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高度実験施設 新たな感染症出現に備えたい

読売新聞 / 2025年2月5日 5時0分

 新型コロナウイルスの世界的流行が示したように、感染症に対する備えは国の危機管理の基本である。あらゆる病原体に対処できる態勢を整えなければならない。

 政府は長崎大学が新設した実験施設について、致死性の高いエボラウイルスなどの病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL)4」に指定した。

 国内のBSL4施設としては、すでに国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)の施設があるが、周辺住民の要望を踏まえ、市外への移転が検討されている。早急に候補地を決め、2施設体制を確保したい。

 感染研の施設が患者の検査・診断などに限定されているのに対し、長崎大の新たな施設は、ワクチンや治療法の開発といった幅広い研究が可能とされる。感染症への対応能力が大きく向上することになるだろう。

 長崎大でも周辺住民の反対運動が起きている。病原体が施設から漏れ出るのではないかと不安に思うのは自然なことだ。ただ、実験室は外気と遮断されており、研究者は専用の防護服を着るなどの感染予防措置が講じられている。

 危険な病原体であればこそ、それを管理し研究しない限り、対策の立てようがない。海外から病原体が持ち込まれ、感染が疑われる患者が出た場合、対応できる施設が国内になければ、迅速に病原体を特定することすらできない。

 世界では20か国以上に約60か所のBSL4があるという。非常時に病原体の分析を他国に依頼している余裕はなく、先進各国は自前の施設を維持している。市街地にある大学や研究所内に併設されることも少なくない。

 政府は施設の役割や安全対策を十分に説明し、国民に理解を深めてもらう必要がある。

 地球温暖化や環境破壊が進むことで、新しい感染症が出現する懸念は年々高まっている。国際的に人や物の往来が激しくなり、いつまた未知の感染症が世界に蔓延まんえんしても不思議ではない。

 今回、長崎大の施設が指定にこぎ着けるまで、計画の検討を始めてから15年以上がかかった。日本は、新型コロナワクチンの開発・製造でも欧米に大きく後れをとっている。感染症に対する危機意識が薄かったのではないか。

 長崎大は、施設を安全に運営し、地元の信頼を獲得することが大切だ。BSL4施設の運用や、ウイルス研究に関する人材育成の拠点となることも期待したい。

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