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外観見学だけでもすぐ完売の「旧渋沢邸」、一般公開へ…バーチャルツアーには4000超すアクセス

読売新聞 / 2025年2月1日 16時0分

 日本の資本主義の基礎を築いた実業家・渋沢栄一(1840~1931年)とその子孫が暮らした屋敷「旧渋沢邸」(東京都江東区)が新年度、一般公開される。新1万円札の顔になり、区の有形文化財(建造物)の指定も受けたことから、所有する清水建設が決めた。先行して始めた邸内の「バーチャルツアー」も好評で、渋沢人気はまだまだ衰えそうにない。(江原桂都)

「貴重な経験」

 「新札になってから渋沢のことを調べ始めて、もっと知りたいと思うようになった。外観だけでもおうちを見られてうれしい。邸内を見学できるようになったら、絶対にまた来たい」

 江東区観光協会が昨年10月に開催した「渋沢栄一ゆかりの地をめぐる まちあるきとクルーズ」。区内から参加した50歳代の女性は、旧渋沢邸を見渡してこう喜んだ。

 昨年6月から12月にかけて全10回行われたツアーでは、渋沢創業の「渋沢倉庫」の守護神としてまつられた福住稲荷神社や、渋沢が題字を揮毫きごうした句碑のある深川公園など、江東区内のゆかりの地を学芸員が案内をした。定員は各30人だったが、いずれの回も予約開始から1~2時間ほどで完売したという。

 ツアーの目玉となったのが、昨年3月オープンの清水建設の研究開発拠点「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」(江東区潮見)に移築された旧渋沢邸の外観の見学だ。

 旧渋沢邸は、渋沢が清水建設の2代目当主で、和洋折衷の建築を得意とした清水喜助に発注し、1878年(明治11年)に完成した。

 2階建てで、最初に建てられたのは、物流の集積地として栄えていた東京府深川福住町(現・江東区永代)だったが、その後、現在の港区三田や青森県六戸町に移築された。その間に増築を重ね、昭和初期に完成した洋館と棟続きになった。

 2019年、「2代目の清水喜助のものづくりを知ることができる建物を後世に残したい」と同社が取得し、渋沢とゆかりのある江東区内への移築を決めた。区観光協会の千賀美友紀さんは、「区内に帰ってきた邸宅を見られるのは貴重な経験」と話す。

 ただ、旧渋沢邸は清水建設の社員の研修などに利用されており、中には立ち入れない。「内部を見学したい」との問い合わせも後を絶たず、同社は区と有形文化財の指定に関する協議を続ける中で、広く公開することを決めた。

オンラインで「散策」

 同社は現在、一般公開の時期や展示内容を検討している。昨年9月には、公開に先立ち、建物の内外を360度カメラで撮影した写真を使ってオンライン上で自由に散策できるバーチャルツアーを開始。同11月からは、ユーチューブでの紹介動画も公開している。

 「バーチャルツアー」は、特設サイトから。同社が開発したデジタル取扱説明書のアプリ「デジトリ360」の技術を活用しており、建物の平面図や説明も見られる。これまで4000件を超えるアクセスがあった。

 同社NOVAREアーカイブスの宮田幹士・ジェネラルコンダクターは、「一般公開に向けた具体的な計画を検討しているので、楽しみにお待ちいただきたい」と話している。

物産展や講座…関連イベント続々

 渋沢栄一関連のイベントも当面続きそうだ。

 板橋区では、2月4~6日に「渋沢栄一物産展」を区役所1階で開催する。渋沢が区内にある「都健康長寿医療センター」の前身・「養育院」の院長を長く務めた縁から企画された。渋沢に関係のある五つの自治体や、板橋区内の飲食店が、ブースを構え、特産品や名物が並ぶ。渋沢についてのパネル展示や渋沢グッズが当たる抽選会も行われる。

 板橋区は今年度、10件以上の渋沢関連のイベントを主催するなどしてきた。区の担当者は「ゆかりの自治体同士のつながりができたので、集大成として物産展を企画した。区内外の方に来てもらいたい」と話す。

 江東区古石場文化センターでは、2月まで連続講座「渋沢栄一 ~もうひとつの側面~」が開講中だ。渋沢の文化的な関心や素養、公共事業との関わりなどに焦点を当てた全5回の講座で、担当者は「新札の顔に決まってから、特に区民の関心は高く人気の講座になっている」と話した。

 この他、シンポジウムなども複数計画されている。

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