続き、一緒に取り組んでいただくことを期待している」

◆杉原規之氏(すぎはら・のりゆき) 1992年京大経卒、日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)入行。99年興銀信託銀行(現みずほ信託銀行)入行。2021年みずほ信託銀行アセットマネジメント部門長。23年4月からアセットマネジメントワン社長。東京都出身。

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