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これが最大13.1ch/ハイレゾのライブ配信だ!ーーJAZZ NOT ONLY JAZZの熱気にふるえた

ASCII.jp / 2024年8月14日 13時0分

 次世代の若手実力派ミュージシャンと豪華ゲストのセッションによって生まれる一夜限りの特別なライブだ。6月21日にNHKホールで開催され、チケットもあっという間に完売した「JAZZ NOT ONLY JAZZ」の配信が8月16日(金)19:00に始まる。

 その演奏やライブならではの熱気には当然のように注目だが、本誌の読者に対してぜひ伝えたいポイントがある。それは、KORGの提供する高音質/高画質の配信プラットフォーム「Live Extreme」を通じて、ハイレゾやサラウンドフォーマットのサウンドで配信が楽しめるという点だ。

 実はこのライブの配信には、WOWOW入交英雄氏のチームが関わっている。入交氏はイマーシブオーディオの分野では異才を放つ存在。過去にも実証実験を含むさまざまな形でサラウンド収録とその配信に取り組んでおり、その活動については本誌でも何度も取り上げている。Live Extremeを使ったものでは、今年2月にAuro-3Dの立体音響技術を用いた96kHzのハイレゾ配信を実施した。

マイクを取り付けているのが入交氏

 その時の配信は9.1ch(96kHz)で、アーカイブ時に11ch(96kHz)と13.1ch(48kHz)が追加されているが、JAZZ NOT ONLY JAZZでは最初からチャンネル数が多い13.1chのAuro-3D配信を予定している。

 これはリスナーを囲うように配置した7.1chの一般的なスピーカー配置の上にハイトスピーカーで構成した5chのレイヤー、さらに真上に配置したトップスピーカーを加えた構成で、Auro-3Dとしてはフルスペックとなっている。

 Voice of God(天の声)とも呼ばれるトップスピーカーの存在はAuro-3Dならではの特徴だが、意外に対応するコンテンツは少ない。せっかくのAuro-3Dなのだから「トップスピーカーから音が出るコンテンツが欲しい」という、Auro-3Dのマニアからの声に応えたものとなっている。

 なお、コンテンツの収録は13.1ch/96kHzで実施されているが、Auro-3Dの仕様により13.1chの配信は48kHzに落としての提供となる。JAZZ NOT ONLY JAZZの配信では下記の6種類の音源が選択できるようになっており、11.1chや2chの配信であれば96kHzでの再生が可能だ。

・Auro-3D (13.1ch、48kHz) ・Auro-3D (11.1ch=7.1.4ch、96kHz) ・Auro-HeadPhones(2ch、96kHzまたは48kHz) ・ロスレス・ステレオ(96kHzまたは48kHz) ※ヘッドフォン・イマーシブ版はNewAuroのAuro-HeadPhones技術を使用

 Auro-3Dの11.1chでは7.1chの上に4chのハイトスピーカーを組み合わせた7.1.4chの構成が採用されている。Auro-3Dではトップスピーカーを含む5.1ch+5ch+1chの構成(こちらも11.1ch)も規定されているが、7.1.4chの方がDolby Atmosなどのスピーカー配置を想定してサラウンドを組んでいる人との親和性が高いためだろう。

 また、Auro-3Dの13.1chや11.1ch(7.1+4Hch)は、7.1chのPCMフォーマットにエンコードされるので、Auro-3Dに対応しないAVアンプを使っている人でも7.1chのサラウンドでコンテンツを楽しめる。

 Live Extremeで配信されるオーディオフォーマットにはステレオのロスレス音源や、Auro-3Dの音源をヘッドホンに最適化したものまで豊富な選択肢が用意されている。6パターンもの音源を用意し、期間限定とはいえ、そこから好きなフォーマットを何回でも自由に選んで再生できるコンテンツというのはなかなかレアだ。

 ライブ配信はコロナ禍以降、増えており、リアルとオンラインの両方で楽しめるライブも増えてきているが、サラウンドフォーマットを採用した配信自体が珍しい。JAZZ NOT ONLY JAZZには、イープラス「Streming+」による通常配信もあり、ここではロッシー圧縮のAACフォーマットが採用されている。料金はStreaming+が3500円、Live Extremeが4500円と若干高くはなるが、Live Extremeは音質にこだわる人をターゲットにした高品質版の配信という位置付け(映像はフルHD品質)である。

 ライブならではの熱狂、観客の一人になったような没入感の再現ができることに加えて、フォーマットを変えながら何度も様々なシーンを楽しめる。ちょっとした違いにもこだわりたい人にとっては異なる種類の音源で楽しめる6倍リッチなコンテンツと見ることができるかもしれない。オーディオやサラウンドに興味があり、システムを揃えている人にはLive Extremeでの配信が断然おすすめだ。

まずはYouTubeで楽しもう!

有料配信に先立って、WOWOWのYouTubeアカウントでは、The Shun Ishiwaka Septetが演奏するジョン・コルトレーン名曲のカバー「A Love Supreme」(ライブ1曲目)のステレオ版とヘッドフォン・イマーシブ版の動画を公開している。ヘッドホンを使ってステレオ版との違いを聞き比べることで、その魅力を実感できるはずだ。

恐ろしいまでの解像感、そして配信だから感じられる 新しいライブの側面と楽しみ方に感激!

 筆者はこの配信のために作られた13.1ch/96kHzのマスターを、WOWOWの辰巳放送センターに用意された試写室「オムニクロス・スタジオ」で体験できた。オムニクロス・スタジオは水平方向に11台、天井に17台、床レベルに3台、サブウーファー2台(合計33台)のスピーカーを配置し、Auro-3D、Dolby Atmos、360 Reality Audio、22.2chサラウンドなど、主要なイマーシブサラウンドフォーマットすべてについて、各フォーマットが推奨するスピーカー配置で音をチェックできるようになっているのが特徴だ。

 この素晴らしいシステムで体験することができたコンテンツの興奮についても、ぜひ触れておきたい。

 JAZZ NOT ONLY JAZZは、ジャズドラマーの石若駿氏が率いる次世代実力派バンドThe Shun Ishiwaka Septetと、様々なゲストアーティストが共演する一夜限りのライブセッション。ゲストに招かれたのは、アイナ・ジ・エンド、上原ひろみ、大橋トリオ、田島貴男(Original Love)、PUNPEE、堀込泰行などジャンルをまたいだ実力派アーティストたち。

 すでに公演の幕は大盛況の中、閉じているが、8月16日から始まるのは、このJAZZ NOT ONLY JAZZの後日有料配信版だ(フルバージョンは9月にWOWOWで放送)。チケットは6月7日から販売中で、視聴期間は8月16日から8月23日まで(チケットの購入も同日まで可能)。

 上にも書いたように、一度買えば、期間内は何度も見られるので、配信フォーマットによる画質や音質の違いを体験したいという人にもおすすめだ。試聴ではライブ映像の中から4曲を聞いた。

 まず感じたのは音離れの良さだ。サラウンドではスピーカーの数が増える分、音源が含む情報の再現性が向上すると言われるが、このライブでも各楽器のタッチの差や音色の違いなどが明瞭になり、プレーの解像感が上がり、細かなニュアンスや会場の生の雰囲気を感じやすくなる。

 The Shun Ishiwaka Septetによる最初の曲ジョン・コルトレーンのカバー「A LOVE SUPREME」ではトランペット、サックスのユニゾンの音が生々しく、前に飛んでくる感じがすごい。ベースの音は太く、叩く位置に連動したドラムスの動き、音葉の広さ、会場に一体化したような包囲感などが感じられる。

 こういった音はライブの現場の方がよりよく感じられると思いがちだが、映像付きということで、曲の聞きどころや披露されるテクニックのどこに注目すべきかが明確となり、より音の世界を実感しやすくなる面もある。

 仮に会場に足を運んだ人でも、ライブ配信を通じて生演奏にはない魅力に触れられるのではないかと実感できた。

 続いて聞いた曲はゲストアーティストのアイナ・ジ・エンドさんとのセッション「私の真心」。サラウンドコンテンツだが、音については前方からの音が中心になっていた。後方からのアンビエンス成分は感じるので、客席にいるような雰囲気はある。低域はディープだが、重くなりすぎず軽くスパンと立ち上がってくる。これはこの試聴室の特徴かもしれない。バックコーラスは声のレイヤーが位置を変えながら重なっているように感じられ、音場の立体的な再現に一役買っていた。

 配信では、離れた場所から観るライブとは違い、映像付きでアーティストの表情までクローズアップされるため、より演奏者の気持ちに寄り添った体験ができるだろう。座り込み、寝転がりながら歌うシンガーのパフォーマンスなど臨場感あふれる映像をじっくりと見守りたい。

 聞きどころとしては、最後の間奏部でブラス系の楽器が回り込む感じなどに注目してほしいと思った。トップスピーカーの存在や上下方向の音の動きについてはあまり感じない気もしたが、入交氏をはじめとしたスタッフの説明によると、ハイトスピーカーやトップスピーカーを加えることで、距離が離れている左右のスピーカーとサラウンドスピーカーの音も自然につなげられるのだという。

 また、サラウンドコンテンツでは、収録した音そのものを鳴らすということではなく、会場で鳴っている音の雰囲気をどのようにイメージさせるか、そのためにどう音の配置を作っていくかがポイントにもなる。その意味では過度に高さを意識させず、前方のステージから音が鳴っている雰囲気を作ることが重要になるのだろう。

 ライブ終盤ではドラムの石若駿さん、ベースのマーティ・ホロベックさんにピアニストの上原ひろみさんが加わってのトリオ。ここでも個々の音が非常に明瞭に録音され、見通しよくプレーの雰囲気を伝えていることを実感できる。例えば「XYZ」では、5弦ベースのスーパープレーを間近に楽しめたり、こぶしで鍵盤を叩く激しい演奏の雰囲気、ドラマーのスティックさばきや足の動き、どの部分を叩いているかを真俯瞰でとらえた迫力ある映像など目を喜ばせる演出もいい。

 圧巻のプレーで(会場にいたであろう他の人と気持ちを同じにして)思わず映像に歓声を上げそうになった。

 続く「Return of Kung-Fu World Champion」は、ギターの西田修大さんが加わったカルテットの編成で、ぜひサラウンドで聞いてもらいたいコンテンツだ。シンセによる伴奏やエレキギターの音の共演はある意味ライブよりも凄いと感じさせる面があった。コミカルなファミコンサウンド風の音色もいい。

 筆者は実際の会場に脚を運んだわけではないので想像ではあるが、おそらくこういったサウンドは生の会場で聞くともう少し混沌とした雰囲気になるはずだ。細かい音をよく聞くという点ではライブ配信の方が歩がいい面もあるのではないだろうか。

 このように筆者は、たった4曲を聞いただけで、ライブの熱気や演奏の素晴らしさの虜になった。ライブ配信の現在、その最先端のクオリティーを知るためにも、ぜひ聞くべきコンテンツだあるのは間違いないだろう。特にサラウンドに関心があり、相応のシステムを所有している人は絶対に体験すべきコンテンツだ。

 もし読者の中に、実際のライブやこのコンテンツを体験した人がいるのであればその感想をSNSなどを通じて届けてほしいと思っている。

上から音が鳴るだけではない、サラウンドの特徴を解説

 最後にサラウンド収録の狙いや制作の成果についていくつか質問をしてみた。まずはトップスピーカーがある効果についてからだ。

 JAZZ NOT ONLY JAZZの収録では合計で108chでの収録がなされ、このトラックを元に音源が制作されている。音の配置については、試聴のインプレッションでも書いたが中層を中心にし、上層は補助的に配置する形になっているという。音楽コンテンツでトップスピーカーから音が鳴っていると意識させるようなコンテンツ作りは、教会のような高さを意識するような会場でない限りあまりなく、その存在に気が付かない人もいるかもしれないということ。

左から順に、沼田彰彦さん(ミキシングエンジニア)、蓮尾美沙希さん(ミキシングエンジニア)、入交英雄さん(サウンドディレクター)

 しかし、トップスピーカーを追加する効果は確実にあるという。それは頭上の中央にリアルのスピーカーがあることによって、ハイトの5chと組み合わせた6つのスピーカーで作る音像ができ、定位感の良さが向上する点だ。音の解像感は基本的にスピーカーの数を増やせば、増やしただけ上がっていく。

 また、ハイトスピーカーが加わえる理由は高さの再現だけではない。そのポイントになるのは、左右の音の広がりだという。

 スピーカー配置は一般的なステレオ再生の場合、リスナーと左右のスピーカーで正三角形を作るのが理想などとも言われるが、その際はリスナーから見て、60度程度の角度に開いた左右のスピーカーの音を聞くことになる。ハイトスピーカーを加えると、このさらに外側となる90〜120度程度の角度まで音が広げられ、そのつながりも自然にできるそうだ。

 一般にL(左)とSL(左のサラウンドスピーカー)やR(右)とSR(右のサラウンドスピーカー)間は距離が離れているため、音が定位しにくい。言い方を変えると、間にスピーカーがないので音を置けない。そこでコンテンツ制作時にも、この部分に定位する音を置かないのがセオリーだという。

 しかし、3Dオーディオでは「この間」を上方スピーカーの音から発する成分を組み合わせることで補える。結果、WL(ワイドL)やWR(ワイドR)といった部分に定位する音を積極的に仕掛けられるのだそうだ。

 別の質問もしてみた。さまざまなアーティストが出演してステージが構成されているが、曲ごとに収録の方法を変えたり、サラウンドで置く音の配置を変えたりしているのかについてだ。

 回答としては、アーティストの出入りはあるものの、全体を通して演奏しているのは石若氏のバンドであり、あくまでもそれにゲストが加わる形式であるため、全体のセッティングやエフェクト、音のバランスなど、基本的な音作りのプランは変えていないそうだ。

 ただし、ギターの持ち替えなどちょっとしたステージ上の変化はあるため、微調整は加えている。また、映像と音の組み合わせにも配慮している。前提として映像に音を合わせるような作り方はせず、映像は映像、音は音として制作してはいるが、映像と組み合わせた際に聞こえにくい部分をフォローしたり、寂しい部分をフォローしたりといった調整は加えているという。

 最後に収録で苦労したポイントはなんだろうか?

 イマーシブでの収録となると、マイクの数が増え、高い位置に設置するものもあるため苦労は増える。また、96kHzでの収録となれば負荷も上がるため、ProToolsが最後まできちんと動作するか、それぞれがSyncするかといった部分の調整もシビアになる。こういった課題に関しては、辰巳のスタジオで事前に準備した上で、前日リハなどでさらに細かい調整を加え、当日の収録に臨んだという。

 JAZZ NOT ONLY JAZZというコンテンツについては、高品位なサラウンド音源での映像配信に関する実証実験のひとつでもあるが、商業コンテンツとして継続的にビジネスを展開していく上での課題や材料を得る機会としてもとらえているそうだ。

 その真価はオムニクロス・スタジオのような本格的なスタジオでより一層発揮されるという面もあるが、その質の高さは家庭でも実感できるはずだ。ユーザーの裾野を広げるという意味では、例えば劇場でのライブビューイングなど、サラウンド環境が整った場所での配信についても検討してもらいたいところだ。

 個人的にはこれだけ充実したコンテンツが、しかも6種類も体験できることを考えると、通常配信との差額が少なく、非常にリーゾナブルに感じる。自宅にサラウンド環境が用意されているマニア層であれば、聞かない手はないだろうし、ストリーミング配信や音源の単体販売など、別に触れる機会もぜひ提供してほしいと思っている。

 新たなコンテンツの企画が実現するかどうかについては、この配信の反響次第という面もあるだろう。この記事を読んで、JAZZ NOT ONLY JAZZ、あるいはLive ExtremeやAuro-3Dのサラウンド配信に興味を持った人は、ぜひこの機会を活用してほしいと思っている。

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