ANAHD、旅客需要が想定下振れ、貨物好調で通期予想は維持
ロイター / 2021年1月29日 20時41分
1月29日 ANAホールディングス(ANAHD)の福澤⼀郎取締役常務執行役員は、国内線・国際線とも2021年3月期通期の旅客需要見通しが想定を下振れていることを明らかにした。写真は2020年10月、東京の羽田空港で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 29日 ロイター] - ANAホールディングス(ANAHD)<9202.T>の福澤⼀郎取締役常務執行役員は29日、国内線・国際線とも2021年3月期通期の旅客需要見通しが想定を下振れていることを明らかにした。一方、貨物の需要が堅調として、同社はこの日の決算発表で通期業績見通しを維持した。
財務を統括する福澤取締役は20年4─12月期決算会見で、国際線は移動制限が解除されておらず、新型コロナウイルス前に比べ5割とみていた回復の前提が「大きく崩れることを覚悟しないといけない」と述べた。7割の回復を想定している国内線も、12月までの時点で55%と下回っていることを明らかにした。
国内線の旅客需要については、4─6月はコロナ前の70%以上、9月までは79%と順調に回復してきたが、コロナの再流行により10─12月で悪化し、12月までの累計で6割未満にとどまった。
ANAHDがこの日発表した4─12月期の連結純損益は、3095億円の赤字(前年同期は864億円の黒字)だった。感染拡大による旅客需要の激減で収入が大きく落ち込み、事業構造改革費用として特別損失760億円を計上したことなどが響いた。赤字額はリーマン・ショック後の09年4─12月期(351億円の赤字)を大きく上回り、過去最大となった。
4─12月期の売上高は前年同期比66.7%減の5276億円、営業損益は3624億円の赤字(前年同期は1196億円の黒字)だった。
<通期予想は維持、国際貨物が想定以上>
通期の業績予想は従来の見通しを維持し、純損益は5100億円の赤字(前期は276億円の黒字)を見込む。IBESのコンセンサス予想では、アナリスト9人の予想平均値が4490億円の赤字となっている。
通期予想を維持した背景について、福澤取締役は、コスト削減が順調に進んでいることや、国際貨物の需要が想定以上に堅調なことを挙げた。
国際貨物収入は、10─12月期が508億円と四半期ベースで過去最高となった。自動車・5G・半導体関連などの荷動きがよく、福澤取締役は、需要増加に「持続性がある」と指摘。この先1─3月期だけでなく21年度以降もしばらくは好調が続くとの見方を示した。
新型コロナのワクチンが開発から接種の段階に移り、直近ではワクチン輸送も国際貨物にプラス要因になるとみている。旅客需要の下振れなど業績のマイナス要因が多少増えても、ある程度は貨物で吸収できるとみていることも明らかにした。
通期の業績予想には、緊急事態宣言が期限の2月7日以降に延長される可能性を織り込んでおらず、福澤取締役は「(延期されれば、その影響を)見極めなければならない」とした。ただ、コスト削減効果も見込めることから、業績が大きく悪化することを現時点では想定しておらず、「極端に保守的でも楽観的でもない」と語った。
営業キャッシュフローは10─12月期は「マイナス100億円と、もう一息のところでプラスに転じるところまできた」と述べた。
機材以外の追加資産売却も「今のところ想定していない」という。銀行団にもコスト削減などの自助努力を理解してもらっており、経営の自由度がなくなることはない、との認識を示した。
*内容を追加しました。
(白木真紀 編集:久保信博)
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