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Windows 11の目玉機能が早くも終了、Windows Subsystem for Android(WSA)を振り返る

ASCII.jp / 2024年3月10日 10時0分

昨年11月頃には、すでに何かおかしな様子を見せていた それにしても突然の打ち切りの感はある

 3月5日、Windows Subsystem for Android(以下、WSA)が、2025年3月5日で終了することが発表された。

Windows Subsystem for Android
GitHubのWSAのリポジトリ。ソースコードが公開されているわけではなく。主にバグ報告や機能リクエストで使われていた。トップページにあるREADME.mdが更新され、冒頭に終了する旨のメッセージが追加された

 プレスリリースもBlogでの発表もなく、Microsoft Leanのページ(https://learn.microsoft.com/en-us/windows/android/wsa/)に注意書きが入ったほかは、AmazonのFAQに記述がある程度である。このページを見るに、告知が追記されたのが2024年3月5日午後4時36分(おそらく現地時間である米国太平洋時間、日本時間の6日午前9時)である。

 しかも、発表翌日となる3月6日には、MicrosoftストアでのAmazonアプリストアの配布が終了し、現時点でインストールできなくなっている。Windowsの通例では、廃止の告知があって年単位の終了期間を経てから利用できなくなるが、発表から配布終了までの時間が短く、“打ち切り”の印象を受ける。もっとも、WSAの位置づけは、Microsoftストアアプリの1つであり、Windowsの標準機能とは異なる。しかし、プレスリリースを出すこともなく、いきなりダウンロードも不可というのは、「一刻も早くやめたい」という雰囲気がある。

 WSAのアップデートは、昨年10月19日にリリースされた2309.40000.8.0(https://blogs.windows.com/windows-insider/2023/10/19/update-to-windows-subsystem-for-android-on-windows-11-october-2023/)が最後になった。それ以降アップデートがなく、少し違和感を抱いていた。

 GitHubにあるWSAのリポジトリ(https://github.com/microsoft/WSA)では、昨年11月初旬までは、バグ報告に担当者が割り当てられていたが、中旬ぐらいから割り当てられない状態が続いていた。つまり、ユーザーからのバグ報告はあるものの、Microsoft側がまったく反応していない状態が続いていた。おかしいとは思っていたが、このあたりで中止が決まったのではないかと考えられる。

そもそもWindows Subsystem for Androidとは?

 WSAとは、Windows 11でAndroidアプリケーションを動かす仕組みである。そのため、用語、たとえば「アプリ」といった用語などが混乱しやすい。少し表記が煩雑になる点はご容赦いただきたい。

 WSAでは原則として「Androidアプリ」は、Microsoftストアで配布されている「Amazonアプリストア」アプリケーションから入手する。それ以外にも、Androidアプリ・パッケージファイル(APKファイル)を持っているなら、開発者機能を使ってインストールして利用できる。とはいえ、ほとんどのユーザーは、APKファイルを持っていないだろうし、インターネットで配布されているパッケージファイルには、「悪意のあるプログラム」が仕組まれている可能性があり、中身を検証できないユーザーが使うのは非常に危険である。

 WSAは、その名前の通り、WSL(Windows Subsystem for Linux)と似た仕組みで、Windows 11上でAndroidの実行環境を作り、Androidアプリケーションを動作させる。似たような仕組みは、Chromebookにも存在する。

 一般にAndroidのアプリケーションは、Google Playストアから入手するのだが、Amazonは自社のAndroidデバイス用に専用のアプリストアを開設した。WSAで利用するのは、このAmazonアプリストアである。Google Playストアとは別物なので、アカウント登録ももちろん別である。

 Amazonアプリストアからインストール可能なAndroidアプリは、開発者がAmazonに申請して登録したもので、課金の仕組みや広告の機構が違うため、Google Playストアに登録できたものをそのままAmazonアプリストアに登録できるわけではなく、場合によっては、Amazonアプリストア用のバージョンを作成する必要がある。

 これまでは、Amazonアプリストアに登録を申請する場合、対象デバイスとしてWindows 11を選択する必要があった。また、WSAは基本的にはAmazonアプリストア用のアプリ条件をクリアする必要があるが、一部利用できない機能(たとえば、米国などにはあるAmazon Maps機能など)やハードウェア(たとえばGPSなど)もある。また、ハードウェアの利用に関しても制限(たとえばWi-Fiホットスポットとして動作するなど)がある。

 Windows 11へのWSAのインストールは、MicrosoftストアからAmazonアプリストアをインストールで行なう。このときWSAのダウンロードとインストールがなされ、Amazonアプリストア・アプリとAndroid用Windowsサブシステム・アプリがスタートメニューに登録される。

 なお、WSAに関しては、過去に何回かこの連載で扱った。

・Windows Subsystem for Androidの進化を確認 エクスプローラーからのファイルのドラッグ&ドロップが可に ・AndroidアプリがWindowsで動く、「Windows Subsystem for Android」は今どうなってる? ・Windows上でAndroidアプリが動く、Windows Subsystem for Androidの日本語版を試す

では今後のWSAはどうなるのか?

 まず結論から言うと、現在WSAが入っていないマシンでは、もうインストールすることができず、WSAはもはや利用不可だ。日本国内では米国太平洋時間の午前0時頃(日本標準時の午後5時)には、まだMicrosoftストアにAmazonアプリストアが表示され、インストールが可能だった。米国太平洋時間の3月6日午前5時(同午後10時)に確認したところ、もうAmazonアプリストアは表示されなくなっていた。

Windows Subsystem for Android
米国太平洋時間の3月6日午前5時には、Microsoftストアの検索キーワード「Amazon」で「Amazonアプリストア」が表示されなくなっていた。背景のAmazonアプリストアのページは、同午前0時に開いたもの

 現在、WSAがインストールされているマシンでは、2025年3月5日まではWSAを普通に利用することができ、Amazonアプリストアからアプリのインストールも可能である。ただし、Amazonは、2024年3月5日の時点で、AmazonアプリストアへのWindows 11をターゲットとしたアプリの申請を受け付けなくなっており、今後、新規のアプリがAmazonアプリストアに登録される可能性はない。

 登録済みのアプリに関しては、アップデートの登録申請は受け付けるので、インストール済みAndroidアプリのアップデートを受け取る可能性はある。

 とはいえ、Amazonアプリストアを見ると、昨年記事を書くときに見つけたアプリの多くが消えており、今後新しいアプリが登録されないことを考えると、WSAのアプリストアとしては「終わった」ものと考えられる。今後もアプリがAmazonアプリストアから消えていくのではないかと思われる。ユーザーとしては、インストール済みのアプリを使い続ける程度しかできないだろう。

 2025年3月5日以降にどうなるのかは、「サポートされない」としか表現がなく、有償アプリもあったことから、WSAが動くなら、そのまま使い続けることができる可能性がある。しかし、アップデートもなければ、バックエンドで使われているサービスが継続する保証もない。場合によっては、WSAは動作できても、アプリ自体が動作しなくなる可能性が高い。

 また、すでにWSA自体の開発が終了していることから、Windows 12などのWindows 11 Ver.23H2後継のWindowsでの利用も困難と考えられる。気になるのは、WSAをインストールしたWindows 11マシンをWindows 12にアップグレードしたらどうなるかだ。Microsoftストアアプリは、Windowsのアップグレード(形式上はWindowsの再インストール)後に、自動的に再インストールされる。このとき、Windows 12では、WSA自体が動作しない可能性があり、Windows 12での継続利用は難しいだろう。

 基本的にユーザーがする必要があることはなく、できることもほとんどない。もし、アプリが何らかのデータを管理していた場合、原則、それもWSAと運命を共にする可能性が高い。データ救出の望みがあるとすれば、WSAで開発者向け機能を有効にして、adbコマンドやadb shell機能を使って、ファイルを取り出す程度であろう。とはいえ、画像などの汎用ファイル形式ならともかく、アプリ独自のバイナリファイルなどでは、もはや活用する術もないかもしれない。

 WSAは、Windows 11の目玉機能として紹介され、日本では2022年8月からプレビューが始まった。同年10月にVer.1.0となり、アップデートもほぼ毎月のようにされていたのだが打ち切りが決まった。

 Amazonアプリストアは、ゲームやエンターテインメント系が多い印象が強く、実用的なAndroidアプリの数は少なかった。筆者もWSAで常用するアプリは、電子書籍リーダーのKindle程度だった(Windows版Kindleにはない翻訳機能があったため)。そもそも、スマートフォンを持たないWindowsユーザーは極めて少数派なので、何もわざわざWindowsで使わなくとも自分のスマートフォンでアプリが利用できる。

 鳴り物入りで導入されたWSAだが、実際の利用者が少なかったのが現実だったのかもしれない。

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