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アングル:雇用重視に転じたFRB、利下げ経路を左右する労働市場の強さ

ロイター / 2024年8月27日 18時17分

 米連邦準備理事会(FRB、写真)がインフレとの対決に政策のかじを切った2022年当時は、急速な物価高に対応するため急いで利上げをせざるを得なかった。2022年6月、ワシントンで撮影(2024年 ロイター/Sarah Silbiger)

Howard Schneider

[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 26日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)がインフレとの対決に政策のかじを切った2022年当時は、急速な物価高に対応するため急いで利上げをせざるを得なかった。

それから2年が経過し、金融政策の重点は再び変わっている。パウエル議長が23日の講演で示したように今度は雇用を守る局面が到来し、逆に必要になったのは利下げ方向への政策対応だ。ただし今のところ、それほど矢継ぎ早に動く公算は小さい。

FRBが労働市場にリスクが生じてきたと認めたのは今年1月。そこから続けてきた政策転換の「地ならし」は、このパウエル氏の講演で完結した。

一方誰の目にも明らかな問題は、足元の労働市場の勢い鈍化と失業率上昇が、着実な経済成長と折り合いがつく段階で落ち着きを見せるのか、それともさらなる雇用情勢悪化に至る過程なのかだ。

その答えは今後発表される雇用関連指標で明らかになり、パウエル氏が挙げた「望ましくない労働市場環境の一層の弱体化」を防ぐ上で、FRBが利下げをどの程度の幅とペースで進めていくかを決めるだろう。

パウエル氏は講演で「労働市場がこれ以上冷え込むのを望まないし歓迎しない」と強調。労働需給の引き締まりが新型コロナウイルスのパンデミック前ほどでなくなったと認め、失業率を現在の4.3%から上昇させない考えを示したように見える。

失業率はパウエル氏が議長に就任した18年が4.1%で、19年にはインフレ懸念を高めずに3.5%まで低下している。

政策金利に目を向けると、現行の5.25─5.50%は景気に対して引き締め的で、連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが想定する長期的な中立金利の中央値(2.8%)よりもずっと高い。

物価上昇率がFRBの目標とする2%に収まっていくことを前提とすれば、政策金利を中立水準までどのぐらいのスピードで低下させるか、あるいは完全雇用復活のため中立以下まで金利を下げるべきかどうかは、まさに今後の労働市場の推移次第だ。

ADPリサーチ・インスティテュートのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は「労働市場の熱気が落ちているのは間違いない。だが安定する地点までの冷え込みか、それともより大幅な冷え込みへの入り口に過ぎないのか」と問いかけた。

リチャードソン氏や多くのFRB幹部は、米経済がなお強さを保っていると主張し、パンデミック時の極端な動きからの正常化が実現しそうだとみている。それでも労働市場を巡る緊迫感が強まっている面も否定できない。

<リスク評価の軌道修正>

FRBが9月17─18日のFOMCで利下げに動くお膳立てが整ったわけだが、ここに至るまでFRBはリスクに関する言い回しを少しずつ変えてきた。

昨年末までのFRBはインフレのリスクに対して「高度の注意を払う」と表明。しかし今年1月になると「雇用と物価の目標達成に対するリスクは適切な均衡の方向に動きつつある」と述べ、6月はリスクが「適切な均衡に向かっている」、7月はリスクが「適切な均衡に向かい続けている」と軌道修正し、労働市場とインフレの双方に「注意を払っている」と付け加えた。

この総仕上げがパウエル氏の講演で「われわれの2つの使命に対するリスクの均衡は変化した」ので、政策担当者は「力強い労働市場を支えるためにできることを何でもする」とされた。

そして9月FOMCで提示される最新の政策金利見通しを通じて、FRBが想定する利下げ経路が判明するだろう。6月の前回見通しでは、インフレの根強さを理由として年内利下げ幅の想定は25ベーシスポイント(bp)にとどまっていた。

パンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェファードソン氏は、6月の見通しと比べるとパウエル氏が講演で打ち出した姿勢は「驚き」で、FRBが利下げを先送りし過ぎた証拠と受け止めている。

これに対してアポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロク氏は、レイオフ件数が依然少ない点を踏まえると、あまりに急速な利下げはインフレリスクを再燃させかねないと警戒した。

<異なる構図>

パウエル氏は講演で、力強い労働市場を維持しながら物価上昇率が2%に戻ると考える十分な根拠が存在すると発言した。

ボストン地区連銀のコリンズ総裁もインタビューで、労働市場全体に底堅さを感じており、失業率はすぐに安定する可能性があるとの見方を示した。

ただ労働市場が見かけよりも脆弱ではないかとの懸念はくすぶっている。

労働経済学者でもあるFRBのクーグラー理事は、求人数は雇用動向調査(JOLTS)の報告より実際は少なく、例えば就業意欲喪失者を含めた失業者数はより多くなるので、失業者1人に対する求人件数は公式統計の1.2よりも低い1.1と推計され、今後は1,0かそれより低下するだろうと分析する。

クーグラー氏によると、代替的な失業関連指標を考慮に入れれば、労働市場の構図は全く違ってくるかもしれないという。

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