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包丁握った男に突進され恐怖、元警察官が誰でも簡単に使えるさすまた開発…全国から注文相次ぐ

読売新聞 / 2025年1月13日 20時0分

さすまた開発に取り組む原さん

原明徳さん(74)

 暴漢や不審者を取り押さえるために欠かせない「さすまた」。警察官在職中から開発に取り組み、定年退職後には、体に押し当てるとアームが締まり、身動き出来なくする改良型を考案した。全国から引き合いがあり、無償で使用方法の指導にも赴く。「犯罪を人ごとと思わずに、身を守る方法を知ってほしい」と力を込める。

 長野県伊那市(旧高遠町)で生まれ育った。幼少期から正義感が強くヒーローに憧れていた。高校時代に打ち込んだ柔道の経験を生かし、「社会悪に立ち向かっていきたい」と、卒業後に長野県警の警察官に。飯田署を振り出しに警備畑を渡り歩く。

 柔道四段の実力で武術を得意としながら、柔軟な発想力で地域を守ってきた。安全な街づくりを呼び掛けたのぼり旗を制作し小学校に設置したり、タクシー会社の協力を得て利用者に防犯情報を周知したり。「アイデア警察官と言われることもありました」と笑う。

 さすまた開発は、実体験がきっかけだった。40年ほど前、「息子に殺される」との一報を受け民家へ駆けつけると、包丁を握った男が突進してきた。間一髪で免れたが、身に迫る恐怖に冷や汗が止まらなかった。「もし市民が襲われていたら、命はなかったかもしれない」。暴漢を確実に確保できる防犯器具の重要性を痛感した。警察官を続けながらホームセンターで部品を探し回るなどし、1994年にアームで体を囲い込むさすまたを考案した。

 2011年に定年退職した後は、新型の開発、普及に没頭した。約1年間、岡谷市の金属加工の工場に通い詰め、14年に「誰もが簡単に使用できる」納得の一本が完成した。

 全長2メートル、重さ2・2キロ・グラムのアルミニウム製で、アームの可動性能が改良されたほか、強度を保ちつつ、女性など力の弱い人でも使用できるよう軽量化を実現した。その後改良を加え、暗闇でも使えるようLEDライトを付属し、緊急事態だと周囲に伝えられるように防犯ブザーも取り付けている。

 さすまたは、「万一に備えておきたい」という県内外の小中学校、幼稚園、病院などから注文が相次いだ。これまでに計約600本を受注販売している。正しく使えるよう全国各地の導入先に無償で足を運び、使用方法や護身術を指導している。「犯罪は、いつどこで発生するか分からない。常に危機意識を持ち、訓練に励んでほしい」と願う。

 さすまた普及の傍ら、地域の小学校で登下校時の見守りや防犯に関する講演などを行い、保護司も務めている。「老いてますます元気。たった一度きりの人生、世のため、人のために尽くしていきたい」。人命を守りたいという熱い思いは、ヒーローに憧れた幼少期から変わらない。(藤井健輔)

 ◇はら・あきのり 1950年、長野県伊那市(旧高遠町)生まれ。高遠高校卒業後、長野県で警察官に。中野署と長野南署の警備課長などを歴任し、退職後はさすまたの開発、普及に取り組む。現在受注販売するさすまた「セキュリティセイバー」は1本6万8000円(税別)。

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