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船井電機、出版社が買収以降300億円資金流出…破産申請時は117億円超の債務超過

読売新聞 / 2024年10月30日 7時6分

 破産手続きが開始された船井電機(大阪府大東市)を巡り、2021年に同社が出版会社に買収されて以降、約300億円の資金が流出し、破産申請時は117億円超の債務超過だったことが29日、読売新聞が入手した資料と東京商工リサーチ関西支社情報部の調査でわかった。簿外債務も判明するなど、破綻へとつながった不透明な資金実態の一部が浮き彫りになった。(杉山正樹、坂下結子)

 準自己破産の申立人は、昨年3月に取締役に就任した創業家関係者の船井秀彦氏だった。前社長の上田智一氏(51)の退任以降、取締役会が開けず、運転資金にもめどがたたない状況となったことで、関係者らが混乱を避けようとしたとみられる。

 10月24日付の破産手続開始申立書などによると、債権者は524人、負債額は計約474億円(簿価ベース)。この中で、上田氏がトップを務める出版会社「秀和システム」(東京)が21年5月に船井電機を買収によって子会社化して以降、多額の資金が流出し、資金繰りが悪化したと主張している。

 この買収の際、秀和側がりそな銀行から借り入れた180億円は、船井電機の定期預金が担保とされ、今年5月、回収されていた。

 上田氏は買収後、経営再建に向け、多角化を進める方針を示し、23年3月に船井電機・ホールディングス(HD)を設立し、持ち株会社制に移行。業容拡大を図り、23年4月に脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を買収した。この際、横浜幸銀信用組合(横浜市)から借り入れた33億円が簿外債務となった。ミュゼへの資金支援や関連会社への貸し付けなども行われていた。

 こうした資金流出の結果、秀和による買収前に約347億円あった船井電機の現預金は「ほぼ尽きている」状況となり、保有する関係会社株式も相当程度が無価値となることも想定され、破産申し立ての理由となる「継続的に弁済することができない状態」となった。

 事業面でも、主力のテレビ事業の不振で資金繰りが悪化する中、今年4月以降、営業利益は毎月3億~8億円の赤字が続いた。映像機器製造のタイの子会社は9月末の原材料の仕入れができず、操業を停止。今月からは在庫がなく、商品の納品が滞る状況に陥った。

 親会社の船井電機HDも214億円の債務超過に陥っており、現預金も9月末時点で約700万円まで減少し、「早晩資金繰りに行き詰まる」状態だった。

 今月25日に予定していた従業員給与は計1億8000万円で、出金すれば、運転資金が1000万円を下回り、翌日から支払いができなくなる状況でもあった。

 ◆準自己破産=破産手続きのうち、取締役会などによる全社的な意思形成ができない場合、取締役や清算人が単独で申し立てられる破産。悪用されないよう、支払い不能や債務超過のいずれかであることを申し立てた本人が説明し、費用を負担する必要がある。法人の自己破産手続きでは極めて異例の方法。破産手続終結または廃止の登記をもって法人格が消滅し、残った債務は免責される。

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