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非正規の「学び直し」研修、正社員の半分以下…格差改善へ受講しやすい訓練コース新設

読売新聞 / 2025年2月5日 15時0分

 働き手のリスキリング(学び直し)を巡り、パートや契約社員といった非正規労働者に対する企業や国の取り組みが遅れている。技能向上を目的とした研修やセミナーの実施率は、正社員の半分以下。厚生労働省は今年度、非正規に特化した職業訓練コースを新設し、改善に乗り出した。(中村俊平)

ITスキル学び転職

 長野県岡谷市の花岡香奈さん(34)が学び直しを決意したきっかけは、コロナ禍だった。介護施設でパートとして働きながら、独りで小学6年の息子を育てていた。感染拡大で息子の学校が休校になる度、仕事を休まざるを得なかった。

 時給制で、出勤しなければ給料は出ない。収入がほとんどない月もあった。夜勤に入れないため、その職場では正社員になるのが難しい。「息子の将来のためにも、お金を稼げるデジタル分野のスキルを身に付けよう」と思い立った。

 2023年7月から民間スクール「インターネット・アカデミー」(東京)に入り、ウェブサイトの制作方法などを学んだ。仕事や家事に追われながら、オンライン授業や動画教材を活用。昨年6月、IT企業の採用に有利になるウェブクリエイター試験に合格した。

 正社員として転職することを目指し、今年1月にIT企業から内定を得た。「学び直しをしたくても、家庭との両立に苦労する人は多いはず。国は非正規を含め、多くの人が学び直しに挑戦できる環境を整えてほしい」と話す。

育成に消極的

 労働市場を活性化するため、政府は学び直し支援に力を入れ、22年10月に5年間で1兆円を投じる方針を打ち出した。昨年10月からは、週20時間以上働く雇用保険の加入者を対象に、国が指定する教育訓練の受講料の補助率を最大70%から80%に引き上げた。

 ただ、非正規労働者向けの取り組みは進んでいない。厚労省が23年に実施した調査では、労働者の技能向上のため企業が行う研修やセミナーの実施率は、正社員が71%なのに対し、非正規は28%だった。非正規は短期間で離職する可能性があり、企業側が人材育成に消極的なことが背景にある。

 非正規労働者が学びやすい環境をどう整備するかも課題となっている。非正規の87%は「向上したい能力がある」と回答したが、学習など「自己啓発」に取り組む人の割合は、19%にとどまった。自己啓発を行うのが難しい理由に、家事や育児、費用負担の大きさを挙げる人が多かった。

夜間や休日も受講

 こうした声を受け、厚労省は24年度、非正規労働者が受講しやすい職業訓練のコースを新設。これまではハローワークで平日昼間に行われるものが中心だったが、平日夜間や休日にもオンラインなどで学べるようにした。

 ソフトウェア開発などの「デジタル」と「営業・販売・事務」の2分野を、希望者は5000円で計150時間受講できる。同省は今後、受講者の賃上げや正社員化などの効果を検証し、分野拡大も含め本格運用につなげる考えだ。

 パーソル総合研究所の小林祐児・上席主任研究員は「学び直しの機会の隔たりは生涯賃金の格差にも直結するため、非正規ほど必要性が高い。企業は研修を充実させるだけでなく、受講が待遇改善につながることを示して意欲を高める必要がある」と話している。

2100万人、全体の37%

 1991年のバブル崩壊後、日本企業は人件費削減のため、正社員よりも賃金が低く、解雇しやすい非正規労働者を増やしてきた。

 厚労省によると、2023年は約2100万人に上り、全体に占める割合は37%。正社員になれず、不本意ながら非正規で働く人は約200万人いる。

 待遇も悪く、23年の平均賃金は22万6600円で、正社員の33万6300円の67%だった。国は13年度から、非正規の正社員化など待遇改善に取り組む企業に助成金を支給しており、22年度は10万人超が正社員になった。

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