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「将来は獣医師かトリマーに」と思っていた高校時代の南沢奈央さんが、芸能界入りしたきっかけは

読売新聞 / 2025年1月24日 15時15分

片岡航希撮影

『黄色い目の魚』佐藤多佳子著(新潮文庫) 880円

 「将来は獣医師かトリマーに……」。高校受験の勉強に励んでいた中学3年のとき、芸能事務所から思いがけずスカウトされた。その時は断ったものの、高校に入学してから見た舞台がきっかけで「物語」を演じることに魅力を感じ、女優の世界に足を踏み入れた。

 「セリフを覚えるために台本も読まなくちゃいけないし、忙しくて友達と遊ぶ暇なんかない。電車での移動中やドラマの撮影現場で出番を待つ間に好きな本を読むのが唯一の息抜きでした」。中学の頃から愛読していた東野圭吾さん、宮部みゆきさん、道尾秀介さんらのミステリーの世界に浸った。

 仕事に全力で取り組んではいたものの、はっきりした手ごたえはつかめなかった。「周りは大人ばかりで右も左もわからない。現場で怒られながら試行錯誤する毎日。これでいいんだろうかと一人で悩んでいた」

 そんな時に出会ったのが、佐藤多佳子さんの『黄色い目の魚』だった。

 主人公は2人の高校の同級生、サッカー部員で絵を描くのが得意な木島悟と、気が強くて好き嫌いがはっきりしている村田みのり。悟は写生の授業でモデルに選んだみのりに魅せられ、みのりも悟が気になり始める。2人はいつしか心を通い合わせるようになる。

 自分と同じ16歳で、周囲に溶け込めないタイプのみのりに強くひかれ、読み進むうち、決定的な場面に出会った。

 「みのりにもっと本気で絵を描いたらと促され、悟は本気になるのが怖い、自分の限界が見えてしまうからと答える。それを聞いたみのりは、限界が見えるようなことは私には何もできないと言った後、『何が好きかだけは、わかってるんだ』とうらやむんです」

 演じることに今ひとつ本気になれなかった当時、その言葉がものすごく心に刺さった。「何が好きかがわかれば本気になれるかもしれない。自分は本当に女優になりたいのか? それを知るためにも、今やっていることに全身全霊で打ち込もう。そう決心するきっかけになりました」

 もう一歩、先に進めるかもしれない。そうすれば、そこに未来があるかもしれない――。そんな希望を抱かせるすがすがしいエンディングの青春ストーリーは、女優の道へ進む大きな後押しをしてくれた。(松本良一)

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