是枝監督だけじゃない! 世界も注目する日本人映画監督は?
ananweb / 2018年7月14日 7時0分
日本だけでなく世界からも注目度の高い実力派映画監督を、映画ライターのよしひろまさみちさんがレクチャー。個性あふれる作風はもちろん、おすすめの作品もあわせてチェックして。
たくさんの日本人映画監督が活躍するなか、今回、よしひろまさみちさんがピックアップした方々に共通しているのは、「0から1を生み出すことができる」監督であるということ。
「是枝裕和監督もそうですが、原作や脚本を自身で手がけている、作家としての力がある監督を挙げました。動画がこれだけ身近になった今、1を100にできる人はいくらでもいるし、今の日本映画は原作ものばかりというのもその証拠。でも、0から物語を生み出すことができる人は少なく、今後、間違いなく活躍していくと思います。また、もうひとつ共通しているのが、高い演出力を持っていること。“自分がどんな絵を撮りたいか”ということがちゃんと見えていて、俳優に演技をまかせずちゃんと導き、ときには俳優の殻を破らせることができる。そういう、きちんとした映画作りができる方ばかりです」(映画ライター・よしひろまさみちさん)
ここでは、監督たちのプロフィールや、今までの作品の特徴、よしひろさんが推薦する観るべき作品を紹介。今のうちに勉強を!
■ 入江 悠
娯楽エンタメ作品が得意。若手の育成にも尽力中。
「日本大学藝術学部の映画学科出身という、ザ・映画畑の人。新人監督の登竜門といわれていた『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』に出品をしていた頃から作風は変わらず、ずっと、“ど・エンターテインメント”を撮っています。世間に認められたのは『SR サイタマノラッパー』という作品でしたが、面白いだけじゃなく、話を展開させていく手法が本当にうまい。人物に語らせることが多く、作品を観ていると“脚本が好きなのね”ということが伝わってきます。『22年目の告白-私が殺人犯です-』は、そんな監督のスキルが結実した娯楽エンターテインメント作品であると同時に、“商業映画もリメイクも撮れる”ということを知らしめました。映画以外にもWOWOWの『連続ドラマW』を撮るなどフレキシブルに活動しているし、ワークショップを開催して若手の育成も行っているよう。38歳という若さにして、この幅広い活躍は素晴らしいです!」
『SR サイタマノラッパー』(’09)
ニートラッパーのIKKUやブロッコリーラッパーのMIGHTYなど、サイタマ県の片田舎で不器用にラッパーを目指す青年たちの、どこか哀しく、可笑しな日々を描く。
■ 呉 美保
偏見などの鋭いテーマを高い演出力で表現。
「大阪芸術大学を卒業していて、山下敦弘監督や寺内康太郎監督など、新時代の映画畑の人たちが同期にいます。彼女にとって初めての商業映画監督作品となった『酒井家のしあわせ』では、原作と脚本も手がけており、その力量も評価される理由のひとつ。また、巨匠・大林宣彦監督のもとで働いていたという経歴の持ち主でもあるんです。実験的要素のある作品を撮ったりと新しいことに取り組みながらも、メッセージ性の強い商業的な作品を作り上げる大林監督のもとで学んだことが、演出面などさまざまな部分で生きているのを感じます。『そこのみにて光輝く』や『きみはいい子』のように、虐待やネグレクト、いじめなどの社会問題に光を当て、差別や偏見に対する鋭いテーマをぶっこんでいることが特徴のひとつ。ちなみに、近年では『マイナビ』をはじめ、さまざまなCMを撮っているので、知らないうちに作品を目にしている人も多いかもしれません」
『きみはいい子』(’15)
学級崩壊させてしまう教師や、親から虐待を受け、自身も子どもを虐待してしまう母親、家族を失い孤独に暮らしている老人。彼らが葛藤しながらも生きる姿を映す。
■ 白石和彌
今、脂が乗ってます! 鬼畜な作品に魅了される。
「いちばん脂が乗っている監督の一人だと思います。今、ほとんど絶滅しかけている日本の映画畑で育った人であり、昔の日本映画を観ているような気持ちになれる作品が多い。監督ご本人はとても優しい方ですが、『凶悪』をはじめ、作るものはどれも鬼畜!(笑)
今年に公開されて話題となっている『孤狼の血』も、いきなり養豚場でのリンチシーンから始まるなど、とにかく怖い。バイオレンス全開で広島が舞台の極道ものであることから、“『仁義なき戦い』の現代版”と称されるほどです。また、『彼女がその名を知らない鳥たち』では、蒼井優さんや阿部サダヲさん、松坂桃李さんなど、出演する俳優陣が殻を破っていたのを感じました。それは、白石さんの監督としての力が発揮された証拠だと思います。ちなみに、彼は若松孝二監督のプロダクションにいた人で、次回作は若松さん亡きあと初めてとなる若松組の新作『止められるか、俺たちを』。そちらも楽しみです」
『彼女がその名を知らない鳥たち』(’17)
15歳年上の佐野と生活を共にする十和子は、彼を嫌いながらも稼ぎに依存している。ある日、思いを引きずっている元彼に似た妻子持ちの男と出会い、情事に溺れていく。
よしひろまさみちさん オネエ系映画ライター、編集者。小誌などの雑誌で記事を執筆する傍ら、『スッキリ』(日本テレビ系)などのTV番組に出演したりと幅広く活動中。
※『anan』2018年7月18日号より。取材、文・重信 綾 写真・Getty Images、Shutterstock/アフロ
(by anan編集部)
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