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「それってSHEINに限った話なんですか?」強制労働、デザイン模倣疑惑…それでも世界を席巻する中国発の激安アパレル通販

47NEWS / 2024年8月27日 10時30分

東京・原宿にあるSHEINの店舗内=6月

 ファッションブランドの旗艦店や個性豊かな雑貨店がひしめく東京の「裏原宿」の一角。「SHEIN」の看板が掲げられた店舗に、慶応大の男子大学生3人の姿があった。Tシャツが400円、アクセサリーは500円。どの商品も圧倒的に安い。小林剛大さん(19)は「店舗は女性服だけかと思っていたが、メンズ用の商品も置いてあって良かった。じっくり見られる」と笑顔だ。

 SHEINはシーインと読む。激安アパレルで世界市場を席巻している中国発のネット通販企業だ。だが、運営会社の社名や業績などは明らかにされておらず、企業実態は謎に包まれている。成長の裏で強制労働やデザイン模倣の疑惑が付きまとうが、小林さんと一緒に訪れた佐藤智哉さん(19)は意に介さず、そういった疑惑を理由に購入をやめる人は少ないだろうとの見方を示す。「強制労働や他のデザインをまねた話はX(旧ツイッター)でよく見かけるけど、それってシーインに限った話なんですか?」(共同通信=小林笙子)


SHEINの店舗を訪れた慶応大生の小林剛大さん(中央)と佐藤智哉さん(右)=6月、東京都渋谷区

 ▽インフルエンサーが紹介し、Z世代に浸透

 6月上旬、シーインの店舗を訪れると、客足はまばらながら、若者だけでなく中高年の姿も見られた。店内には衣料品のほかに靴やスマートフォンケースといった雑貨が並ぶ。小林さんによると、米ネット通販大手のアマゾンやディスカウントストア大手のドン・キホーテなどと比べて価格の安さが際立っていることがシーインを選ぶ決め手になっているという。小林さんはサンタクロースのコスプレ衣装といったパーティーグッズの購入でも利用するといい「1回きりで使い終わるものでも気軽に購入できるので便利」と話す。

 ただ、この裏原宿の店舗は「ショールーミング型」と呼ばれる形態で決済用のレジがなく、商品をその場で購入して持ち帰ることはできない。来店客は商品の実物に触れて素材やサイズ感を確認し、購入する場合は商品のタグにあるQRコードをスマートフォンで読み込み、インターネットで注文する仕組みだ。商品は後日、自宅に配送される。


「ショールーミング型」と呼ばれるSHEINの店舗。一般的なアパレル店舗と同じくマネキンなどが置かれている=6月、東京都渋谷区

 シーインが急成長したのは、米国で1990年代半ば以降に生まれた「Z世代」と呼ばれる若者たちに浸透したのがきっかけだ。人気に火が付いたのは、SNSで多数のフォロワーを抱えるインフルエンサーの存在が大きい。インフルエンサーが自身のインスタグラムや動画投稿サイトのTikTok(ティックトック)で購入した商品や洋服の着回し方法を紹介すると、フォロワーの購入につながるという。


ファッションの街として知られる東京・原宿にあるSHEINの店舗=6月

 ▽ファーストリテイリングは販売停止を求めて提訴

 SNSでは、シーインの製造現場を問題視する声もたびたび取り沙汰されている。中国の縫製工場で作業員がほぼ毎日12時間の労働に従事しているといった疑いが浮上し、シーイン側が「申し立てがあった縫製工場で定休日の体制が整っていないことが分かり、状況を是正するように指示した」と釈明したケースもあった。ほかにも、人権弾圧が指摘される中国新疆ウイグル自治区の綿を使った商品を米国に輸出していると一部で報じられている。

 デザインの模倣や商品の安全性に対する問題も起きている。ユニクロを展開するファーストリテイリングが2023年末に、シーインの運営会社などに対して販売停止と損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。シーインの「ラウンドミニショルダーバッグ」の形態がユニクロの商品と酷似し、不正競争防止法に違反していると訴えている。

 韓国では、ソウル市がシーインの商品を検査したところ、発がん性物質が確認されたとの報道があった。衣類や化粧品などから基準値を上回る有害物質が検出されたといい、SNSでは商品の安全性を不安視する声が上がっている。


靴やクッションなどの雑貨が置かれたコーナー

 ▽大量生産、大量消費で環境負荷大きく

 環境省が2022年に実施した調査によると、国内の衣服供給数は増加する一方、衣服1枚当たりの価格は下落傾向にあり、「大量生産、大量消費が拡大している」と分析する。シーインのようなファストファッションといわれる安価な衣料品が普及し、衣服のライフサイクルが短くなっていることが大量廃棄につながるとの懸念を示す。衣服の原材料調達から製造までの二酸化炭素(CO2)排出量は年間で約9万キロトンに相当し「環境負荷が大きくなっている」と指摘する。

 動画投稿サイトを中心にインフルエンサーとして活動する20代の女性は「シーインの商品があまりにも安いので、ついつい買いすぎてしまう」と明かす。買い物の大半は洋服だが、動画撮影用の小道具なども購入しており、1回の購入金額が数万円に上ることもある。女性の自宅ではシーインで購入した商品が積み重なっているといい「安いので買い物に失敗したとしても大して気にならないが、大量に物を買い続けて良いのだろうかと思うことはある」と言う。


夏物衣料のコーナー

 ▽謎に包まれた運営実態

 慶大生の佐藤さんによると、2024年の初めごろSNSで、シーインで購入した商品の段ボールに「南京虫」の名前で知られる害虫トコジラミが付着していると話題になった。だが、身近な知り合いで実際にトコジラミに遭遇した人はおらず「うわさがうわさを呼んで、話が大きくなっているのではないか」と苦笑する。強制労働やデザインの模倣が疑われるネガティブな情報をSNSやニュースで見かけても「それが本当に正しいかは分からないと感じる」と話す。

 シーインは2008年に中国で創業した企業を母体とし、現在は本社をシンガポールに置く。2012年から衣料品のネット販売を始め、サービスは150以上の国と地域に拡大しているとされる。だが運営会社の社名や売上高といった業績などを公開せず、創業者もメディアにほとんど露出しないなど、企業実態は謎に包まれている。

 2024年6月にはイギリスで新規株式公開(IPO)の申請を非公開で行ったと複数の海外メディアに報じられた。米国と中国の対立の激化で米国での上場が承認される見通しが立たず、代替手段に打って出たもようだが、思惑通り手続きが進むかどうかはなお不透明とされる。

 ファーストリテイリングの提訴に対しても、シーイン側は「申し立てを真摯に受け止める。現在、この件について調査中だ」と回答するのにとどめている。

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