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御嶽山噴火10年 火山災害への意識を高めたい

読売新聞 / 2024年9月29日 5時0分

 長野・岐阜県境にある御嶽山の噴火から10年がたった。死者・行方不明者63人を出して戦後最大となった火山災害の教訓を生かし、対策を強化しなければならない。

 噴火が起きた2014年9月27日は土曜で天候も良く、紅葉が見頃だった。昼時で多くの登山客が頂上周辺にいた。噴火自体は大規模ではなかったものの、こうした条件がいくつも重なり、多くの人命が失われる結果となった。

 噴火が命に関わる脅威だとすぐに認識できた人は少なく、噴煙を見ても写真を撮り続ける人もいた。一帯はあっという間に噴煙に包まれて視界が失われ、降り注ぐ噴石から逃れられなかった。

 山小屋や岩の陰に避難できた人は、噴石の直撃を免れた。現在は山頂周辺に避難シェルターが設置されている。登山者は事前に火山情報に注意を払うとともに、万一に備え、ヘルメットや口を覆うタオルなどを携行してほしい。

 とはいえ、噴火の予知は現在の科学の水準では困難で、不意打ちは避けられない。10年前の噴火前も地震の回数が増えていたものの、気象庁は噴火警戒レベルを最低の1のまま据え置いていた。

 火山研究の先細りが懸念されていることを踏まえ、政府は4月、国の司令塔となる「火山調査研究推進本部」を発足させた。計画的に予算を確保し、研究者の力を結集して、研究・観測態勢を立て直していくことが重要だ。

 列島各地にある火山は、噴火の様相や地形の特徴がまちまちで、一律に防災対策を論じても効果が薄い。長年にわたって特定の火山を見守り、専門知識を蓄えていく地元の研究者や自治体職員の養成が必要だろう。

 長野県では、火山防災の知識を持つ人材が「御嶽山火山マイスター」に認定され、ビジターセンターを拠点に防災教育や啓発活動で活躍している。こうした地道な取り組みは、火山を抱える全国各地で参考になるのではないか。

 火山は、時に恐ろしい自然の猛威を見せつける一方で、普段は美しい風景が行楽客を引きつけ、信仰の対象にもなってきた。温泉など、麓の地域には多くの恩恵をもたらす存在でもある。

 明治時代に日本初の火山観測所が浅間山に開設された8月26日が今年から「火山防災の日」となった。長野県も、9月27日までの1か月を「信州火山防災月間」に指定している。

 災害を記憶し、火山との共生を考える期間としたい。

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