企業の2025年景気見通し...「回復」局面5年ぶり1割以下、「悪化」増加 ポイントは「個人向け減税」で消費拡大なるか
J-CASTニュース / 2024年12月27日 20時16分
2025年、日本経済はどうなる?
2025年の景気見通しについて、「回復」局面と予想する企業が5年ぶりに1割を下回り、全体的に不安視する企業が大半であることが、帝国データバンクが20204年12月25日に発表した「2025年の景気見通しに対する企業の意識調査」でわかった。
急速な円安加速による原材料費の高騰、人手不足の深刻化など、悪材料が目白押しのうえ、トランプ氏の登場と不透明感が増していることが影響しているようだ。
日本経済はどこへ向かうのか。調査担当者に聞いた。
原油・素材価格上昇、人手不足に加え、トランプ氏が波乱要因
帝国データバンクの調査(2024年11月18日~30日)は全国2万6880社が対象で、1万939社から回答を得た。
2025年の景気見通しを聞くと、「回復」局面になると見込む企業は、昨年同時期調査から5.1ポイント減の7.7%となり、5年ぶりに10%を下回った。また、「踊り場」局面は41.7%(同0.4ポイント減)と2年連続で4割を上回った。他方、「悪化」局面は、前年比3.6ポイント増の23.9%だった【図表1】。
業界別でみると、「回復」局面では『金融』(10.1%)が唯一1割を超え、以下『不動産』(9.5%)、『サービス』(8.8%)が続き、『小売』(4.7%)が最も低かった。他方、「悪化」局面では『小売』(31.7%)が3割台で最も高く、『農・林・水産』(25.7%)、『建設』(25.2%)が続き、『金融』(15.1%)が最も低かった【図表2】。
2025年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料を聞くと、「原油・素材価格(の上昇)」(46.2% )が最も高い。次いで「人手不足」(41.6%)、「物価上昇(インフレ)」(31.5%)、「為替(円安)」(30.7%)が続いた。
さらに、日本銀行の追加利上げが予想されるなかで「金利(の上昇)」(24.1%)による景気への悪影響のほか、トランプ次期米大統領の政策転換への不安感などから「米国経済」(17.1%)への懸念が大幅に高まっている【図表3】。
厳しい結果だが、総じて景気は下振れリスクを抱えつつ横ばいに推移
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめた帝国データバンク情報統括部の中村駿佑さんに話を聞いた。
――今回の調査内容、アフターコロナ禍としては、一番厳しい景気見通しになりましたが、担当者としてどのように評価しますか。
中村駿佑さん 予想通り、厳しい結果となっていますが、総じて景気は下振れリスクを抱えつつも横ばい傾向での推移を見通しています。半導体・再開発などの設備投資やインバウンド需要の好調さは引き続き維持される見通しです。
一方で、政策金利の引き上げのほか、人手不足や急速な円安による原材料費の高騰、食料品・生活必需品の値上げなどにより、個人消費の回復が十分といえない状況です。また、中東情勢やロシア・ウクライナの地政学的リスク、トランプ次期米大統領の経済政策の行方など、海外動向は先行きの不透明感に影響を与えています。
良い面もありますが、悪い面がやや目立つ調査結果でした。
――2024年の日経平均も過去最高レベルに上昇、賃上げも30年ぶりの高水準と明るい材料が多いと思われたのに、2025年の見通しがこれほど厳しい結果になったのは、ズバリ、何が一番大きな理由でしょうか。
中村駿佑さん 調査結果によると、最も大きな要因は「原油・素材価格(の上昇)」でした。一昨年(2022年)や昨年(2023年)よりも価格の上昇率は控えめとなりましたが、なかなか下がることはなく、高止まりしていることが大きな要因となっています。
企業からも、原油価格の上昇による資材・輸送費の高騰を懸念する声が多く寄せられました。
「回復」予想が高い『金融』でも、決して見通しはよくない
――悪化局面の予想では、「小売」がずば抜けて高く、「農・林・水産」「建設」と続きます。それぞれの理由は何でしょうか。
中村駿佑さん 「小売」では、引き続き原材料費の高騰や食料品・生活必需品の値上げなどにより、個人消費が伸び悩むことへの懸念が非常に大きくなっています。
たとえば、「更なる電力値上げや原材料・物流費の高騰など各種コストアップによる企業の収益悪化に加え、消費者心理の冷え込みにより先行きが見通せない」(愛媛県の飲食料品店)といった声が寄せられています。
また、「農・林・水産」「建設」に関しても、人手不足や原材料・資材価格の高騰が懸念されています。「世界・国内ともに社会情勢が混とんとしていて、見通しが厳しいと考えている」(福岡県の建設会社)といった声があがっています。
―― 一方、回復局面の予想では、「金融」が突出して高く、「悪化」でも最低です。この理由は何でしょうか。やはり、日本銀行の利上げなどが影響しているのでしょうか。
中村駿佑さん 「金融」の「回復局面」が業界別の中では最も高いとはいえ、わずか10%ほどであり、「踊り場局面」と「分からない」が合計で70%以上を占めています。
そのため、決して見通しがよいというわけではなく、不透明感が高まっているといえます。金融関連の企業からは、トランプ氏の政策の行方を懸念する声が多くあがっており、見通しが立たないようです。
個人向けの減税や、消費拡大策が喫緊の課題だ
――となると、明るい見通しの業界はほとんどないわけですね。景気回復に必要な政策として、「個人向け減税」が急上昇、一方、「原材料不足や価格高騰への対策」がダウンしています。もう価格高騰への対策に期待することはあきらめたといったところでしょうか。
中村駿佑さん 「原材料不足や価格高騰への対策」に対してあきらめているわけではなく、実質賃金や個人消費の停滞を改善するための「個人向け減税」に注目が集まるとともに、その重要性が高まっているためです。
――最後に、担当者として景気回復に一番大切なことは何だと考えていますか。
中村駿佑さん 2025年も引き続き、原油や原材料価格の高止まり、物価上昇、海外経済の動向などは企業活動を行ううえでのリスクとして表れていくとみられます。これらの対策と同時に、人手不足への対応と個人向けの減税や消費拡大策が喫緊の課題と言えます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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