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「4」千万円と「2」千万円を書き間違え?加藤財務相がパーティー収入を大幅減額 「弁明すればするほど不可解に」識者もあきれた国会での説明

47NEWS / 2025年1月15日 9時30分

自民党総裁選の政策討論会で発言する加藤勝信氏=2024年9月、東京・永田町の党本部

 旧大蔵省出身で官房長官などの要職を歴任、故安倍晋三元首相に近く、自民党総裁選にも出馬…。華麗な経歴で知られる加藤勝信財務相が自身の「政治とカネ」問題の釈明に追われている。加藤氏の資金管理団体「勝会」が2022~23年に開催した7回の政治資金パーティーの収入を計3850万円減額する大幅訂正をしていたのだ。政治資金問題のプロ、上脇博之神戸学院大教授をして「これまで見たことがない、ひどい訂正だ」と言わしめた異例の規模での減額。ミスなのか、何か意図があったのか。ミスなら、なぜ気づかなかったのか。昨年12月下旬に閉会した臨時国会での加藤氏の釈明を振り返る。(共同通信=高津英彰)

 ▽ページ全体に大きな「×」


政治資金パーティーの収入が大きく減額訂正された、加藤財務相の資金管理団体「勝会」の政治資金収支報告書

 昨年11月末に公開された勝会の2023年分の政治資金収支報告書。政治資金パーティーの収入が記載された「機関紙誌の発行その他の事業による収入」のページ全体に大きな「×」が書かれ、訂正によって追加された次のページに正しいとされる金額が並べられていた。

 政治資金収支報告書によると、勝会は加藤氏の選挙区(衆院岡山3区)がある岡山県笠岡市に主たる事務所を置く。2023年に東京都内で6回のパーティーを開いており、当初記載した収入は2月1090万円、3月1280万円、6月1324万円、7月1620万円余り、9月3170万円、12月1159万円余り。総額を9644万円余りとして総務相に提出した。
 しかし、その6回全てで減額の訂正を届け出た。減額は2月分と3月分、12月分が各250万円、6月分が400万円、7月分が600万円、9月分が100万円。パーティーの総収入は7794万円余りにまで減った。

 大幅な減額訂正はこれだけではなかった。その前年の2022年分の収支報告書でも、10月に都内で開催したパーティーの収入が当初の「4688万円」から2023年12月8日付で「2688万円」へ減額訂正されていた。減額の総額は7回で3850万円。開催経費など支出に変更はなく、収入のみの訂正だった。


共同通信の質問状に対する加藤氏の事務所からの回答文

 いずれも訂正理由などは書かれておらず、共同通信は加藤氏の事務所に質問状を送付。その日のうちに加藤氏の事務所から届いたファクスには「お問合せの件につきましては、政治資金は法令に従い適正に処理し、その収支を報告しているところです」とだけ書かれていた。

 ▽上脇教授「常識的にあり得ない」


政治資金パーティーの収入が大きく減額訂正された、加藤財務相の資金管理団体「勝会」の政治資金収支報告書(画像の一部を加工しています)

 上脇教授は「これだけ大幅な減額も、理由を明示しない訂正も見たことがない」と驚きを隠さない。政治資金規正法は実態に即した収支を記載するよう定めており、仮に購入者への返金が理由なら支出欄への記載が必要になるが、それもないと指摘。さらに「自民党派閥裏金事件をきっかけに政治資金パーティーに厳しい目が向けられる中で『適正に処理している』という判で押したような回答だけでは説明したことにならない」と、説明責任を果たさない姿勢も批判した。

 裏金事件と無縁だった加藤氏に突如浮上した不可解な訂正問題は、国会で取り上げられることになった。

 昨年12月9日の衆院本会議で、立憲民主党の酒井菜摘議員から答弁を求められた加藤氏はこう説明した。「22年分について、本来『2』と記すべきところを『4』としていた誤記載を訂正いたしました」
 本来2688万円と書くべきパーティー収入を、4688万円と書き間違えたという説明だ。勝会の2022年分の収支報告書では、翌年への繰越金を当初4189万円余りと記載していたが、訂正によって2189万円余りになった。口座残高と収支報告書上の記載に倍近い差がある状態だったことになる。

 衆院本会議では2023年分の訂正にも言及。「収入の重複計上や返金済みの金額を収入に計上していたといった誤りに気付き、1850万円の減額訂正を行いました。いずれも事務的なミスではありますが、政治資金に対するさまざまな関心が高い中、こうした訂正が生じたことについて心からおわびを申し上げます」

 納得しない野党は翌日の衆院予算委員会でも追及を続ける。
 立民の米山隆一議員は2022年分の訂正について「23年5月30日に提出して12月8日に修正。ずいぶん間が空く。2千万円を4千万円と間違えて、会計責任者や加藤大臣自身は気がつかなかったのか」と指摘した。

 加藤氏の回答はこうだ。
 「うちの事務所ではパソコンを使いながら収支報告書を作っている。バグが起きると駄目になるので、バッファー(予備)を使いながらやっている」「間違えて『4』と打っていたものがそのままバックアップにあって、本来だったらきちんとしたものを出すべきところを担当者が間違って違うものを出した」

 米山氏は、パーティー収入を書く二つの欄でどちらも「4千万」と記載されている点を追及。なぜ2カ所とも間違えたのか問うと、加藤氏は「途中でミスがあると一方が消えてしまうので、バッファーでもう1個作っておかなきゃいけなかった。それが背景にあるということはご理解いただきたいと思います」と釈明した。なぜ2カ所で4と2を書き間違えたのかには答えなかった。

 ▽加藤氏「受け止めた」


新型コロナウイルス感染症対策本部に出席した安倍晋三首相と加藤勝信厚労相=2020年2月、首相官邸(肩書きはいずれも当時)

 2023年分についても、米山氏のツッコミは続く。
 パーティー券は通常1枚2万円前後に設定されるのに、6回全てで端数のない50万円単位での訂正が重ねられていると指摘。「人為的でなかったら都合よくきれいになるわけはないじゃないですか。自分の部下がとんでもない間違いをし、場合によっては不正をしているかもしれない。不正を最も疑うべきは加藤大臣自身じゃないのか。ちゃんと確認しましたか」と詰め寄った。

 しかし加藤氏は淡々とかわす。「集計に間違いがあったと説明を受け、私もこれだけ頻繁にあることに対してはかなり強く言ったところで、本人が自分のミスと言ったので、それはそれとして私自身は受け止めた」

 米山氏は取材に、加藤氏の答弁を「不合理な説明で、とても納得できない。2と4、何をどうしたら見間違えるのか。50万円単位での切りの良い数字の訂正も間違いで起きたとは思えない」と話した。
 その上で「別の収入をパーティーに付け替えていたが、その後に修正したのではないかと疑わざるを得ない。パーティー収入だと言えば中身を全く検証できない。こういうことがまかり通ると、政治資金規正法の意味がなくなる」と強調した。

 ▽虚偽記載すら疑われる事態


自民党総裁選で投票する加藤勝信氏=2024年9月27日、東京・永田町の党本部

 日本大の岩井奉信名誉教授も「巨額のパーティー収入を外部からチェックできず、仮に虚偽の収入額を書いたとしても検証できない、現在の政治資金規正法の欠陥が詰まった問題だ」と語る。
 昨年9月の自民党総裁選に出馬し、9位に沈んだものの財務相のポストを手に入れた加藤氏。岩井氏は「もはやどの収入額が本当なのか分からず、収支報告書の信頼性そのものを揺るがす事態だ。抜本的な法改正が必要なことを財務相自身が証明した形だ」と話した。

 上脇教授は、加藤氏の弁明を「2と4を書き間違えたと説明し、追及されるとそれがバックアップのデータだったと答弁。弁明すればするほど不可解な説明になっている」と批判。「虚偽記載すら疑われる事態で、口頭で説明してももはや信用されない。会計帳簿を明らかにするなど、客観的な証拠を出すべきだ」と強調した。

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