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小説のキャラクターは、人物が夢に出てくるまで考える……作家の森沢明夫さん新刊を語る

読売新聞 / 2025年1月24日 15時30分

田中秀敏撮影

「桜が散っても」森沢明夫さん

 愛用の品と一緒に写真を撮らせてほしいと、事前に頼んでいた。持ってきてくれたのは、伸び縮みする孫の手と、熱が冷めにくいというマグカップだった。「仕事をすると気がつけば時間がたち、コーヒーなどがぬるくなるので」

 1969年生まれの作家の新刊は、ある家族の物語だ。山深い村で、老人が雨に打たれて亡くなっているのが見つかる。彼はかつて、妻と子どもたちに恵まれ、大手建設会社に勤めていた。彼は、なぜ家を出たのか。何をして過ごしたのか――。

 「人の人生は、家族のような近くの人でも分からないですよね。想像力を持つことが大切だと思うんです」

 家族は、生前の彼の姿をたどり始める。一枚一枚、カードをめくるように思いがけない事実が明かされる。「物語を書き出す前に伏線の張り方を考え、長いあらすじを作ります」。もう一つ、工夫を凝らすのはキャラクター作りだ。

 「何年何月何日生まれで、血液型、身長、髪形、爪を短く切るタイプか。頭のてっぺんからつま先まで、知っている人と思えるまで書き出します。執筆のときは、その人物がある舞台に立って行動する姿を、透明人間になった僕がメモをするような感じです」

 題名にある「桜」が話の大きな鍵だと分かる頃、深い感動が押し寄せてくる。

 学生時代は、海や川をバイクで旅して回った。早大卒業後、出版社に勤めた。多くの人と編集の仕事をするより、「自分一人で完璧なものを作りたいと思うタイプ」だと気づき、文筆の道に進んだ。吉永小百合さん主演で映画化された『虹の岬の喫茶店』など、多くの作品を手掛ける。

 「人間は成功するためではなく、幸せを味わうために生きている。人生の価値は財産の量ではなく、味わった感情の質と量で決まると思う」(幻冬舎、1870円)待田晋哉

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