サードプレイス(第三の場所)を持つ人は、仕事と私生活で「満足度」が高い理由/マイナビ・朝比奈あかりさん
J-CASTニュース / 2024年12月26日 17時10分
私のサードプレイスは、ランニングコースすべて(写真はイメージ)
あなたは「サードプレイス(第三の場所)」持っていますか? 自宅でも職場でもなく、自分らしくいられる「居心地のいい場所」のこと。
就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2024年12月19日に発表した「正社員の『サードプレイス』と『働くモチベーション』に関する調査」によると、正社員の5人に1人がサードプレイスを持っており、働くモチベーションが高いという。
サードプレイスはどうすれば見つかるか、また、持っていない人はどうすればいいのか。調査をまとめたマイナビの朝比奈あかりさんに聞いた。
趣味の場、コーヒー専門店、図書館、行きつけの飲み屋、ランニングコース...
マイナビの調査(2024年11月15日~18日)は、全国20~59歳の正社員男女3000人が対象。サードプレイスとは、具体的には「カフェ」や「趣味の集まり」など、自宅と職場以外で自分らしくいられる場所を指す。
サードプレイスを持っているかを聞くと、約5人に1人(19.3%)が「持っている」と回答。そのうち、サードプレイスと呼べる場所が2つ以上ある人も3割近くいた【図表1】。
自由回答で聞いた結果が【図表2】だ。「音楽でつながった人たちとの輪」「小学校の同級生が始めたコーヒー専門店」「ランニングコース」「バイクで走るすべての場所」「体を鍛えるスポーツジム」「気になる1冊を選ぶ市営図書館」など【図表2】。
サードプレイスの特徴は、「1人の時間を過ごす」もしくは「他者とのコミュニケーションがある」、そして「場所が固定されている」もしくは「やることが固定されている」の4つに分けられた。
サードプレイスの有無別に、キャリアについての考えを聞くと、「働くモチベーションが高い」「自分のキャリアを自分で作り上げている実感がある」「困難な仕事でもできる自信がある」の3つで、いずれも持っている人」持っていない人より約20ポイント高かった【図表3】。
また、「自分自身への理解度」で約26ポイント、「仕事と私生活の満足度」でも約15ポイント高い傾向がみられた。こうした結果から、サードプレイスを持つ人は、仕事と私生活の両方で充実していることがわかる。
利害関係のない純粋な交流が、リフレッシュとストレス軽減に
J‐CASTニュースBiz編集部は、リポートをまとめたマイナビのキャリアリサーチラボ研究員の朝比奈あかりさんに話を聞いた。
――サードプレイスは、最近よく耳にする言葉ですが、特にビジネスの場で注目されるようになった背景には何がありますか。
朝比奈あかりさん サードプレイスは、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグによって1980年代に提唱された概念です。
自宅(ファーストプレイス)や職場(セカンドプレイス)とは異なる、リラックスできる居心地のよい場所を指します。それを持つことで、地域コミュニティーの活性化や社会的なつながりの強化が期待されるため、数十年後の現在も注目されている概念です。
現在、働く人に注目を集めている理由に、コロナ禍による働き方の変化が挙げられます。リモートワークが普及し、自宅と職場の境界があいまいになりました。重要性が再認識され、リラックスできる場所や新たな交流の場としての需要が高まっています。
仕事や生活のストレスが増加している今、ビジネスパーソンにとっては、利害関係のない純粋な交流がリフレッシュとストレス軽減につながります。ワークライフバランスの重要性が認識されるなかで、サードプレイスでの活動が、仕事の効率を高めるだけでなく、私生活の満足度も向上させると期待されています。
――リポートの具体的例を見ると、趣味の場、サークル仲間、公民館といったごく当たり前の場所・人間関係の印象がありますが、ほかにどんなケースがあるのでしょうか。
朝比奈あかりさん いくつかご紹介しますと――。
「地元の個人経営の飲み屋で、利害関係が全くない常連とコミュニケーションを取れる場所」(50代男性/IT・通信関連企業)
「ボランティア活動で、人とのつながりを深め、社会に溶け込める場所(30代女性/金融・保険関連企業)
「アカペラを続けているコミュニティーで定期的に活動している」(20代男性/メーカー勤務)
などがあります。
自分らしく過ごす時間から、自分の得意分野がわかる
――「行きつけの飲み屋」なら私も持っていますよ。しかし、5人に1人しかサードプレイスを持っていないことが不思議です。残りの5人に4人は、自宅と職場の往復だけということでしょうか。
朝比奈あかりさん おっしゃる通り、ごく当たり前の場所・人間関係というものもあると思うのですが、サードプレイスの定義としてポイントとなるのは「自分らしく過ごせる居心地のよい場所」であることです。
自宅や職場とは異なり、役割や責任から「解放」される場所であるため、利害関係のない純粋な交流が可能です。そういった意味で「解放感」があることも重要な要素です。
また、サードプレイスを持つ人が少ない理由としては、現代社会の忙しさや、その重要性に対する認識不足が考えられます。多くの人が仕事や生活に追われ、サードプレイスを見つける時間や機会が限られているのかもしれません。
――サードプレイスを持っている人が、働くモチベーションが高い理由はズバリ何でしょうか。
朝比奈あかりさん 持っている人は、持っていない人に比べて、自己理解度が高い傾向にあることが関係していると考えられます。
サードプレイスでの活動のなかで自分らしく過ごす時間があり、自身が何を好むか知りやすい可能性があります。また、それがコミュニティーだった場合、コミュニケーションのなかで自身の得意なことも知りやすいと考えられます。
自分の好きなことや得意なことを理解しているからこそ、仕事にも得意なことを生かせたりするなど、仕事にもよい影響がある可能性があります。
週に1度カフェで読書、月に1度趣味の集まりに参加...まずは小さな一歩から
――しかし、私生活の満足度もあがるのはどういうわけですか。
朝比奈あかりさん 持っている人は、持っていない人より「仕事も私生活もどちらも満足」の割合が高い傾向にあります。ここで注目したいのは、私生活の満足度だけが上がるのではなく、仕事の満足度も同時に上がるということです。
「仕事のみ」の満足度と、「私生活のみ」の満足度を比較すると、サードプレイスの有無別ではあまり変わりません。つまり、サードプレイスの活動が、仕事と私生活を合わせたワークライフバランスの改善に寄与している可能性があるわけです。
――なるほど。サードプレイスを持っていると、いいことづくめですね。どうすれば持てるようになるのでしょうか。アドバイスをお願いします。
朝比奈あかりさん まずは、サードプレイスを持つことが有益であると知っていただくことが第一。その利点は多岐にわたります。たとえば、そこでのリラックスした時間がストレスを軽減し、心身の健康を保つ助けとなります。
また、そこでの交流によって自己理解が深まり、新たな視点やアイデアをもたらし、仕事における創造性や効率性を高めることも期待できます。最初から完璧なサードプレイスを見つける必要はありません。まずは小さな一歩から始めてみるのがよいでしょう。
週に1度カフェで読書をする、月に1度趣味の集まりに参加する......。少しずつ自分のペースで進めていくことが大切。年末年始、まとまった時間が取れる方もいるかと思いますので、ゆっくり体を休めながら、自身の好きなことや得意なこと、キャリアで何を大切にしてきたか振り返る機会を作るのはいかがでしょうか。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
朝比奈あかり(あさひな・あかり)
マイナビ社長室 キャリアリサーチ統括部キャリアリサーチラボ研究員
2016年中途入社、「マイナビ転職」の求人情報や採用支援ツールの制作に携わる経験を経て2020年に現職へ。
専門・研究分野:中途採用領域全般、正社員の働き方、転職と賃金の関わり、キャリア自律など。
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