能登で犠牲の女性が手掛けた100ピースの蒔絵、皇室から遺族のもとへ…彬子さま「天上からつないでくれたご縁」
読売新聞 / 2025年2月2日 15時55分
昨年1月の能登半島地震で亡くなった輪島塗の
次代担う期待
島田さんは高校時代、美術科の授業で出会った蒔絵に魅了され、石川県立輪島漆芸技術研修所(輪島市)で修業。卒業後は、現地の蒔絵師に弟子入りして研さんを積んだ。
2018年に独立し、輪島市の朝市通り近くに古民家を改修した自宅兼工房を構えた。独創的な絵柄と色遣いで仕事の依頼も増え、次代を担う職人として地元でも期待を集めていた。
しかし、地震で朝市通り一帯は大火に包まれ、次女の怜奈さんは帰らぬ人になった。父の富夫さん(73)、母の裕子さん(66)は「夢をかなえ、故郷を離れて『ここでやっていく』と覚悟を決めた姿をずっと応援したかったのに」と、失意に沈んだ。
2年かけ完成
両親に思いがけない連絡が入ったのは昨年11月末頃。島田さんが所属していた漆芸家グループ「彦十蒔絵」からだった。「彬子さまが、ジグソーパズルを遺族に返したいとおっしゃっている」との説明を受けた。両親は「あまりに恐れ多い」と悩んだ末、受け取ることにした。
ジグソーパズルは、彬子さまが彦十蒔絵に制作を依頼し、23年6月に100歳(百寿)を迎えた祖母の百合子さまに贈られたものだった。45センチ四方で百寿にちなんだ100ピース。5人のお子さまを育てられた百合子さまを表現するように、ユリの花の周りを5匹のチョウが舞う図柄が描かれていた。
彦十蒔絵によると、依頼から完成までに2年を要し、下地や上塗りを含めて6人の職人が関わった。「鮮やかな色を作る技術が高い」と、島田さんが蒔絵担当に選ばれ、日本画家・
彦十蒔絵のマネジャー
「怜奈と思い」
裕子さんは「人づてに、怜奈が高貴な方の仕事をさせていただいたと聞いていたが、現物を見たのは初めて。誇りを胸に頑張ったんだと思う」と話した。
両親は昨年12月に島田さんの納骨を行った。一周忌を迎えた今年の元日は島田さんの友人たちが自宅を訪ねて来たり、花を送ってくれたりした。富夫さんは「多くの人に思ってもらえていたんだなあと実感した」と語り、裕子さんは「怜奈がいなくなったことは受け止められないが、彬子さまが思いをはせてくださり幸せです。怜奈だと思って大切にします」と、娘の作品をいとおしそうに見つめた。
妃殿下の枕辺で続きを仕上げさせていただいた…彬子さま手記
百合子さま逝去後、彬子さまは小学館の女性誌「
彬子さまの手記「最愛のおばあちゃま、三笠宮妃殿下との思い出」(抜粋)
私は百寿のお祝いに、100ピースの漆塗りのジグソーパズルをお贈りした。咲き乱れる
妃殿下はとても喜んでくださり、「紙かと思ったら漆でね。厚みがあるからとてもやりやすいの」と、あっという間に仕上げてくださった。
その職人さんが、能登半島地震で命を落とされた。若手のとても有望な方だったそうで、その話を聞いたときはつらすぎて言葉が出なかった。
このパズルを職人さんのご遺族の方にお贈りさせて頂こうと思っている。
一部のピースが外れてバラバラになっていたので、妃殿下の枕辺で続きを仕上げさせていただいた。涙が出てきてしまい、なかなか思うようにできなかったけれど、最後の最後に妃殿下との合作という最高の夢をかなえてもらった。
天上から職人さんがつないでくれたご縁であったと思っている。
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