1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

日銀がこれほどまで円安を「無視」する3つの理由 「為替は管轄外」では、結局うまくいかない?

東洋経済オンライン / 2024年5月4日 9時30分

「管轄外」と言ってしまえばそれまでなのかもしれないが、日銀と為替の関係を考えてみよう(写真:ブルームバーグ)

なぜ日本銀行は為替を「無視」するのだろうか。

以下の3つの理由がある。
1つは、古い経済学を信じているから。
もう1つは、古い世界に生きているから。
3つ目は、まともすぎる専門家集団だから。

「期待は正しい」という「古い経済学」が残存?

第1に、1970年代から1980年代に一世を風靡した「合理的期待形成理論」を日銀もほとんどの経済学者もいまだに信じているからだ。

不思議な理論だが、要は、将来予想が自己実現するのだが、ポイントは、すべての人が正しく予想するということは、すべての人の予想が同じであるということで、そして、すべての人がその予想に基づいて実際に行動するわけで、そうすると予想は自己実現する、ということである。

だから、人々の期待さえ動かせば、世界は思いどおりになるという(傲慢な)政策主体の見込みで(実はただの願望だが)、「期待に働きかける」という、壮大な実験、無駄である実験、無駄であるにもかかわらず大きな副作用を残す異次元緩和に賛成し、日銀はその実行を担ってきたのだ。

だが、期待は実現しない。なぜなら人々は、日々の生活においては、期待ではなく、しがらみ(現在の制約条件)によって行動するからだ。将来予想よりも、今、財布にある現金(あるいはスマートフォンにチャージされているマネー残高)、今月の給料、次のクレジットカードの支払い見込み額で決まってくる。

そのため、例えば「政府日銀がインフレにしようとしているらしい、もしかしたらそうなるかも」と思っても、実体経済における実物への消費、投資行動は少しずつ、部分的にしか修正されない。

結果的に期待は実現しない。理論的には、上述の合理的期待形成ではなく、適合的期待形成となるということだ。

実物経済と金融資産市場との間に起きる「深刻な問題」

一方、資産市場においては、将来の期待の変化の修正が行動に大きく影響する。なぜなら、それは資産価値のほとんどが将来のものであり、かつ資産の多くが金融資産であるからだ。つまり、金融資産市場においては、期待は実現する。

例えば、株が上がると思えば、買う。買うから上がる。上がるから買う。ほかの投資家もそう行動するだろうと予想するから、みんなが買って大幅に上がる前に買う。われ先にと買う。だからあっという間に上がる。

むしろ、金融資産市場においては、期待が実現しすぎて、オーバーシュートする(行きすぎる)おそれがある。資産市場においては価格がほぼすべてであり、その価格の変化が瞬時に起こるため、期待が実現すると投資家たちは確証を得ることができる。行動経済学でいうところの確証バイアスが現実に存在することを鑑みれば、この行動はさらに加速するからだ。つまり、期待が実現し、期待が期待を呼ぶため、すぐにバブルになってしまうのだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください