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安全保障政策 同盟を混乱させかねない発信

読売新聞 / 2024年10月1日 5時0分

 一人の国会議員としてなら発言は自由だが、首相ともなれば、言動は国家と国民の利益を最優先に考える必要がある。

 自民党の石破茂・新総裁が、米国の政策研究機関に「日本の外交政策の将来」と題して寄稿した内容は、あまりにも不用意と言うほかない。

 石破氏は「米英同盟並みに日米同盟を引き上げることが私の使命だ」と述べ、日米安全保障条約を改定し、相互の防衛義務を定めることに意欲を示した。

 日米安保条約は、米国が日本を防衛する義務を負い、日本の義務としては米国に基地を提供することを定めている。

 この条約に基づく日米同盟によって、日本を含むアジアでは平和と安定が保たれてきた。米国も在日米軍基地を拠点に、インド太平洋という広範な地域で活動することができている。日米双方にとって同盟関係は死活的に重要だ。

 石破氏の主張は、これまで安定的に運用されてきた同盟関係を大きく覆しかねない。

 政治家として「同盟を対等に」という信念を持つのは良いとして、国民を代表する立場となる以上、両国が尊重してきた立場と整合性の取れない政策を発信するのは、理解しがたい。

 1日に首相に就任したら速やかに発言を修正すべきだ。同盟関係を安定化させるため、主張を抑制することを躊躇ためらう必要はない。

 政府は現在、日本の存立を脅かす事態に限って集団的自衛権の行使が可能だとしている。

 仮に石破氏の寄稿の通りに、日本が米国の防衛義務を負うことになった場合、憲法を改正して全面的に集団的自衛権を行使できるようにすることが不可欠となる。

 石破氏はまた、在日米軍の法的な扱いを定める日米地位協定を改定する意向も示した。

 地位協定は、米兵が公務で罪を犯した場合、米側が裁くと定めている。公務外の犯罪であっても、日本側の捜査には制約がある。

 こうした問題はこれまでも指摘されてきた。両国で誠実に協議し、改善策を探ることが大切だ。一方的に日本側の願望を述べ、同盟を混乱させてはならない。

 石破氏は寄稿で、アジア版NATO(北大西洋条約機構)を創設し、加盟国間で米国の核兵器を共同で運用すべきだと訴えた。

 こうした運用は「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則を国是とする日本の立場とは相いれない。慎重な検討が求められる。

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