焦点:米中関係、来年も緊張高める複数の懸案 年明けに台湾総統選
ロイター / 2023年12月24日 9時5分
来年は台湾の総統選挙、米大統領選、貿易摩擦の継続など問題がめじろ押しで、米中関係は新たな波乱に見舞われそうだ。写真は11月、米カリフォルニア州ウッドサイドで会談する中国の習主席(左)とバイデン米大統領(右)(2023年 ロイター/Kevin Lamarque)
Don Durfee Antoni Slodkowski
[ワシントン/北京 20日 ロイター] - 米中関係はこの1年間、中国の偵察気球を巡る騒動や半導体摩擦、軍備競争などで緊張が高まる場面が続いた。しかし、11月にバイデン米大統領と習近平・中国国家主席が会談し、関係悪化に歯止めをかけたいとの意向を示したことで、両国は不安を抱えつつも緊張がやや緩和した状態で年の瀬を迎えつつある。
ただ、来年は台湾の総統選挙、米大統領選、貿易摩擦の継続など問題がめじろ押しで、両国関係は新たな波乱に見舞われそうだ。
<台湾問題>
まずは年明け1月13日に台湾で、総統選挙と立法委員選挙が行われる。中国の反応次第で米中両国が互いに疑心暗鬼に陥りかねない。
台湾総統選は、反中姿勢を打ち出している与党・民進党の頼清徳・副総統(副総統候補は蕭美琴・前駐米代表)が世論調査でリード。中国は両候補を「二枚舌の独立派」と呼び、頼氏からの対話の呼び掛けを拒否している。
台湾の選挙は、以前にも米中間の緊張を高めている。例えば、1996年の第3次台湾海峡危機の際には中国軍が台湾近海にミサイルを放ち、米国が空母機動部隊を派遣する事態となった。
中国政府は今回、再び軍事的・政治的圧力を強め、台湾総統選は「平和か戦争か」の二者択一との構図を作り上げるとともに、与党候補は危険な独立主義者だと主張。台湾市民に「正しい選択」をするよう迫っている。
アナリストの間には、習氏は衝突を避けたいと考えており、頼氏が勝てば中国の軍事的反応が緩むとの見方もある。しかし、台湾は選挙を控え、軍事・政治の両面で中国の動きに対して厳戒態勢を敷いている。
<トランプ氏の返り咲きはあるか>
2024年の米大統領選挙はもっと重大な結果をもたらす可能性がある。土壇場でよほどの波乱がない限り、米大統領選は再び、バイデン氏とドナルド・トランプ前大統領の一騎打ちとなる公算が大きい。
選挙戦で中国に対して激しい「口撃」が繰り広げられるのは確実だが、習氏の関心はトランプ氏が大統領に返り咲くか否かの一点に集中するだろう。
スティムソン・センター(ワシントン)のユン・スン所長は「中国にとって米大統領選でのトランプ氏返り咲きは、最もひどい悪夢だ」と話した。
米中関係はバラク・オバマ元大統領の任期中に緊迫した後、トランプ政権下で全面的な貿易戦争へと悪化。新型コロナウイルスの起源や、台湾への対応を巡り新たに緊張が高まった。
一方、トランプ氏の返り咲きは、ある面では中国にとって地政学的な追い風にもなりうる。バイデン氏はトランプ政権が導入した対中関税を維持しつつ、新たな輸出規制を導入し、同盟国との関係を強化するなど巧みに中国政府への圧力を高めてきた。
トランプ氏が基本的に孤立主義を採って同盟国から距離を取るなら、米国の力に囲い込まれていると感じている中国の指導者にとって利益になるかもしれない。
だが、スン氏によると、バイデン氏には不満かもしれないが、中国の指導者は同氏を、争いにおいてもルールに従うとともに、半分は機能している米中関係を尊重する人物だと見ている。
一方のトランプ氏は予測が不可能だ。「トランプ政権下ではほとんど何も意味のある対話はなく、緊張のエスカレートが止まらなくなった」とスン氏は述べた。
<半導体紛争>
最先端の半導体を中国の手に渡らないようにすることを狙った米国の対中輸出規制は、来年はさらに強化されるだろう。
米国は今年10月、既存の規制を強化して「抜け穴」をふさいだ。レモンド米商務長官は「少なくとも毎年」強化する見通しだと述べており、来年はさらに厳しくなりそうだ。
対中輸出規制の実効性については議論があるが、中国政府は規制への対応に苦慮してきた。米企業に対して報復措置を採れば、経済成長が鈍化する中で中国にとって不可欠な外国資本を遠ざける恐れがあるからだ。
中国政府が手にしている対抗手段の一つが、半導体製造に欠かせないレアアース(希土類)供給国としての圧倒的な立場。中国は7月に特定のガリウムとゲルマニウム製品を対象とする輸出規制を発表し、以来、輸出は急激に落ち込んでいる。
米当局による規制違反の取り締まりにより緊張は高まるばかりで、バイデン政権は今年、米国の機密技術を不正に取得しようとする動きに対処するタスクフォースを発足させた。
アクセルロッド商務次官補(輸出担当)はロイターに寄せた声明の中で「中国への技術輸出に関わる明らかな違反行為の調査が進行中であり、2024年にはこうした取り組みの結果、輸出について重大な規制措置が実施される見通しだ」と述べた。
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