追加利上げ、「時間かけて慎重に」=日銀10月会合議事要旨
ロイター / 2024年12月24日 11時24分
日銀が10月30―31日に開いた金融政策決定会合で、1人の委員が「政策金利引き上げの判断は時間をかけて慎重に行う必要がある」と述べていたことが明らかになった。写真は3月18日、東京で撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Takahiko Wada
[東京 24日 ロイター] - 日銀が10月30―31日に開いた金融政策決定会合で、1人の委員が「政策金利引き上げの判断は時間をかけて慎重に行う必要がある」と述べていたことが明らかになった。日銀が24日、10月会合の議事要旨を公表した。
日本が過去30年間、0.5%を上回る政策金利を経験してこなかったため、「金利のある世界」への移行には相応の不確実性があるとこの委員は指摘した。また、同委員を含む何人かの委員が、これまでの政策金利引き上げの経済・物価への影響も見極める必要があると述べていた。
同会合で日銀は全員一致で政策金利を0.25%で据え置いた。1人の委員が国内外における不確実性の高まりを理由に「金融政策をより慎重に運営していく必要がある」と話した。
一方で、追加利上げにより前向きな姿勢をにじませた委員もいた。この委員は経済・物価が想定通り推移する場合、早ければ2025年度後半に1.0%の水準まで段階的に利上げしていくパスを前提とすれば、経済・物価の進捗を見守る時間が「今回はある」と話した。
1人の委員は先行きの金融政策運営について、基調的な物価上昇率が見通しに沿って上昇していけば「実質金利が自然利子率を下回る状況を維持しつつ、緩やかに政策金利
を引き上げていくことが望ましい」との見方を示した。
<為替動向に引き続き警戒感>
多くの委員は、引き続き米国経済をはじめとする海外経済や市場の動向を注視していく必要があると指摘した。ただ、円安修正で物価上振れリスクが後退したことを受けて、政策判断に「時間的な余裕がある」と説明してきたことについては「米国経済の不透明感が低下する中で、時間的余裕という言葉で情報発信をしていく局面ではなくなりつつある」との指摘が出された。
過去5回の日本の利上げ局面では米国の利下げ後に利下げに転じたが、今回の局面は日米の金融機関や企業、家計にバランスシート調整圧力が生じていないなど「状況が異なる」と1人の委員が指摘した。この委員は、一時的に米国経済の動向を確認した後、利上げを展望していくべきだが「日米の金融政策の方向性が逆となるもとで為替を中心に市場が大きく変動することも考えられる中、仮に日本銀行の利上げを契機にショックが生じた場合、長期的にみた金融緩和の調整に支障が生じる可能性がある点にも留意する必要がある」と述べた。
複数の委員が、今後の米国の新政権の政策運営が米国の物価動向や金融市場に及ぼす影響次第では「金融資本市場の変動を通じて、わが国の物価の上振れリスクとなる可能性もある」と警戒感を示した。
一方で、ある委員は米欧のインフレ率低下やグローバル市場での価格競争の影響で「物価の上振れ懸念は後退している」と話し、「賃金と物価の好循環の持続性に対する自信が強まるまで、当面、政策金利は現状を維持すべき」と主張した。
<賃上げ持続に期待感>
決定会合では賃上げの持続に期待感が示された。何人かの委員が来年の春闘における賃上げ率は「高い水準が続くと見込まれる」と指摘。複数の委員が「人手不足のもと、中小企業も含めて賃上げの必要性が当然視される状況になっている」と話した。植田和男総裁は12月の決定会合後の記者会見で、先行きの政策判断に当たって今後の賃金動向と米国の経済政策の動向を注目点に挙げている。
10月会合では、過去四半世紀にわたる金融政策運営を振り返える「多角的レビュー」についても討議が行われ、12月の決定会合で取りまとめの議論を行った上で「基本的見解」を議決し、全文を対外公表することが決まった。
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