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被爆者との出会いが双子のアメリカ人姉妹を変えた 「胸が張り裂けそう」…核兵器廃絶を目指す16歳を後押しする証言とは

47NEWS / 2024年8月15日 10時0分

7月、米パサデナで取材に応じるマノン・イワタさん(左)と妹のカノンさん(共同)

 被爆者の思いに共感し、核兵器廃絶を目指して活動する16歳の双子姉妹がアメリカにいる。現地に住む被爆者から体験を聞き取って英文ウェブサイト「軍縮と不拡散を目指す10代」や交流サイト(SNS)で発信し、「未来のことを決めるのは若者だ」と同世代が核問題を知る機会をつくることにも力を入れるが、2年前に被爆者と出会うまでは原爆のきのこ雲の下で起きた惨状を知らなかった。「胸が張り裂けそうだった」と振り返り、活動の原動力にもなっている体験者の言葉とは。(共同通信ロサンゼルス支局 井上浩志)

※記者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。

 ▽団体を設立


米ロサンゼルス近郊パサデナの女子校で開かれた「ピース・フォーラム」に登壇したカノン・イワタさん(左)と姉のマノンさん=5月(共同)


 「私たち次世代の若者が核なき世界をつくることが(被爆者の)願いだ」。


カノン・イワタさん(共同)


マノン・イワタさん(共同)

 5月、ロサンゼルス近郊パサデナの女子校「ウェストリッジ・スクール」で、同校10年生(日本の高校1年生に相当)の日系アメリカ人、カノン・イワタさんが、広島で被爆しアメリカに移住したビル・オオタさん(95)の思いを代弁した。
 この日開いたのは、カノンさんと姉のマノンさんが課外活動として企画した講座「ピース・フォーラム」。核軍縮などに貢献する市民を育成する「軍縮・不拡散教育」の専門家であるモントレー不拡散研究所の土岐雅子研究員を招き、同級生ら15人ほどが参加した。
 2人は2022年、非営利団体「軍縮と不拡散を目指す10代」を設立。「被爆証言を広めたい」とこれまで約10人の体験や思いをサイトやインスタグラムで発信してきた。核廃絶の志を共有する日本の高校生らと出会い、広島を2回訪問。知人のウクライナ人を通じ、ロシアの侵攻で核の脅威に直面するウクライナの首都キーウに住む若者とも交流し、現地に団体の支部を設立してもらった。

 ▽祝えない誕生日

 活動のきっかけは2022年、父親である日本人医師の岩田俊平さん(51)が診療に訪れるロサンゼルスの高齢者施設でボランティアをしたことだ。入所者と交流を深める中でオオタさんら原爆被害に遭った人がいることを知り、体験に耳を傾けた。その出会いは偶然だった。


広島に原爆を投下した爆撃機から撮影されたきのこ雲(米国立公文書館所蔵・共同)

 オオタさんは、アメリカが広島に原爆を投下した1945年8月6日が16歳の誕生日だったと打ち明けた。戦時下、ささやかながら祝福しようと集まってくれた友人3人と学校を出た頃が午前8時15分。オオタさんは閃光を浴び、激しく血を流して全身に激痛が走った。友人は1人が大やけどを負い死亡。もう1人も変わり果てた姿で亡くなっており、残る1人はオオタさんが生きていることを確認して「おまえ良かったね」と言い残して息を引き取ったという。
 自分だけが生き残ったことに対する罪悪感を背負った誕生日を、オオタさんはその後祝うことができない。アメリカでは、誕生日ケーキのろうそくを吹き消す前に願い事をする慣習がある。イワタさん姉妹は「今まで祝えなかった誕生日分の願いがもしかなうとしたら、何を願いますか」と尋ねた。返ってきた答えが若者による「核なき世界」の実現だった。


被爆者のビル・オオタさん(右)と写真に納まるカノン・イワタさん(中央)と姉のマノンさん=2023年、米ロサンゼルス(イワタ姉妹提供、共同)

 ▽学び、自ら判断を


原子爆弾が投下された後の広島市内=1945年8月

 2人は9月以降には学校に別の被爆者を招いて講座を開くほか、核の歴史や影響などの学習を取り入れたアメリカ史の授業も始まる。核問題を学ぶ教材作りにも着手した。
 核に関する授業をパサデナの他の高校でも導入してもらおうと7月に地元議員と面会し、核に関する教育の重要性を呼びかける文書を提出。決議文として書かれたこの文書の内容の一部を紹介する。
 ・世界にある核兵器のごく一部でも爆発すれば、人類の文明を脅かしかねない壊滅的な結果をもたらす可能性がある。
 ・ウクライナ情勢などで対峙する核大国のアメリカとロシアの間の緊張は冷戦終結以降、最も高い状態にある。
 ・国連は、若者は教育を受けて問題に関わり、権限を与えられれば、社会や政府の核兵器に対する見方について決定的な影響を及ぼすことができると指摘している。


 アメリカでは、広島と長崎への原爆投下が第2次大戦の終結を早め、多数のアメリカ人の命を救ったと考える人が多い。マノンさんは、周囲の同世代ではそもそも原爆について知る人が少ないが、だからこそ「先入観がなければ、核について学び、自ら判断することができる」と強調した。

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