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官民ファンド 事業リスクの精査が甘すぎた

読売新聞 / 2025年1月9日 5時0分

 海外特有の事業リスクの精査が甘く、適切な人材も十分に確保できていなかった。巨額の赤字を解消するため、国土交通省と傘下の官民ファンドが負うべき責任は重い。

 国交省の有識者委員会は、巨額損失を抱える官民ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)」の在り方や経営改革に関する報告書を公表した。

 官民ファンドの役割は、民間企業だけではリスクを負いきれない分野に公的な資金を投じ、民業を補完することにある。

 政府は2013年以降、成長戦略の一環として各種の官民ファンドを設立した。主要なもので10以上あり、そのうちJOINは、鉄道や都市開発など日本企業のインフラ輸出を後押ししている。

 報告書が明らかにした問題点は投資体制の脆弱ぜいじゃくさである。

 米テキサス州での新幹線建設事業では、米国の事業会社の資金調達が進まない中、JOINが出資や融資を行って開発費を全面的に負担していた。

 民業補完の原則から逸脱し、官がリスクを取り過ぎたと言わざるを得ない。鉄道に知見のある人材を欠いていた問題も大きい。

 ブラジルの都市鉄道については、治安の悪化などによる需要低迷という、海外特有のリスクを適切に精査できなかった。

 JOINは、こうした失策を重ねた結果、23年度の決算で約800億円の損失を計上した。累積赤字額は、24年度末に1000億円を超える見通しだ。損失を解消できないまま、国民に負担を押しつけることがあってはならない。

 報告書を受け、JOINと国交省は経営改善策をまとめた。

 リスクを抑制するために、特定の国や案件に投資が偏らないように1件あたりの投資額に上限を設けるという。また、成否が見極めにくい新興企業などへの投資は当面控える方針だ。いずれも妥当な対応策ではあろう。

 だが、今回の経営改善計画を実行したとしても、累積赤字を解消できるのは49年度だという。

 これから25年もの期間を要する計画は、国民の感覚と乖離かいりしてはいないか。赤字の解消時期をできるだけ前倒しできるよう、事業を不断に点検すると同時に、経営体制や人材活用の在り方を見直していくことが不可欠になる。

 中国が途上国のインフラ整備で影響力を増す中、日本政府がインフラ輸出を推進していく必要性は高い。国益に資する事業を見極め、支援していくことが重要だ。

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