イオン銀処分 犯罪資金の洗浄は放置できぬ
読売新聞 / 2025年1月11日 5時0分
面識のない者同士がSNSで結びつき、犯罪集団を構成する時代に入ってきた。金融機関は、犯罪で得た収益が野放しにならないよう資金洗浄対策を徹底しなければならない。
金融庁は、流通大手イオンの傘下にあるイオン銀行に対して、マネーロンダリング(資金洗浄)の対策に不備があったとして業務改善命令を出した。
2023年6月から11月と、24年7月から9月に、監視システムで検知した少なくとも計1万4000件以上の取引について、金額の大きさなど疑わしい取引に該当するか否かを調べず放置した。
金融庁に疑わしい取引の届け出も怠っていたという。
資金洗浄は、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者を分からないようにして、捜査機関の摘発を逃れる手口だ。
送金という社会インフラを担う金融機関は、資金洗浄の防波堤となるべき重い責務を負う。ずさんな管理は看過できるものではない。経営陣が主導し、再発防止策を徹底していくべきだ。
近年、資金洗浄対策の重要性は増している。SNSでつながり離合集散を繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)や、SNSで強盗などの実行役を募る「闇バイト」が
大阪府警が昨年摘発した例では、犯罪集団が協力者に実体のないペーパー会社を作らせ、約4000の法人口座を開設した。
少なくとも700億円に上る特殊詐欺の被害金や、違法なオンラインカジノの賭け金とみられる資金を海外口座などに移していた。犯罪収益が国外へ流れれば、捜査による捕捉が難しくなり、犯罪が次々と拡大する懸念がある。
日本は国際機関から資金洗浄対策が甘いと指摘されてきたことも、重く受け止める必要があろう。「金融活動作業部会(FATF)」は、21年の審査報告書で、日本の中小金融機関の取り組みが十分ではないと指摘している。
犯罪集団は、対策が弱い金融機関を狙い撃ちにすることも想定される。大手行に比べ、イオン銀などの事業会社が設立した金融機関は、対策に十分な人手や資金をかけにくいとされる。日本を資金洗浄の抜け穴にしてはならない。
全国銀行協会は、不正利用の疑いのある口座情報を迅速に共有する仕組み作りを進めている。人工知能(AI)を活用した不審な取引の把握を含め、業界を挙げて対策を強化することが重要だ。
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