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「事業者だけで公共交通維持は難しい」、赤字山積のJR四国 待ったなしのローカル線議論、新旧社長を直撃

47NEWS / 2024年8月14日 10時30分

JR予讃線を走るディーゼル車両=愛媛県大洲市

 6月下旬、JR四国社長に四之宮和幸氏が就任した。社内外から社長候補の本命とされた人物は最初の記者会見でいきなり「(赤字ローカル線の在り方を巡る議論は)協議体の立ち上げにはこだわらない」と述べた。前社長の西牧世博氏(現会長)が自治体と論点を整理する「入り口の議論」を2024年度中に始めたい意向を示してきただけに、方針転換とも受け取れる発言は報道陣を困惑させた。JR四国はJR旅客6社で最も規模が小さく、赤字線区が大部分を占める。2020年には国から経営改善の指導を受けた。四之宮氏の真意を確かめるべく7月にインタビューし、西牧氏からも話を聴いた。(共同通信=広川隆秀)

 ▽会社発足時から逆風

 ―旧日本国有鉄道(国鉄)の分割民営化2年後の1989年にJR四国に入社しました。会社の経営状況をどう見ていますか。


 以下、四之宮氏「JR四国は発足した時から赤字が前提で、国からの経営安定基金の運用益で成立しています」
 「四国は全国に先駆けて、1985年から人口減少が進んでいました。鉄道の利用は通勤や通学といった日々の生活での移動が主で、定住人口に依存します。緩やかに逆風が吹く中、高速道路もそれ以外の国道も整備が進み、相対的に鉄道の競争力が低下していた時代です」
 「ただ、それでも私が入社した頃は日本中の景気は良かったのです。1988年には(岡山県と香川県を結ぶ)瀬戸大橋線が開業。その効果で、本来抱える人口減の問題認識が薄れ、会社としては目先の収入増に力を入れていました」
 ―2020年からの新型コロナウイルス流行の影響で会社の経営は危機的な状況になりました。
 「当時社長だった西牧氏は『会社発足以来の危機的状況』といった表現をしたと思います。大変苦しい、とんでもない時代でした。しかし、2024年3月期連結決算は(最終的な損益を示す)純損益が35億円の黒字になりました。今はある意味でプラスマイナスゼロのところで、腰を据えて長期目線でやっていける状況まで来ました。第2の創業期としてリスタート(再出発)する時期だと思っています」


インタビューに応じるJR四国の四之宮和幸社長=2024年7月、高松市

 ▽議論は2025年以降か

 ―赤字ローカル線を巡る議論について、西牧氏はまず自治体と論点を整理する話し合いをしたい考えを示していました。進捗はありますか。
 「協議体づくりは進んでいないのが実態です。JR四国の場合、(2020年に)国から受けた経営改善指導で25年までに全線区で交通体系の在り方について検討することが宿題とされています。利用状況の少ない路線の収支改善をすれば解決するわけではないのが難しい。どの線区から、どの自治体を含めて協議するのか、まだ方策を打ち出せていません」
 ―まずは社内で検討をするのでしょうか。
 「全線区でどこを優先的に進めていくかについては、社内で議論をしていかないといけません。ボールはJR四国にあるかなと思っています」
 ―一方、西牧氏は社長退任時の記者会見で、自治体との議論が進まなかったことを「心残りだ」とも語っています。
 「西牧氏の社長在任時はコロナ禍の最中で経営が危機的になり、そういった問題に取り組まざるを得ない切羽詰まった状況でした。いずれは地域と議論していかなければなりませんが、会社全体として黒字になり、今はある意味で切羽詰まっていません」
 ―いつまでに議論に入りたいといった目安はありますか。
 「今は、コロナで失われた現状の路線の旅客数をいかに戻すかというところです。たぶん2025年以降の話になるだろうと思っています」


岡山県と香川県(手前)を結ぶ瀬戸大橋=2018年3月

 
 ▽まずは利便性向上を

 ―新社長として何に注力していきますか。
 「利便性向上につながるような取り組みに力を入れていきたいです。徳島バスとの協業を既に進めていますし、最近では(タクシー配車システムを手がける)電脳交通ともコラボしています」
 「(列車を定間隔で運行する)パターンダイヤの導入もどんどん進めており、鉄道以外の接続も考えて整えているところです」
 「非鉄道事業についてはマンションや不動産業のほか、投資ファンドの活用や新たなM&Aを成功させたいです。また、高松駅の新駅ビル『高松オルネ』の開業で、駅の乗降者数が増えたというデータがあります。駅を中心としたまちづくりにも力を入れていきたいです」


インタビューに答えるJR四国の西牧世博会長=2024年7月、高松市

 ▽運賃値上げ前倒し

 続いて話を聴いたのが、コロナ流行中の2020年6月に社長に就任した西牧氏。運賃改定や非鉄道事業の収益拡大に尽力し、24年3月期決算で純損益を4年ぶりに黒字転換させた。在任中を「充実した4年間だった」と振り返る。
 ―2023年5月、27年ぶりの値上げを実施しました。なぜこの時期だったのでしょうか。
 以下、西牧氏「燃料費や電気料金などが高騰する可能性を見据え、列車の運行に必要となる経費のシミュレーションをしました。当初は2025年度の見込みでした。ただ、新型コロナの影響で(収入が)ガタッと落ちてしまった。それで22年に国に値上げの申請をしましたが、その後に利用者の意見を聞く公聴会は出席者がいなかったため中止になりました。仕方がないのかなと思われたのだと考えています」


JR四国の業績を示すグラフ

 ▽事業者の限界

 ―新社長に四之宮氏を指名しました。
 「2025年度には新しい経営計画を立てなければいけません。それを誰がするのかと考えた場合、新しい社長が策定した方が良いと考えました。施策の効果もあり、業績は回復傾向にあります。明るい兆しが見えてきて、今が社長交代の時期として適切だと考えました」
 ―西牧さんは自治体との議論が進まなかったことは「心残りだ」と話していました。
 「存廃の議論ではなく、まずはどんな場所で、どのようなメンバーで話し合うかの協議をしたいと思っていました。ただ、なかなか理解してもらいづらいところがあった」
 「鉄道だけではなく、路線バスは減便、タクシーも減っています。事業者だけが頑張って維持していくのは本当に難しい時代になっています。公共交通を今後、どう維持していくのは社会で考えていかないといけません」


今年3月に開業したJR高松駅の新駅ビル「高松オルネ」=2024年3月、高松市

 四之宮 和幸氏(しのみや・かずゆき)京都大大学院修了。1989年JR四国入社。愛媛県西条市出身。趣味は大学時代に始めたテニス。

 西牧 世博氏(にしまき・つぐひろ)大阪大大学院修了。1981年旧国鉄(現JR)入社。岡山県浅口市出身。新幹線を造りたくて入社を決めた。

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