M―1連覇、令和ロマン高比良くるまが語る漫才理論 〝過剰考察〟がベストセラーに「僕には世界を表現する自分がない」
47NEWS / 2024年12月31日 10時0分
漫才王者を決めるM―1グランプリで初の連覇を達成した令和ロマン。その向かって左側、ボケ担当の高比良くるまさんが漫才の構造や創作方法を言語化した「漫才過剰考察」(辰巳出版)を2024年11月に出版した。V2翌日に3万部の増刷が決まり、トータル5刷り10万部のベストセラーとなっている。1万組を超える参加者による争いを勝ちきった根底には何があるのか。インタビューに応じ、その思考過程を語った。(共同通信=中村彰)
▽「自分は天才ではない」。認識からスタートした分析
「漫才過剰考察」の表紙
くるまさんはまず「自分は天才ではない」という自覚を持っている。自分と対照的な例として「漫才過剰考察」で対談した霜降り明星の粗品さんを挙げた。「粗品さんって自分がめっちゃある人、自分を世界に表現する人。僕には世界を表現する自分がない」と話す。
そんな自分が漫才で人を引きつけるにはどうすればいいのか。分析し、考え、システム化した方法論が「漫才過剰考察」だ。
粗品さんをはじめ、同期や先輩たちの中には「これを表現したい」という強い気持ちでお笑いに取り組んでいる人々が多くいる。くるまさんはそんな衝動ともいえる強いモチベーションにあこがれる一方で「自分にはその衝動がない。M―1グランプリというルールのある大会で勝つためにはこういうことをやろうと考えるしかなかった。結構、逃げみたいなところがあった」と振り返る。
当初から「客観的に見ることは大事」だと思っていた。「自分を主人公に置けないというか、周りの目を気にしちゃう」。そんな自分について考えているうちに「自分の視点がメタ的(客観的)である」と気が付いた。ほかの芸人も含めネタの構成、劇場でのウケ方などを無意識のうちに分析していった。
▽義務教育の最高傑作と、吉本興業の最高傑作
高比良くるまさん=2024年10月、東京都文京区
自分たちが今ある立ち位置の根底にあるのは、所属する「吉本興業のすごさ」だという。「僕は与えられた課題を解いてきただけ。『劇場に所属するにはこのライブに出てください』『このライブでお客さんと審査員票を取ると一個上に上がります』『M―1で何回戦以上に行ったら地方の劇場に呼ばれます』とか、人生ゲームのように作ってくれてるんです」と話す。「僕、それをめっちゃやってるだけで、その中で1位だぞ、頑張ったぞって感じなんです、吉本の準備した素晴らしきシステムの中で」
相方の松井ケムリさんとは慶応大学のお笑いサークルで出会った。ネタ作りではケムリさんにアイデアをぶつけると、間を置かずに的確な答えが返ってくるという。「彼は義務教育の最高傑作です」とくるまさん。「いいおうちで中高一貫からいい大学に行かせると、こういうまじめかつ聡明(そうめい)な人間になれる。世の教育ママが目指すべき形」と評する。「与えられたものを100%で受け取れる。受容体がしっかりしている。だから一緒に進める」と相性の良さを話す。「でも僕は吉本興業の最高傑作。歴史のたまもの」とも自任する。
くるまさんが吸収し発想したものをケムリさんにぶつけ「正解」を求める。これが、令和ロマンがネタを作り上げるサイクルだ。だが、自らは勝負に臨むにあたり、事前に分析や対策をするタイプではないという。「単純にその場の勝負に強いです。空気読んだりするのが得意」と話す。
▽過剰な言い回し、その理由は
高比良くるまさん=2024年10月、東京都文京区
吉本興業に所属しているので、各地の劇場で漫才をする機会が多い。2024年は約600ステージ。お客さんの反応を見て、ネタに微調整を重ね完成度を高める。吉本所属芸人の強みと言えるだろう。
だからこそ舞台での場数が少ない他事務所の実力派芸人への敬意は強い。「人の前で笑わせるって基礎の基礎なんで、それができないと本当に無理。特にコンビ感とか呼吸とか筋トレみたいなもんなので。ザキヤマさん(アンタッチャブルの山崎弘也)があんな久しぶりに漫才やってうまいって、本当に天才だと思う。(相方の)柴田(英嗣)さんも」
2021年M-1優勝の錦鯉、22年優勝のウエストランドやモグライダーを例に挙げ、「あんなちょっとしか(舞台で)やってないのに、何で新ネタができて決勝まで行けるの、信じられないですよ」と話す。
「お笑いの悪魔に魂売った」と対談で粗品さんに評されたくるまさん。「過剰」と題したように自分でも行き過ぎ、考え過ぎとも思っている。「(お笑いについて)考えてる人がいっぱいいるんで、読んでもらって『え、そんなに考えたの。じゃあ、考えるのやめるわ』って思ってほしい。『この先、危険』みたいな看板と思ってほしい」
今のテーマは「お笑いを全然見たことがない人にどうやったら漫才を見てもらえるか」ということ。「ユーチューブやテレビ番組でセンセーショナルな言い回しで気を引いているけど、それは結局『漫才を見に来てくれたらいいな』って感じ」。悪魔に魂を売った男の考察は続く。
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