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拡声機使った広島原爆忌デモ、市民7割「式典に悪影響」…「厳粛」「表現の自由」の両立に課題

読売新聞 / 2025年1月14日 15時0分

原爆ドーム(2024年7月17日、広島市中区で)

 昨年8月6日の原爆忌に広島市の平和記念式典の会場周辺で行われたデモについて、市が被爆者や遺族らにアンケートを行ったところ、7割が拡声機を通じた音が式典に「悪影響がある」と回答した。拡声機を使ったデモは常態化しており、昨年は入場規制を強化して臨み、退去命令に応じなかった市民団体の幹部に初めて過料の支払いを命じた。市は「被爆80年に向け、表現の自由に配慮しながら厳粛な式典の実現を目指す」としている。

平和記念式典「厳粛」には遠く

 「集会禁止を絶対に許さない」。昨年8月6日午前4時頃、原爆ドームに大きな声が響き渡り、周辺は物々しい雰囲気に包まれた。ヘルメットをかぶって拡声機を手にした市民団体のメンバーが集結し、座り込んでいた。

 午前5時30分頃からは、警察官や市職員が「公園内は慰霊の場です。直ちに退去しなさい」と、市公園条例に基づき入場規制エリアからの退去を命じた。しかし「警察は帰れ」などと応じず、午前8時15分の黙とうまで100人超の群衆が居座った。

 市の担当者は「逮捕者やけが人は出なかったが、市平和推進基本条例で『厳粛の中で行う』と定められた式典からはほど遠い状況だった」と振り返る。

 市がデモの実施状況を調べたところ、デモ参加者は前年より数百人多い600人前後いた。原爆ドーム前には前日午後9時から数百人が集まり、少なくとも9台の拡声機が使われた。再三の退去命令に従わなかったとして、市は公園条例の施行以降初めて、団体の幹部に過料5万円の支払いを命じる告知をしたという。

音量「85デシベル以下」要請も基準超え

 一昨年の原爆忌では、ドーム周辺で中核派の活動家が市職員に体当たりしたとして逮捕・起訴される事件が発生。そこで昨年は入場規制の範囲をドーム周辺も含めた平和記念公園全体に拡大した。拡声機やプラカード、横断幕の持ち込みは禁じ、手荷物検査を強化するなどの再発防止に努めた。

 そのうえで、原爆忌に式典会場で被爆者や遺族、一般参列者ら計1万1408人にアンケートを配布。1463人の有効回答を分析した。「拡声機の音が聞こえた」と答えたのは1130人で、最多の時間帯は75%が「岸田首相のあいさつ中」と回答。音が式典に「悪影響がある」と答えたのは69%だった。

 市は原爆忌前、市民団体に拡声機からの音量が「85デシベル以下」になるよう要請していた。式典中の音量を測定した結果、会場の2地点は守られたが、デモ行進のルート付近8地点で基準を上回った。85デシベルを超えたのは26分間で、前年よりも15分長くなった。

 アンケートでは、団体への要請について74%が「適切」とし、12%は「適切ではない」と回答。適切ではない理由として「表現の自由を制約する」が最多の37%に上った。

 市の担当者は「今回の対応を県警と検証し、表現の自由と厳粛な式典の両立を目指してデモ実施団体と協議を重ねたい」と話す。

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