JALプログラム激変。改善点と改悪点をまとめてみた
ASCII.jp / 2023年11月22日 7時30分
先週、JALから旅行業界で今年のトップニュースにランキングしそうな、新しい生涯実績プログラム「JAL Life Statusプログラム」の発表がありました。来年2024年から実績プログラムの改訂があることは以前からアナウンスされていましたが、今回発表された内容をチェックすると、その変化の大きさが、旅好き・飛行機好きに衝撃を与えています。
これまでのJALの実績プログラムはどんなものだったのか
「実績プログラムって何?」という人向けに、これまでのJALの実績プログラムがどんなものか、まずはそこから説明しましょう。実績プログラムはこれまで毎年、1月から12月までの12ヵ月間(暦年)の飛行機搭乗実績によって「クリスタル」「サファイア」「JGCプレミア」「ダイヤモンド」という4つのサービスステータスが決まるというものでした。そのステータスは、獲得条件をクリアしてから翌年末まで維持できるといったものになります。
ちなみに条件は、下記の通りです。FLY ON ポイントとは、搭乗時に獲得できるフライトマイルを元に換算したポイント。運賃クラスや予約クラスによってはボーナスポイントも付与されます。FLY ON ポイントはマイルとは異なり、FLY ON ポイントが貯まるのは「フライト利用」のみです。
●クリスタル:3万FLY ON ポイント(うちJALグループ便1万5000FLY ON ポイント)以上、または30回搭乗(うちJALグループ便15回)以上かつ1万FLY ON ポイント以上
●サファイア:5万FLY ON ポイント(うちJALグループ便2万5000FLY ON ポイント)以上、または50回搭乗(うちJALグループ便25回)以上かつ1万5000FLY ON ポイント以上
★JGCプレミア:8万FLY ON ポイント(うちJALグループ便4万FLY ON ポイント)以上、または80回搭乗(うちJALグループ便40回)以上かつ2万5000FLY ON ポイント以上
●ダイヤモンド:10万FLY ON ポイント(うちJALグループ便5万FLY ON ポイント)以上、または120回搭乗(うちJALグループ便60回)以上かつ3万5000FLY ON ポイント以上
(ちなみに「JGCプレミア」だけ名前にJGCと付くのは、JGC会員のみのステータスのため。JGCに入会しない場合は「クリスタル」「サファイア」「ダイヤモンド」の3段階となります。)
サービスステータスは、その名前の通り空港で利用できるサービスが異なり、ステータスが上がるごとに手厚いサービスが受けられます。たとえば専用のチェックインカウンターを使えたり、優先搭乗ができたり、キャンセル待ちの優先順位が上がったり、などです。
(次ページ:ステータスによってラウンジ利用の条件と場所が変わる)
ステータスによってラウンジ利用の条件と場所が変わる
特に注目されるのがラウンジ利用の条件で、JALの場合、一番下のステータス「クリスタル」でラウンジを利用するには、貯めたマイルで発行したクーポンが必要になりますが、「サファイア」以上のステータスがあればクーポン不要で自由に入室できます。ちなみに「クリスタル」と「サファイア」が利用できるのは「サクララウンジ」と呼ばれるラウンジです。
ステータス上位となる「JGCプレミア」や「ダイヤモンド」に到達した場合は、ファーストクラス利用客向けのハイグレードな「ファーストクラスラウンジ(国際線)」や、「ダイヤモンド・プレミアラウンジ(国内線)」に入室できるようになります。羽田空港なら寿司職人がカウンターで寿司を握ってくれたり、シャンパンを飲んだりしてゆったりと過ごせるラウンジです。また、JALが加盟しているアライアンス「ワンワールド」のステータスにも対応しており、「JMBサファイア」以上のグレードであれば、JAL以外の加盟会社のフライト利用時にも、ラウンジ利用などの各種サービスが受けられます。
この実績プログラムですが、今回のプログラム改訂以降も、この4つのステータス自体は残ります。
そして、この流れでもうひとつ大事なポイントとなるのが、クレジットカードと連携した会員サービス「JGC(JALグローバルクラブ)」への入会です。JGCは、JALカードと連携したJALマイレージバンクの上級会員組織のことで、これまでは「サファイア」になれる条件をクリアすると入会することができました。また、一度でもJGCに入会してしまえば、それ以降、1度もJALに搭乗せずとも、ずっと「サファイア」のサービスが維持されるといった大きな魅力がありました。つまり簡単にいえば「毎年50回飛行機に乗らなくても、1年間だけ50回飛行機に乗ってJGCに入会すれば、以降はJALとワンワールド加盟エアラインで、ずっと航空会社指定のラウンジに入れる」ステータスがゲットできたわけです(ただしクレジットカードの契約を破棄/退会した場合はリセットされる)。
今回の改定で大きく変わったのが、そのJGCへの入会基準です。2024年以降は、「JAL Life Statusプログラム」の新しい条件をクリアする必要があります。
(次ページ:新しくなった生涯実績プログラムの良い点・悪い点とは)
新しくなった生涯実績プログラムの良い点・悪い点とは
■良い点:ポイント期限の1年縛りがなくなった
新しい生涯実績プログラムは、これまでの搭乗実績プログラムとは違って1年での区切りはありません。何年かかっても特定の「Life Statusポイント」を獲得すれば、JGCに入会可能となったのは良い点です。
新しい「JAL Life Statusプログラム」は、獲得したポイントによって、ランクが6つに分けられます。
・JMB elite(250ポイント) ・JMB elite plus(500ポイント) ・JGC Three Star(1500ポイント) ・JGC Four Star(3000ポイント) ・JGC Five Star(6000ポイント) ・JGC Six Star(1万2000ポイント)
名称からもわかる通り、1500ポイント以上獲得の「JGC Three Star」到達が、JGCへの入会条件となります。ポイントを貯めるにはいくつかの方法があり、基本となるのは、やはりJAL便に搭乗してポイント獲得する方法です。
■悪い点:飛行機の搭乗だけでJGCになるには、これまでの6倍乗る必要がある
JAL便に搭乗した場合、国内線では1搭乗につき5ポイント、国際線では1000区間マイルごとに5ポイントが獲得できます。これの何が問題かというと、搭乗のみで「JGC Three Star」まで貯めようとすると、国内線だけで考えれば300回搭乗しないとJGCへ入会できなくなったということです。
ラウンジに入れるか、入れないか。それは格安旅行を少しでも快適にしたい旅人たちのQOLを左右する大問題です。これまでは飛行機に50回乗れば良かったのが、その6倍乗らなければダメということで、飛行機好き界隈、特に「JGCに入りたいから、一気にマイル修行しようかな……」と悩んでいたマイラーには、結構な大きな壁となりました。そのため、一部で大きなニュースとなったわけです。
■良い点:JGC会員はラウンジ+αサービスが受けられる
この「JAL Life Statusプログラム」ですが、悪い点ばかりではありません。まず、すでにJGCに入会している人は、そのまま「JGC Three Star」となり、引き続きこれまでの会員資格は維持されます。また「JGC Three Star」以上のステータスになれば「モバイル通信データの無料提供」など、これまでにない特典が付き、そこからさらにランクを上げれば「無料空港宅配サービス」なども利用可能となります。
■良い点:過去の獲得ポイントは引き継がれる
「JAL Life Statusプログラム」は"生涯"実績プログラムということで、今回の発表以前の搭乗実績も反映されます。そのため、これまでマイレージ会員(JMB)として何度かJALの搭乗実績を記録していた人や、JGCチャレンジが大変でマイル修行を休んでいた人でも、2024年1月の「JAL Life Statusプログラム」スタート時点に、「Life Statusポイント」が何ポイントか貯まった状態になっているはずです。イチからのスタートとはなりませんので安心してください。
(次ページ:日常のクレジットカード利用でポイントがたまる)
■良い点:日常のクレジットカード利用でポイントがたまる
加えて、「Life Statusポイント」は飛行機に搭乗する以外にも貯めることができます。たとえばクレジットカードの「JALカード」で決済すると、利用金額にあわせてマイルが付与されますが、そのマイルが2000マイルになると、「Life Statusポイント」を5ポイントゲットできます。JALの航空券をJALカードで決済すれば、実質5ポイント以上の獲得となるわけです。
また、JALの総合ショッピングモール「JAL Mall」で買い物をするとマイルが付与されるのですが、100マイル貯まるごとに「Life Statusポイント」が1ポイント貯まります。
■悪い点:ポイント連携サービスに期待もJGC到達への道のりは遠い
実は今回の「JAL Life Statusプログラム」が発表される1週間前に、JALは「JAL Pay」というスマートフォン向けのタッチ決済サービスを発表・開始しています。こちらも200円の利用ごとに1マイルが貯まり、500マイルごとに「Life Statusポイント」が1ポイント貯まります。
つまり極端なことを言えば、飛行機に乗らなくても日常生活の支払いだけで「Life Statusポイント」を貯めることができるわけです。とはいえ「JAL Pay」だけで「JGC Three Star」に到達しようとすると、1億5000万円ぶんも決済しなければならないので現実的ではありませんが……。
ちなみに今後は「JALでんき」や「JALふるさと納税」といったサービスでも、「Life Statusポイント」が貯まるようになるとのことです。
マイラーは気落ちせず 自分のペースと予算にあわせた新たな修行の道へ
というわけで、1年で一気に修行をしてJGCに入会というのは絶たれた感じにはなりましたが、逆に数年のスパンで飛行機に乗る以外のサービスも活用しつつ、じっくりとJGCを目指すというのが可能になりました。費用もJALが定期的に開催しているタイムセールで購入すれば、1区画6000円台というのもあるので、自分のペースと予算にあわせてチャレンジできると思います!
ちなみに筆者は、この5年間でJALグループの飛行機に56回ほど搭乗していますが、その間、JALではマイルを貯めておりませんでした。JALを含むワンワールドでの搭乗は、加盟航空会社のカタール航空に貯めていたため、生涯実績としては10年ほど前に乗ったぶんの10ポイントからのスタートとなりそうです。ここから「JGC Three Star」を目指すのは遠いなぁ……。
旅人視点での「JAL Life Statusプログラム」 ■改善 ・ポイント期限の1年縛りがなくなった ・JGC会員はラウンジ利用+αサービスが受けられる ・過去の獲得ポイントは引き継がれる ・日常のクレジットカード利用でポイントがたまる ■改悪 ・飛行機の搭乗だけでJGCになるには、これまでの6倍乗る必要がある ・ポイント連携サービスに期待もJGC到達への道のりは遠い
この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)
世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。
- 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
- 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)
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