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iPS細胞で「水疱性角膜症」治療、矯正視力0・5に回復…藤田医大や慶大チーム

読売新聞 / 2025年1月14日 1時0分

医療ニュース

 角膜の細胞が減り視力が落ちる「水疱すいほう性角膜症」の患者の目にiPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の細胞を移植する臨床研究で、患者の矯正視力が0・5に回復したと、藤田医科大や慶応大などの研究チームが発表した。13日付医学誌「セル・リポーツ・メディシン」に論文が掲載された。

 水疱性角膜症は、黒目の内側で水分量を調節する「角膜内皮細胞」が減って角膜が水ぶくれし、視界が濁って視力が落ちる。白内障手術などの合併症として発症する例が多く、放置すると失明の危険もある。

 チームは2022年10月、健常者のiPS細胞から作製した角膜の細胞約80万個を、70歳代の男性患者の左目に特殊な注射器で移植した。男性は手術前に眼鏡をかけても視力が0・02で「矯正不能」と判定されていたが、術後1年までに眼鏡で0・07、コンタクトレンズで0・5まで回復した。視界の濁りや角膜の水ぶくれも改善したという。

 移植後に副作用や合併症は確認されていないが、移植に使った角膜の細胞で、がんを抑制している遺伝子の配列に変異が見つかった。研究チームは遺伝子の配列を移植前に4回検査し、最初の3回は正常だった。4回目の検査は移植直前に行い、移植後に変異が判明した。変異があったのは遺伝子の機能に影響がない部位で、チームは健康に影響する可能性は低いとみている。

 角膜移植の待機患者数は現在、全国で2000人近いとされる。今回の研究が実用化すれば、献体を必要とする角膜移植に代わる可能性があり、慶応大発の新興企業「セルージョン」(東京)が治験の準備を進めている。

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