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Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石

ASCII.jp / 2024年8月26日 10時0分

Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石

 AMDの最新CPU「Ryzen 7 9700X」を搭載した、サイコムのゲーミングPC「G-Master Spear X670A」。同CPUはZen 5アーキテクチャーを採用し、TDPは65Wと前モデルの「Ryzen 7 7700X」(TDP 105W)から引き下げられてもなお、性能は向上しているのだから驚くしかない。

 とはいえ、どこまで性能が出せるのかは、PCごとに事情が異なろ、可能な限り性能を引き出せる環境を用意するCPU単体のレビュー記事と、結果が大きく変わることも珍しくない。

 そこで、前回の外観・内観チェックに引き続き、本稿ではG-Master Spear X670Aの試用機を用い、どのくらいの性能が発揮できるのか、定番ベンチマークソフトを使ってチェックしていく。

Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石
サイコムのゲーミングPC「G-Master Spear X670A」。標準構成の直販価格は30万8360円~(配送料込み)

 なお、CPUクーラーは静音かつ高効率で冷やせる空冷モデル「NH-U12S redux」で、PCケースはメッシュを多用し、通気性を重視した「MasterBox CM694 TG」。どちらも空冷PCでは定番といえるほどの存在で、十分な実績があるPCパーツだ。

 さらに、PCIe 4.0×4接続のNVMe SSDとして、Crucialの「T500」(1TBモデル)、メモリーはRyzen 7 9700Xがサポートする最大速度のDDR5-5600と、妥協のない構成になっている点も頼もしい。

高負荷時のCPU温度は最大でも約80度

 まずはCPU性能を定番の「CINEBENCH」で試してみよう。CGレンダリング速度からCPU性能を測ってくれるベンチマークソフトだ。最新の「CINEBENCH 2024」だけではなく、1年以上前のPCと比較しやすいよう、「CINEBENCH R23」でもテストした。

 テストは全コアを使う「Multi Core」と、1つだけ使う「Single Core」の2つ。テスト時間の設定はデフォルトのまま(10分以上の暖機運転を行った後にスコアーを表示するモード)だ。なお、CINEBENCH R23とCINEBENCH 2024のスコアーはどちらも「pts」という単位だが、テスト内容そのものが違うため、相互に比較することはできないので注意してほしい。

 また、環境は異なるが、加藤勝明氏のレビュー記事の値を参考にさせてもらおう。この記事ではCPUクーラーに冷却性能が高い360mmラジエーターのNZXTの簡易水冷クーラー「Kraken Elite 360」が使われており、冷却性能による性能差があるのか、を見るのにちょうどいいからだ。

Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石
CINEBENCH R23の結果
Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石
CINEBENCH 2024の結果

 CINEBENCH 2024のスコアーを見てみると、参考記事の結果はMulti Coreで1127pts、Single Core で130pts。対して、G-Master Spear X670AはMulti Coreで1135pts、Single Coreで132ptsと、誤差の範囲とはいえ上回っていた。

 空冷CPUクーラーのNH-U12S reduxで十分な冷却性能が得られている、と考えていいだろう。また、参考記事のRyzen 7 7700Xの結果はMulti Coreは1071pts、Single Coreが117ptsだった。つまり、Ryzen 7 9700XのほうがMulti Coreで約6%、Single Coreでは約13%も上回っており、世代間でしっかりと性能が向上していたことも確認できた。

 なお、CINEBENCHのMulti Coreテストは全コアに負荷をかけるため、CPUの温度はかなり高くなる。モニタリングツール「HWiNFO64 Pro」を使ってCPUの温度と平均動作クロックを調べてみた。

Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石
CPU温度(CPU(Tctl/Tdie))と平均動作クロックの変化。折れ線グラフはブルーがCPU温度で、オレンジが平均動作クロックとなる

 CPU温度は開始直後一気に70度を超えたものの、その後はゆるやかな上昇に変化。瞬間最大でも80.1度、平均は75度前後で安定していた。また、動作クロックは時折のスパイクはあるが、ほとんどの時間は4.7~4.8GHzで安定。温度の影響による乱高下は見られない。

 つまり、余裕がある安定動作と言っていい。近年のデスクトップPCでは、CPUの高性能化にともない、簡易水冷クーラーの必要性が上がってきたが、Ryzen 7 9700Xは安価な空冷クーラーで十分だ。TDP 65WのCPUはお財布に優しい存在と言える。

総合性能も画像生成AIを処理する能力も優秀

 続いて、PCの総合性能を「PCMark 10」で見てみよう。このベンチマークソフトは、ブラウザーやオフィスソフト、動画/画像編集など、様々な用途のソフトを動かし、性能を測るもの。CINEBENCHのスコアーがほぼCPUで決まるのに対し、ストレージやメモリー、ビデオカードの性能もスコアーに影響する。

 また、結果は総合スコアーだけではなく、テストグループごとのサブスコアーも算出してくれる。テストグループは、ブラウザーの利用やビデオ会議といった軽めの一般用途となる「Essentials」、主にオフィスソフト処理速度を評価する「Productivity」、動画や写真編集やレンダリングといったクリエイティブ用途の「Digital Content Creation」の3つ。

Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石
PCMark 10の結果

 総合スコアーは10088。用途を問わずそれなりに頼りになる性能と言える。サブスコアーを見ていくと、特にDigital Content Creationの結果が優秀だった。CPUはもちろんだが、アッパーミドルクラスのGeForce RTX 4070 SUPER搭載ビデオカードがスコアーを押し上げているのだろう。

 PCMark 10のモニタリング機能でCPUの動作クロックを確認してみると、低負荷時に動作クロックを下げて電力消費を抑えていた。また、複数スレッド処理が不要な時は動作クロックを5.5GHzまで上げ、短時間で処理が終わるように制御されている様子がうかがえた。

 消費電力の抑制はProductivityのWritingテストあたりが顕著。動作クロックの上昇は、EssentialsのWeb Browsingテストがわかりやすい。ちなみに、CPU温度が80度を超えた瞬間は、Digital Content CreationのVideo Editingテストの短時間だけ。

Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石
PCMark 10のモニタリング機能でCPU温度をチェック

 多くのテストは70度以下、高くても70度台で安定している。多くのシーンをテストするPCMark 10だけに、空冷CPUクーラーでも十分冷却できるということが確認できた。

 高性能なビデオカードを搭載しているBTO PCだと、画像生成AIの利用を目的に購入する人もいるだろう。というわけで、UL Procyonの「AI Image Generation Benchmark」も試してみた。

Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石
UL Procyon AI Image Generation Benchmark(Stable Diffusion 1.5 (FP16))の結果

 結果は2493スコアー。GeForce RTX 4070 SUPERなら妥当な値だろう。ビデオカードのメモリーによっても、画像生成速度は変化する。より高い性能が欲しければ、上位モデルのGPUを選ぶことはもちろん、メモリーの速度や搭載量も比べるといいだろう。

RTX 4070 SUPERでゲーミング性能もイイ感じ

 ゲーミングPCで最も重要な3Dグラフィックス性能。キーマンはGPUだが、CPUの性能が低いとその足を引っ張ることもある。まずは定番ベンチマークソフトの「3DMark」でチェックしよう。

 3DMarkには多くのテストがあるが、ここでは「Speed Way」の結果を見ていく。DirectX 12 Ultimateに対応し、リアルタイムのグローバルイルミネーションやレイトレーシングといった効果が多く、かなり重たいテストになる。

Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石
3DMark Speed Wayの結果

 スコアーは5179と高めで、GeForce RTX 4070 SUPERなら妥当な値だ。Ryzen 7 9700Xも相応の仕事をしたと言っていい。動作クロックはCPUもGPUも安定しており、本来の性能が出せているようだ。なお、3DMarkのほかのテスト結果は以下にまとめたので、ほかのPCとの性能比較の参考にしてほしい。

Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石
3DMarkの結果(まとめ)

 実際のゲームに近いテストで、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(以下、FF14ベンチマーク)も試してみよう。比較的軽めのMMORPGのため、画質設定は重くなるように「最高品質」を選択。また、GPUの素の性能を確認するために、解像度は4K(3840×2160ドット)、アップスケーラーはFSRで、3Dグラフィックス解像度スケールは「100」にした。

Ryzen 7 9700X搭載ゲーミングPCは空冷でも最大約80度、過熱するピーク性能競争に投じる一石
FF14ベンチマークの結果

 スコアーは10362で、評価は「快適」。正直、もう少し低いかと思っていただけに、4Kで1万超えのスコアーはいい意味で予想外だった。ただし、レポート出力機能でフレームレートを見てみると、平均で約73fps、最低で44fpsと少々物足りない。DLSS設定でアップスケールしてもいいかもしれない。

 ちなみに、解像度を下げてWQHD(2560×1440ドット)にすると、スコアーは19725、評価は「非常に快適」に跳ね上がる。最低フレームレートは69fpsまで底上げされるため、違和感のない滑らかな動きでゲームが楽しめるだろう。

 さらに、フルHD(1920×1080ドット)まで下げると、スコアーは25805で評価が「非常に快適」となるが、快適なプレイを求めるだけなら、ここまで下げる必要はなさそうだ。

まとめ:性能の高さはもちろん電力効率の高さが魅力

 従来、デスクトップPC向けのCPU性能競争においては、ピーク性能の高さに注目が集まっていた。これは最高速度を競う車と同じで、ロマンあふれる見方と言える。

 その一方で、燃費や操作性など、普段乗りの乗用車としての利便性は軽視されがちだった。いくら加速性が優秀で、最高速度が高くても、移動手段という本来の役割から目をそらせば、その本質は見えてこない。

 PCも同じで、いくらCPUのピーク性能が高くても、その性能が維持できなければ意味がない。たとえ維持できたとしても、巨大な水冷クーラーが必要となれば、扱いにくいCPUとなってしまう。

 その点、TDPが低くてもある程度の性能が発揮できるのであれば、小型で安価な空冷CPUクーラーでも運用できるようになる。つまり、より多くのPCに搭載しやすく、扱いやすいCPUとなるのだ。TDP 65WのRyzen 7 9700Xは、まさにその実用的なポジションを狙ったCPUと言えるだろう。

 特に電力効率の高いCPUは、G-Master Spear X670Aのような空冷ゲーミングPCにピッタリだ。安定した性能を備え、多くのゲームが快適に遊べるアッパーミドルクラスのゲーミングPCが欲しいというのであれば、ぜひチェックしてみてほしい。

 なお、現在サイコムは送料無料(実質2920円引き)、CrucialのT500(1TB/2TBモデル)が5000円引き、G-Masterシリーズの1万円引きというサマーキャンペーン(2024年9月9日まで)を実施中だ。標準構成なら29万440円、本稿の試用機構成なら34万8390円とそれぞれ1万7920円引きになる。購入する方は、この機会をお見逃しなく。

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