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殴打に電気ショック…水を求めると小便をかけられた イスラエル軍拷問の実態、ガザ市民が証言

47NEWS / 2024年4月21日 10時0分

腕に残る拷問の傷痕を見せるアムラン・アブワルダさん=2月、ガザ南部ラファ(共同)

 イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザで、軍はハマス戦闘員のほか、多数の民間人も拘束し、イスラエル領内の軍拠点に連行している。「身体に電気棒を当てられた」「小便をかけられた」…。軍は拘束を巡る情報を公表せず、詳細については不明な点が多いが、解放された市民への取材からは軍兵士による「拷問」の実態が浮かぶ。国連からもイスラエル政府に対し「拷問の疑い」を調査するよう求める声が上がる。イスラエル軍は「不当な行為はない」との主張に終始するが、イスラエル軍拠点では一体、何が起きているのか。共同通信ガザ通信員、ハッサン・エスドゥーディーが報告する。(敬称略。翻訳、構成は共同通信エルサレム支局長 平野雄吾)

 ▽裸にされて連行

 ガザ南部ラファ。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)運営の学校でアムラン・アブワルダ(54)は数センチにわたる左腕や背中の傷痕を見せ、振り返った。
 「ハマス戦闘員がどこに隠れているのか、何度も尋問された。『知らない』と答えると、身体に電気棒を当てられ、素手や銃床で殴られ、蹴られた」


 アブワルダは昨年11月19日、イスラエル軍兵士に拘束された。ガザ北部から南部へ子ども6人を含む家族と徒歩で避難中、主要道路に設けられた軍の検問所にさしかかった時だった。
 「1人だけ呼ばれ、家族の前で裸にされ目隠しされた。プラスチックの手錠をかけられ、車でどこかへ連れて行かれた。動けば動くほど、プラスチックの手錠が腕に食い込むようになった」
 ハマス関係者の近くに住んでいたことが原因とみられるが、拘束理由は明らかにされていない。連行先はイスラエル領内とみられ、軍拠点に着くと、下着を脱ぎ、おむつをはくよう命じられた。トイレに行かせないためだとみられている。アブワルダを含め、百数十人のパレスチナ人が同じ拠点にいたという。
 食事はわずかなパンに、いちごジャムなどだった。裸にされる時間が長く、寒さのあまり毛布を求めると、ぬれた毛布を渡された。「イスラエル兵は十分な水を与えず、私たちは常に喉が渇いていた。多くのパレスチナ人が水を求めては殴られた。『これでも飲め』と笑いながら兵士に小便をかけられたパレスチナ人もいる」


背中に残る拷問の傷痕を見せるアムラン・アブワルダさん=2月、ガザ南部ラファ(ハッサン・エスドゥーディー撮影、共同)

 尋問室にいたのは兵士4人。質問に対し、納得のいく答えが得られないと、兵士は次々とアブワルダを殴り、電気棒を当てた。腕や背中のほか、アブワルダの脚には直径1センチほどの穴のような傷痕も複数ある。
 アブワルダは悔しそうに続けた。
 「殴られ、電気ショックを受けた後、遺体収容袋に押し込まれ、その中で眠るよう強要されたこともあるし、おむつも5日間、取り換えが認められなかったこともある」

 ▽「性的暴行の脅し」報告

 スイス・ジュネーブ拠点の非政府組織(NGO)「欧州地中海人権モニター」は昨年10月の戦闘開始後、イスラエル軍に拘束された経験のあるパレスチナ人について、証言を基にした報告書を発表している。2月公表の報告書では、殴打や犬による攻撃のほか、強制的に裸にさせたり、食事を与えなかったりしていると非難、セクシュアルハラスメントや「性的拷問への脅し」もあったとしている。


パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスで避難する人たち=3月4日(ゲッティ=共同)

 拘束経験のある複数のパレスチナ人女性が「イスラエル兵に性器を触られたほか、(イスラム教徒の女性が髪を覆うスカーフ)ヒジャブを取るように強要された」と証言したという。このNGOは「兵士は拘束したパレスチナ人女性に対し、『強姦するぞ』と脅しながら情報を得ようとしている」と非難する。
 アブワルダが解放されたのは今年1月11日。50日間以上の拘束だった。ガザ南部のケレムシャローム検問所で軍用車両から降ろされ、ガザに帰還した。そのまま赤十字関係者により病院に搬送された。


パレスチナ自治区ガザで、戦車に乗ったイスラエル軍兵士=1月(AP=共同)

 ▽「ガザに希望はない」

 イスラエル軍は共同通信の取材に「ガザではテロ活動に関与したと疑われる者は拘束するが、関係ないと判断すれば解放する。拘束者への不当な行動は軍の価値観と一致しない」と回答した。
 だが、国連関係者からもイスラエル軍によるパレスチナ人への拷問を疑う声が相次ぐ。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)パレスチナ事務所のサンガイ代表は、1月にガザ南部を訪問した際に約10人から拷問を受けたとの証言を聞いたとし「国際法はあらゆる形態の拷問を禁止している。イスラエル政府は調査すべきだ」と訴える。


記者会見する国連パレスチナ難民救済事業機関のラザリニ事務局長=3月4日、ニューヨークの国連本部(共同)

 UNRWAのラザリニ事務局長は3月上旬、ガザで複数のUNRWA職員がイスラエル軍に拘束されたと明らかにした上で、拷問を受けたとの報告があるとイスラエルを非難した。「拷問の下で、証言を強要されている」ともフランスメディアで語り「多くの拘束を経験したパレスチナ人がトラウマを抱えている」と付け加えた。
 アブワルダは拷問の経験を振り返り、こう語る。
 「ガザに希望はない。少なくとも子どもたちだけでもガザの外に出してあげたい」
 涙がアブワルダの頬を伝った。

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