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アングル:高級ブランドが低価格製品拡充、ミドルクラス顧客つなぎ止めへ

ロイター / 2024年12月30日 13時55分

3000ドル(約47万1200円)を超えるハンドバッグや4000ドル以上のカシミアジャケットといった定番商品への需要が全般的に低迷する中、デザイナーズブランドや高級ブランドの大手販売企業は品揃えの拡充を進めている。写真は、老舗デパートのハロッズにて、お菓子の家をテーマにしたポップアップストアに展示されたディオールの商品。2022年11月、ロンドンで撮影(2024年 ロイター/Henry Nicholls)

Mimosa Spencer

[パリ 20日 ロイター] - 3000ドル(約47万1200円)を超えるハンドバッグや4000ドル以上のカシミアジャケットといった定番商品への需要が全般的に低迷する中、デザイナーズブランドや高級ブランドの大手販売企業は品揃えの拡充を進めている。特に力を入れているのは、スカーフやベルト、財布、家庭用品など500ドル以下の製品だ。

各社が手頃な価格帯の製品に力を入れているのは、上昇志向が強い一方で価格に敏感なミドルクラスの顧客にアピールするためだ。ただしこの戦略は、利益率に悪影響を及ぼしかねない。

2年以上も急激な価格の引き上げが続く中で、高級ブランド各社はミドルクラス顧客の離反というリスクに直面している。バーンスタインの株式市場アナリストらによれば、「シャネル」や「プラダ」、LVMH傘下の「ディオール」では、フランスでのハンドバッグの販売価格を2020年に比べて23年は50%以上も引き上げている。

シティが提供するクレジットカード利用データによれば、米国におけるトップ高級ブランド製品の購入額は、11月に前年比6%減を記録した。LVMHやケリングなど、デザイナーズブランドをグローバルに展開する企業にとっては、年末商戦前半を前に不吉な前兆となった。

<500ドル以下で有名ブランドロゴを>

ケリング傘下の「グッチ」が今シーズン販売する装飾・ライフスタイル分野のギフト商品には、ペット用リード(440ドル)、ブランドロゴが外装に入った箱入りの付箋(200ドル)などが含まれている。

LVMH傘下のルイ・ヴィトンは、オンラインショップのギフトカテゴリーで、カードホルダー(360ドル)やキャンバス素材・メタル素材のブレスレット「モノグラム・ダブルスピン」(395ドル)を販売している。

「バーバリー」では、店舗レイアウトを変更し「スカーフバー」を前面に押し出す予定だ。450─1050ドルの価格帯のカシミア製スカーフの販売増を狙う。

ブランドに特化したデータ分析を提供するラグジャリンサイトのジョナサン・シボニ最高経営責任者(CEO)によれば、ケリングやカルチエ傘下の「リシュモン」が香水・化粧品部門の内製化を模索する一方、LVMHはカフェやエンターテイメント事業の開発を進めているという。

<米大統領選後、需要振るわず>

シティのアナリストらは、11月5日の米大統領選以降、「特に上昇志向の強い顧客層において、高級ブランドへの需要が振るわない」と指摘し、労働市場の減速に続いて、11月には家計調査でも失業率が上昇したことに注目する。

RBCのアナリストらは、グローバルな高級ブランド購入者は6000万人減の3億5500万人に減少したと述べている。その主な理由は、インフレによる圧迫や、モノ消費よりコト消費への関心の高まりでだ。

コンサルタント会社ベインは、今年の年末商戦では、衣料品やアクセサリー、美容製品などの高級ブランド品のグローバルな売上高は為替調整後で横ばいになると予想する。ベインは、価格に敏感ないわゆる「上昇志向の顧客」減少の影響で顧客基盤が縮小し、売上高2%減と過去有数の不調に陥るとの予想も出している。

<中国の需要も減少>

高級ブランド品産業にとって重要な市場であり、近年成長を牽引してきた中国では、不動産危機と若年層の失業率の高止まりにより高級品への関心が薄れている。JPモルガンのアナリストらは、中国では昨今のマクロ経済の課題が引き続き重しになり、今後も「浮き沈みの激しい」展開になると予想している。

こうしたなかで、高級ブランド品の購入者の目も厳しくなっている。ピクテット・アセット・マネジメントで高級ブランド部門を率いるキャロライン・ライル氏は、顧客は「品質の劣る、あるいはスタイルが古い」と感じられる製品には手を出さなくなっているという。

ブランドが顧客の関心を引くには、マーケティングキャンペーンや製品カテゴリーの拡大、そしてこれまでより手を出しやすい価格帯へのシフトが頼りになる。「高品質に変わりはないが、価格としては単純に安いものが売れる」というのがライル氏の説明だ。

各ブランドのウェブサイトや企業への取材で情報を集めるシボニ氏は、1年前に比べ、本格的なハンドバッグと比べて、小型の財布などの皮革製品が投入された比率が平均8%増えていると指摘した。

ラクジュアリンサイトのデータによれば、LVMH傘下のディオールでは、11月に小型皮革製品の平均価格が前年比で21%低下した。一方、同じLVMHグループのルイ・ヴィトンは、500ユーロ以下の小型皮革製品シリーズの製品の比率を、前年同期に比べ9%拡大した。

<利益率低下のリスクも>

ミドルクラスだけでなく富裕層の購入者も高額製品の購入をちゅうちょしている今、低価格製品に注力することはブランドの存在感を維持するために必要だ。しかし、すでに販売の減速によるプレッシャーに直面しているLVMHや「バレンシアガ」を抱えるケリングなどの企業にとっては、利益率の低下につながる可能性が高い。

高級ブランド産業で抜きん出た業績を示すプラダのアンドレア・グエッラCEOは、10月末にアナリストらに対し、「いま試みているのは、価格帯の拡大だ」と語った。

一方、英国の高級ブランドであるバーバリーのジョシュア・シュルマン新CEOは、業績回復に向けた計画でエントリーレベルの価格帯の品揃えを拡大することを強調し、「ブランド全体として(価格設定が)あまりにも高く」なってしまったと指摘する。

だが業界最大手であるLVMHは、脱高級ブランド志向が行きすぎるリスクについて、ブランドとしての唯一無二のオーラを損ないかねないと警告する。同グループのジャンジャック・ギオニー最高財務責任者(CFO)は、「あまりに低い価格帯の製品」を導入することは避けると話す。

ギオニーCFOは10月、アナリストらに「低価格帯商品の導入は悪手になる」と述べ、「ひどく近視眼的に」製品ラインを全面的に変えないことが大切だと強調した。

(翻訳:エァクレーレン)

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