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今年の夏はちょっとお得な「ジパング倶楽部」で甲斐と駿河の小旅をした

47NEWS / 2024年9月6日 11時0分

大月駅を通過する松本行き特急「あずさ」

 【汐留鉄道倶楽部】猛暑続きで遠距離旅の気分にはなれない。ならば近場で、ということで7月に小旅をした。昨夏の北海道、札幌から納沙布岬までの根室線の大旅とは正反対の規模。

 新宿から中央線で甲府、身延線で南下して富士へ。さらに東海道線で三島に出て東海道新幹線に乗り換えて東京に戻る、という富士山西南麓をぐるりと回る1泊2日の旅で、大月、富士宮、沼津の3カ所を途中下車駅に決め、各地の〝食〟を堪能することにした。ちなみに身延線は初めて乗る路線である。

 新宿から特急「かいじ19号」の指定席に乗る。中央線オリジナルのE353系電車。速達型の特急「あずさ」と同一形式だが、「かいじ」は停車駅が多く途中の甲府止まり。終点松本までは「あずさ」だけが担当する。同じ車両の特急同士でこんな〝停車駅格差〟があるという点では常磐線の「ひたち」と「ときわ」の関係とも似ている。

 約1時間乗って、まずは大月で下車して、目指すうどん店「吉田屋」へ。めったにお目にかかれない、かみ応え抜群の硬いうどんを食べたくて事前に探しておいた。8年前にわざわざ「吉田のうどん」を食べに大月から富士急行線に乗り換えて富士山駅あたりではしごをしたことがある。今回は富士急入りせず大月で「肉きんぴらうどん」を注文。これでもか、というくらいの硬めの麺にキャベツがのる。つけ汁は馬肉、キンンピラゴボウなどが入った甘じょっぱい味。うどんに合う。

 以前、東京でも「吉田のうどん」が日暮里で食べられると知り、駅からかなり歩いて食べに行ったことがある。ほかにも東京にこんなうどん店はあるのだろうか。

 大月はうどんのためだけに下車した。後続の「かいじ27号」で終着甲府へ。「勝沼ぶどう郷」とそのものずばりの駅など左側の沿線視界が開け、ブドウ畑が続くあたりは文字通り〝甲斐路〟らしい景色。約30分で甲府に着いた。


麺はひたすら硬い「吉田のうどん」

 ちなみに「あずさ」でさらに1時間も乗れば塩尻に着く。ここから特急「しなの」に乗り換えて名古屋まで約2時間。すると新宿―名古屋は単純計算で4時間半程度となる。今回の旅を終えた後、東海道新幹線は保守用車同士の衝突事故や台風7号の影響で一部区間が運休となった。あまり話題にはならなかったが、中央線も大掛かりな迂回ながら新幹線の代替路線として役に立つのではないか、と思った。

 さて翌日、甲府から身延線の始発ホームへ。JR東海の路線なのでJR東日本の中央線とはあたかも隔離されたかのような位置に置かれている。ローカル線とはいえ特急「ふじかわ」が甲府―静岡間に上下7往復もあるのは意外だった。乗車した「ふじかわ4号」はJR東海オリジナルの373系で飯田線の特急「伊那路」と同じだという。甲府を出ると大きく右カーブして中央線と離れ単線をひたすら走る。鰍沢口を過ぎたあたりから山岳区間に入り、急なカーブ、とても狭いトンネルが続く。ゆっくりと下っているような気がする。不思議なことに集落があまり途切れることなく続いている。車内も甲府から空席はほとんどない。身延線甲府―富士間88・4キロは結構需要があることがうかがえる。

 途中の身延駅は日蓮宗総本山の久遠寺最寄り駅。拠点駅だけにホームは長く立派だった。日本三大急流で知られる富士川にほぼ沿った路線。川の曲線に沿うようにして電車は走る。車掌室の速度計をのぞくと約40キロののろのろ運転だった。


身延駅に停車中の静岡行き特急「ふじかわ」

 この路線は一度も富士川は渡らず、最後まで富士川の左岸を走っている。静岡県入りしてやがて富士宮に到着。名所でもある「富士山本宮浅間大社」は歩いてすぐ。全国の浅間神社の総本宮とされる。ご神体はずばり富士山。残念ながら富士山はくっきりとは見えなかった。それでも雲の上に顔を出した真夏の富士山は周りの山と比べ威厳がある。神社の鳥居近くは土産物屋が多い。その中にありました。目指す「富士宮焼きそば」。そのうちの一店に入った。もちもちした焼きそばの感触に魚粉がかかってうまかった。小細工なしのシンプルな味だ。以前、東京でも富士宮焼きそばをどこかの何とかフェアで食べたが、やはり本場の方がはるかに美味。地名を冠した食べ物は地元が一番だ。

 再度、富士宮から特急「ふじかわ6号」の指定席に乗車。ここからわずか10分ほどで富士へ。ここで身延線は終わりだが、「ふじかわ」はスイッチバックで向きを変え東海道線に入り、終点静岡を目指す。果たして富士から静岡までの約30分間、座席を進行方向に向けて回転させるのかどうか興味があったが、降りた富士のホームで見た限りでは変えている人はあまりいなかった。

 スイッチバックする特急は結構全国にあるが、知る範囲では博多―大分間の「ソニック」の小倉では間違いなく向きを変える。西武池袋線の初代レッドアロー時代に乗った記憶では飯能でのスイッチバックで席を変えなかったようだ。残った距離や時間で座席を変えるかどうかが決まるのだろうが、窓から流れる風景はかなり違うはず。

 富士からは各駅停車で沼津下車。途中の吉原、原なんて駅名を見ると東海道線を走っているなあ、との気持ちが強まる。路線バスで沼津港へ向かう。全国の大きな港にはたいがい干物店や新鮮な魚を食べさせる店が軒を連ねるが、ここはすごい。人であふれかえり、にぎやか。このコラムで以前紹介した、ひたちなか海浜鉄道の那珂湊近くの「おさかな市場」もにぎやかだったが、沼津はそれ以上。年末の上野アメ横商店街を思い出す。たたき売り状態の店で干物を大量に自宅に送り、エビやハマグリ、サザエといった魚介を自分で焼く「浜焼き」を楽しんだ。

 沼津から再度各停に乗り次の三島へ。ここから久しぶりの新幹線「こだま」にてガラガラの車内でのんびりと終着東京までの約50分間を過ごし、2日間の小旅を終えた。

 今夏の旅はこれで幕を閉じたが、乗車券は東京―甲府―沼津-東京の「片道乗車券」だった。65歳以上が使える「ジパング倶楽部」を利用したものだ。乗車券のみならず指定席特急券などの料金も3割引き。みどりの窓口での購入となる。会費は必要だが使うほどお得感のあるチケットと言えるだろう。
 年を重ねたからこそ、チケットをフル活用してどんどん遠出しようと思っている。

 ☆共同通信・植村昌則

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