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アングル:中国、人型ロボットでも米テスラ追う EV生産ラインで活用

ロイター / 2024年8月30日 18時37分

 電気自動車(EV)市場で優位に立っている中国は現在、人型ロボット(ヒューマノイド)「オプティマス」を開発した米EV大手テスラの背中を追いかけている。EV生産ラインで電池内蔵型ヒューマノイドが労働者に取って代わるとみられるためだ。写真は8月21日に北京で始まった「2024世界ロボット大会」で撮影(2024年 ロイター/Florence Lo)

Qiaoyi Li Kevin Krolicki

[北京 23日 ロイター] - 電気自動車(EV)市場で優位に立っている中国は現在、人型ロボット(ヒューマノイド)「オプティマス」を開発した米EV大手テスラの背中を追いかけている。EV生産ラインで電池内蔵型ヒューマノイドが労働者に取って代わるとみられるためだ。

21日に北京で始まった「2024世界ロボット大会」で20社を超える中国企業が工場や倉庫用のヒューマノイドを披露した。ヒューマノイド製造に不可欠な中国製精密部品を展示した企業の数はさらに多かった。

中国では新興の産業に参入する際、決まった方法が採られる。10年超前にEV産業を加速させた際の初期パターンで、けん引役は政府の支援と幅広い新規参入企業による激しい価格競争、奥行きのあるサプライチェーン(供給網)の3つだ。

ロボット工学の取り組みは習近平国家主席が掲げる「新しい質の生産力」の開発政策に支えられている。北京市は1月、ロボット工学のため14億ドルの国営基金を立ち上げ、上海市は7月に14億ドルのヒューマノイド産業基金を設立する計画を発表した。世界ロボット大会で展示されたロボットの部品は、EV産業の成長と軌を一にした中国国内のサプライヤーの一部から調達された。

中国に拠点を置くリードレオ研究所のアナリスト、アージェン・ラオ氏は「中国のヒューマノイド産業のサプライチェーン統合と大量生産能力の面で明らかに優位」と述べる。

ヒューマノイドの世界市場規模について米ゴールドマン・サックスは1月、2035年までに年間380億ドルに達し、出荷数は消費者向けと産業向けに計約140万機に及ぶと予測した。製造に必要な材料費は1機当たりで2023年に、研究開発費を除いて約15万ドルに下がっていたと見積もった。

「オプティマス」にヒントを得て設立した上海ケプラー・エクスプロレーション・ロボティクスの共同操業者の1人でフー・デボ最高経営責任者(CEO)は「コスト削減の余地は大きい」と述べた。同社は現在、工場で試験運用する作業ロボットの5機種目を開発中で、販売価格は3万ドルを下回ることを想定している。

<ナマズ効果>

テスラが19年に上海工場を設立した際、中国当局は中国の産業に「ナマズ効果」をもたらすと予想していた。つまり、ある河川や湖沼に従来は異質だった存在(ナマズ)を放すと他の魚の生命力を刺激するように、中国の市場にテスラをライバルとして参入させることで、国内メーカーの活力が増すことを狙ったわけだ。フー氏はテスラのオプティマスにも同じ効果があったと話す。

テスラは来年、オプティマスが試作機段階を終えて少量生産に着手する方針を繰り返し表明している。オプティマスに搭載されている人工知能(AI)はテスラEVの「完全自動運転」ソフトウェアがベースで、中国の競合メーカーやアナリストは、テスラにはAI技術で一日の長があると認めるものの、中国には生産価格を引き下げる能力があると強調する。

<組立ラインのロボット>

香港証券取引所上場のロボット工学企業、优必选科技(UBTECHロボティクス)も自動車組立工場でロボット運用のテストを行っている。同社は既に吉利汽車(Geely)と協力しており、23日にはアウディの中国工場でテストを実施する契約を締結したことを発表した。

UBTECHのプロジェクトマネージャー、ソティリオス・スタシノプロス氏は「来年までに大量生産を目指す」と話す。各地の工場で最大計1000台のロボットが稼働し、大規模導入に向けた最初の節目となるという。

UBTECHはロボットに米エヌビディアの半導体を使用しているが、部品の90%超は中国製だ。

中国では現在、溶接などができる巨大アームを持つ生産ロボットは主に日本のファナックやスイスのABBのほか、中国の家電メーカー美的集団が傘下に収めたドイツのクーカなど中国国外の企業の製品が中心となっている。

ただ、国際ロボット連盟(IFR)によると、工場に設置された生産ロボットの数は中国が世界で最多で、北米の3倍を超える。工業情報省の辛国斌副大臣は世界ロボット大会の開会式で、同省は習主席の指導を実践しており、中国は既に「世界のロボット産業における主要な勢力」になったと誇示した。

中国は昨年11月、25年までのヒューマノイドの大量生産開始を掲げた。ただ、EV生産ラインを変革するのに必要なヒューマノイドの数と比べてかなり小規模で生産が開始される見通しだ。リードレオ研究所のラオ氏は「ヒューマノイドの大量生産が商業ベースに乗るまでには少なくとも20年から30年かかるだろう」と話した。

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