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現代のDALIの魅力が存分に詰まった新スピーカー「RUBIKORE」シリーズ発表

ASCII.jp / 2024年8月26日 11時0分

 ディーアンドエムホールディングスは8月26日、DALIの高級スピーカー「RUBIKORE」(ルビコア)を国内発表した。発売は10月になる見込み。

RUBIKOREシリーズ

 昨年40周年を迎えたDALI。同社はその前年(2022年)に超ハイエンドスピーカー「KORE」(1650万円/ペア)を発表。翌年(2023年)にはその技術をダウンサイズした「EPIKORE 11」(800万円/ペア)を投入している。いずれも市場の関心を集めたが、一般家庭で導入するのはかなりハードルが高い製品でもあった。

 RUBIKOREは、そんなKOREと技術的なエッセンスを共有する一方で、がんばれば手が届きそうな「現実感のある価格帯」を実現した製品だ。グローバルではミュンヘンのHigh End 2024で初披露。日本では7月のTIAS 2024で一般公開されてきたが、ついに正式発表。詳細が明らかになった。

Hi-Fiにもホームシアターにも使える

 ユニット構成や用途の違いで5機種をラインアップする。カラーはハイグロス・ブラック、ナチュラル・ウォールナット、ハイグロス・マルーン、ハイグロス・ホワイト(受注生産)の4色が選べる。

 なお、ハイグロス・マルーンは赤みがかった色調の光沢仕上げで、ブックシェルフ型の「RUBIKORE 2」とトールボーイ型の「RUBIKORE 8」「RUBIKORE 6」のみで選択可能だ。

 壁掛け型の「RUBIKORE ON-WALL」、センタースピーカーの「RUBIKORE CINEMA」はホームシアター用にインストール業者が導入するケースが多く、マルーン色の需要が低いためとのこと。とりわけセンタースピーカーでは、光の反射を嫌う人が多いため、光沢仕上げが避けられる傾向があるようだ。

 各製品の名称と価格は下記の通りだ。

「RUBIKORE 8」:70万4000円(1本) 「RUBIKORE 6」:52万8000円(1本) 「RUBIKORE 2」:26万4000円(1本) 「RUBIKORE ON-WALL」:30万8000円(1本) 「RUBIKORE CINEMA」:41万8000円(1本)

10年かけて新たなミュージカリティの改善に挑んだ

 RUBIKOREは、2014年に登場した「RUBICON」の後継シリーズとなる。RUBICONは「ルビコン川」を指し、有名なカエサルのエピソードに由来したネーミングだ。

 RUBICONシリーズでは、先行して市場投入していた上位モデル「EPICON」に続いて、SMC磁気回路やウッドファイバーコーンなど、現在のDALIが中核に据えている技術を導入した。しかし、独自性の高い技術であるがゆえに、他社ではユニットを作れない。DALIはRUBIKOREで規模の大きな自社開発ユニットの製造に取り組むことになった。つまり、RUBICONはビジネス的にも「後に引けない決断」であり、その意思を表明するシリーズ名を冠した機種でもあったのだ。

現在に至る、DALIのスピーカーラインアップ(変遷)

 DALIのラース・ウォーレCEOは「開発で一番重要なのは、十分な時間をかけること」(耳で聞いて調整を続け、追い込む)と表明している。RUBIKOREは上に挙げたラース氏の思想を体現した機種でもある。RUBIKOREはこれからのDALIを作っていく中核シリーズだが、RUBICONの登場からRUBIKOREの登場までには実に10年の長い時間がかかった。

 スピーカーの音作りでは、しばしばリファレンスとミュージカリティの対比が示されるが、DALIはまさに後者の代表格だ。象徴的な「In Admiration of Music」のキャッチフレーズが示すように、DALIは「音楽を楽しむためのスピーカー」を開発している。通常であれば2回はモデルチェンジしそうな時間をじっくりとかけて、DALIがRUBIKOREで達成しようとしたのは、周波数特性など数値だけでは語れない「人の心を動かす音の実現」だという。

 RUBIKOREは、DALIらしい音色を基調にしつつ、広大な空間再現、トランジェントのいい明瞭な音を出すという、ある意味矛盾した内容に取り組んだ。これを可能にしたのがDALIならではのオーディオサイエンスである。

 曰く「ツィーターに革新的な技術を用いれば、ウーファーも改善されなければならない」。特筆した技術がツィーターで開発されたらウーファーとエンクロージャーも改善しなければならない。シミュレーターや測定器などを利用するのはもちろんだが、その調整をじっくりと人の耳を通じて続け、時間軸のコヒレンス(一貫性)を目指す。10年の時間はそのために必要なものだったと言えるだろう。

自然由来の素材でロー・ロスを実現する

 RUBIKOREで使用されているソフトドームとウッドファイバーコーンはともに不快な音を出しにくく、幾分か揺らぎが生じる振動板(ダイヤフラム)だ。

 金属ではない有機的な素材の特徴は「内部損失の高さ」だが、これは一定のロスが発生するのと同義であり、裏を返せば音楽表現の繊細さを失いやすいという面もある。つまり、素材の特徴を生かしつつ、弊害となる損失を減らす工夫が必要になる。

 この制御を担のが、DALIの「ロー・ロステクノロジー」である。その紹介では「Wild horse(暴れ馬)」をコントロールするようなものだというコメントもあった。その実現にKOREで培った様々な技術が貢献したことは言うまでもない。

 ちなみに、D&Mでシニアサウンドマネージャーを務める澤田龍一氏によると、DALIのスピーカーはどのモデルも周波数によるインピーダンスの変動が少なく平らであるのが特徴だという。これは特にスイッチングアンプと相性がよいと言うことで、DALI製品を選ぶ魅力になりそうだ。

 筆者はこのコメントを聞いて、低域から高域まで一体感のある音作りであったり、決して高価になりきらない形で音楽の魅力を伝えるといったブランドの姿勢との一貫性を感じて興味深かった。

バスレフポートから内部をのぞく、自社開発のスピーカーであるという記載が見えた。

 従来のRUBICONとの差分も非常に大きく、単純な性能や再現力の差というよりも、時代を飛び越えたような感覚が味わえた。販売の主力となるのはRUBIKORE 8/6/2の3機種だろうが、後述するON-WALLやCINEMAもシアタースピーカーだからと切り捨ててしまうのはもったいない独創性を持つスピーカーだ。

 一般的な感覚で捉えれば、RUBIKOREシリーズはかなり高価なシリーズではあるが、その音を聞けば、充実した内容と開発者の熱意が必ず伝わってくるはずだ。全てを並べて眺めてみると、興味深いラインアップができあがったものだと感心する。

磁性流体をなくした新開発ツィーター

 RUBIKOREシリーズが採用した主要技術と、各製品の違いについて紹介しよう。ポイントとなるのは一新されたドライバーユニット群だ。中核をなすのは他のモデルと同様「ソフトドーム・トゥィーター」と「ウッドファイバーコーン」だが、KOREの設計思想(KORE Technology)を盛りこんだ新しいものとなっている。

高域ユニット、低域ユニット、ネットワーク回路、バスレフポートなどで大きく4つの技術が採用されている。

 ソフトドーム型ツィーターは29mmと口径の大きなものを採用。これは下の帯域まで特性を広げ、ウーファーとのクロスオーバー(下の帯域の再生)を楽にするためだ。25mmから1mmずつ大型化し、ついにこのサイズにまで大型化した。

 高域ユニットは、指向性を広くするために幅17×高さ45mmのリボン型ツィーターを組み合わせたハイブリッド構成。各部品はアルミダイキャスト製のマウントプレートでガッチリと固定している。「RUBIKORE 2」はリボンがなくソフトドームのみだが、これは高さの増加を嫌ったためだという(とはいえ、基本となるのはこの2ウェイ構成であり、トールボーイ型はこれに高域や低域を増強するためのユニットを追加したものと考えられる)。

 なお、リボンツィーターは振動板が縦長なので、音が水平方向に広がる効果がある。ラインアレイの線音源に似た効果だろうか。逆に垂直方向の広がりは抑えられる。設置時にはリボン型ユニットが耳の高さにくるようセッティングするといいそうだ。

高域ユニットは異なるタイプのドライバーを用いるハイブリッド構成、各部材はアルミダイキャストに固定されている。

 リボンツィーターはスーパーツィーターに近い役割を果たすが、ソフトドーム型も高域は切らず自然に減衰するところまで伸ばしている。ウーファー同様、ツィーターもスタガー接続になっているわけだ。

 リボン型ユニットを採用した目的は、20kHzまでの指向性をしっかりと確保するためだという。実はソフトドームも20kHzを超す高域の再現が可能だが、10kHz以上の音になると指向性が鋭く(ビーム状に)なり過ぎてしまう。薄いシルク素材を使ったソフトドームと金属製のリボンツィーターでは音色が全く異なるが、リボンツィーターが担当するのは14kHz以上の高域となるため、音色におよぼす影響はほぼないという。

ボイスコイルが磁気回路にはまる部分にはオイルを入れるのが一般的だが、DALIはあえてそれをなくした。

 高域ユニットでKOREから継承した技術が「Low-Loss ドーム・トゥイーター」だ。特徴は磁性流体を使用しない点にある。

 通常のドライバーでは、ボイスコイルを差し込む磁気回路の隙間(エアーギャップ)にオイルを流す。このオイルが磁性流体で、不活性なオイルに鉄粉を溶かすことで、流体でありながら磁性も帯びている。

 1970年代の終わりごろから使われ始め、磁気回路のギャップを狭くしてドライバーの性能を出すためには必要な技術だった。また、放熱効果を持ち、固体同士とは異なりボイスコイルがこすれて生じるノイズが発生しにくく、製造時の品質を保ちやすいなど使用するメリットが多いため、現在ではほぼ全てのドーム型ユニットがこのオイル(磁性流体)を採用している。

 ただし、液体である以上は粘り気があり、高域の鋭敏な反応をわずかに阻害する面もある。特にソフトドームツィーターで利用するオイルは、振動板素材のシルクが油を吸い上げないようにするため、粘性が高いものを利用するのが通常であるという。

 澤田氏の説明では「B&Wが金属ドームやダイヤモンドドーム向けに利用しているものより10倍粘る」そうだ。

ソフトドームツィータの口径は29mmにまで大口径化した。
磁気回路の断面模型、後ろの筒の中にSMCの粒が入った瓶が見える。

 とはいえ、一般のメーカーはそこはあまり問題視せず、便利さや製造管理のしやすさなどの利点を取る。しかし、DALIはこのわずかな違いを嫌って、量産できる範囲でぎりぎりの柔らさを持つオイルを使ってきたという。

 この思想をさらに突き詰めて、磁性流体を使わないユニットを開発したのがKOREであり、RUBIKOREでもその技術を継承した製品である。また、Low-Loss ドーム・トゥイーターを製造するためには、オイルを使わなくても問題がない耐熱性能、稼働する部分がこすれないようにする高度な品質管理、そのための設計技術などが必要である。

 その実現に徹底的に取り組んだ成果とも言える。

高域ユニットは、リボンツィーターも組み合わせたハイブリッド構成になっている。

 使用するマグネットを大きくして能率を高めているほか、ドームの裏側にくる吸音材や空気室に導く構造にも気を遣っている。背面の蓋(樹脂製)にも、リブを入れて鳴かないようにした。

 「RUBICONと比較すると一発でツィーターの音の違いがわかるはず」とのことだが、見た目にも決め手となるボイスコイルのボビンの精度(真円度やスリッドの精度など)が現れている。

独特な形状の溝をもつミッドレンジ/ウーファー

 ウーファーやミッドレンジ用には口径165mmのユニットを採用。新たに強力なダブル(反転)マグネットを導入し、「クラリティ・コーン ダイヤフラム」という特徴的な形状の振動板を採用している。振動板の写真を見ると円の周りに放物線状の凹みが5つあるのが分かる。

 この凹みは分割振動によって発生するピーク/ディップを防ぐために設けられている。実際にドライブするとこの凹みに沿って振動板がたわむため、特性を分散化=平均化できる。この凹みは前方向からのプレス加工で作っているが、前面に塗布している制動剤がうまくたまって、厚いところと薄いところが滑らかに変化するようになる。これも特性の改善には利点となる。

振動板の上に、放物線状の凹みがある点に注目。
分割振動の悪影響を低減できる。
ウーファーのボイスコイル
ダブルマグネットにして強化した他、放熱なども考慮して、空気が抜けやすい形状に。
中央の銅キャップをよく見ると、横にスリッドがある。

 DALIの特許技術であるSMC磁気回路も使用。SMCは磁気的には鉄と同様の性質を持つが、電気的には絶縁体になる素材。これを磁気回路に用いることで、磁気回路の損失となる鉄損(アイアンロス)、つまりボイスコイルの下側に回る渦電流、磁界の向きが変わる際に発生するヒステリシス損が生じない点が特徴となる。

 ロスと書くとエネルギーが減ることが問題のように聞こえるが、SMC磁気回路を使う利点は音響エネルギーのアップではなく非直線にならないようにする点にある(リニアにしないと歪みの発生につながる)のだという。

 つまり、そもそもの損失がなければ、こうした歪みも発生しないだろうという考え方だ。例えば、ヒステリシス損は行きと帰りの経路の違いをみるグラフだが、これが一致しなくても対策は取れる。問題は周波数ごとに変化してしまう点にある。

左下の図がボイスコイルの下に発生する渦電流の解説、その右にあるグラフが周波数別のヒステリシス損。右列がSMCを使用した場合で、グラフを見ると左列の結果にあるような平行四辺形型の隙間がない。つまりこれは行きと帰りが一致していることを示す。

 SMCの利用に加えて、銅キャップ(ショートリング)も使用している。Hi-Fiスピーカーではよく使われる部品で、ボイスコイル自体は空芯コイル、ポールピースにはまる位置に鉄芯が入っている。この際、インダクタンスがボールピースの位置が前か、後ろかで変わる。この調整のために用いるのがショートリングだ。

 ただし、ショートリングのキャンセル効果は位置で変化する。コイルがはまった状態で100%効き、外れると弱まっていく。この影響を加味して、DALIは銅のキャップにスリッドを入れている。これもインダクタンスの平衡性を高めるための仕組みで、歪みの低減に寄与するそうだ。

インダクタンスについてのグラフ。キャップを付けることで、かなり変動しなくなる(下の水色の線)が、前後の位置によって特性が変化するので、さらにスリッドを付けて対策。ほぼ平らな特性になる。

 電流歪みは400〜500Hzから上がり始め、3kHzの中音域で顕著に上がってくる。DALIのスピーカーはトールボーイでも2ウェイの構成に近く、高域と低域のクロスオーバーは2〜3kHz付近にある。つまりクロスオーバー付近で歪みが出やすいため対策が必要だ。

鉄で銅キャップも利用しないと300Hz付近から歪みが上がり、2kHz付近まで影響が出るが、SMCと銅キャップを使用した組み合わせでは歪みの影響が全くと言っていいほどでない。

 ネットワーク回路のローパスフィルターに用いるコイルの鉄心にSMCを活用しているのもポイント。ここもKOREから継承した技術(SMC-KORE クロスオーバー・インダクター)だ。SMCを使ったコイルは空芯コイルと同じぐらい歪み低減の効果をもつ一方で、空芯コイルのように大きなスペースが必要なく巻き数も減らせる。一方、コンデンサーにムンドルフのM-Capを採用するなどハイクオリティー品を選んでいる。DALIの回路は基板にパターンを描かず、各部品の脚をダイレクトに結線している。ハードボードにアイレットを打ち込んでそこに各パーツの脚を入れて半田付けする仕組みだという。

ネットワーク回路
SMC-KOREを使用したコイル、コンデンサーにはムンドルフのM-Capも使用。

 バスレフポートは「コンティニュアス・フレアポート・テクノロジー」として、ポートは円筒形の胴の部分の前後をラッパのように少し広げたものにしている。連続的に断面積が変わることでドライバーとポートの間の遅延を減らしたり、ポートを通る空気の気流が乱れることによって発生するポートノイズを低減する効果が得られる。実機を見ると、RUBICONにはない表面の溝も確認できる。その効果は10Hz付近で4〜6dB下がるという。

バスレフポートは、円筒の両端がラッパのように広がる形状だ。
RUBICON 2とRUBIKORE 2の背面の比較、バスレフポートの形状に加えて、バイワイヤリングの対応、非対応なども違いだ。

 脚部はアルミダイキャスト製で、スパイクの利用も可能。RUBIKORE 8と6の内部には仕切りがあり、空気室が上下に分かれている。なお、これはユニット数が増えても同じだが、それは基本となる2ウェイの部分を一つの部屋にまとめ、さらに低音だけを再生する部分は別の部屋に分けてお互いが混じらないようにするためだという。したがって、ダブルウーファーのRUBIKORE 8も部屋の仕切りは一つだけになるとのことだ。

RUBIKORE 6の内部構造

製品別の違い

 各製品のユニット構成を見ていこう。

 ハイエンドのRUBIKORE 8は、2ウェイ+0.5ウェイ+0.5ウェイ+0.5ウェイの構成となる。

 少々ややこしいが、その示すところは、29mmのソフトドームと165mmのSMCウッドファイバーコーンで組んだ2ウェイを基本に、スーパーツィーターの役割を果たすリボンツィーターで高域を、さらに165mmのSMCウッドファイバーコーン2つをスタガー接続して、低域を補う構成であるということだ。

 つまり、メインとなるハイとローのスピーカーはそれぞれ高域と低域を切らずに再生。これにクロスオーバーを少しずらした高域担当、低域担当のユニットの音を重ねて特性を補っているわけだ。

 本体サイズは幅220×奥行き444×高さ1100mmで、重量は30kg。周波数特性は38Hz〜34kHz(±3dB)で、感度は90.5dB、インピーダンスは4オーム。クロスオーバー周波数は500Hz、800Hz、2400Hz、14kHz。バイワイヤリング対応。

 RUBIKORE 6は、使用するドライバーは同じだがサブのローとして使うウーファーの数がひとつ減った2ウェイ+0.5ウェイ+0.5ウェイの構成。本体サイズは幅200×奥行き380×高さ990mmで、重量は23kg。周波数特性は38Hz〜34kHz(±3dB)で、感度は88.5dB、インピーダンスは4オーム。クロスオーバー周波数は800Hz、2400Hz、14kHz。バイワイヤリング対応。

 RUBIKORE 2は、ブックシェルフ型でリボンツィーターは搭載しない2ウェイ構成。本体サイズは幅195×奥行き335×高さ350mmで、重量は9.5kg。周波数特性は50Hz〜26kHz(±3dB)で、感度は87dB、インピーダンスは4オーム。クロスオーバー周波数は2800Hz。バイワイヤリング対応。

 RUBIKORE ON-WALLは、壁掛け型のスピーカーでバスレフポートも壁に反射させるのを前提としたスリッド形状になっている。リアスピーカーとしての利用はもちろんだが、省スペースなHi-Fiスピーカーとしても十分な性能を持つ。リボンツィーターを持つ2ウェイ+0.5ウェイ構成。本体サイズは幅278×奥行き142×高さ465mmで、重量は8.5kg。周波数特性は59Hz〜34kHz(±3dB)で、感度は88.5dB、インピーダンスは4オーム。クロスオーバー周波数は2900Hz、14kHz。シングルワイヤリング対応。

RUBIKORE ON-WALLは壁面設置を前提にスリッド上のバスレフポートを採用している。

 RUBIKORE CINEMAは、センタースピーカーだが縦置きでの利用も可能。その際には中央にある高域ユニットのネジを外して取り付ける向きを合わせる。センターだけでなく、左右やサラウンドスピーカーも同じ機種で統一することでL/C/Rのトーンを完全に同じものにできる。貴重な存在だ。リボンツィーターを持つ2ウェイ+0.5ウェイ構成。本体サイズは幅581×奥行き400×高さ197mmで、重量は16kg。周波数特性は49Hz〜34kHz(±3dB)で、感度は89dB、インピーダンスは4オーム。クロスオーバー周波数は2800Hz、14kHz。バイワイヤリング対応。

 いずれの機種もデンマークにあるDALI工場でのハンドメイド生産。キャビネットは外注だが、部品の生産や最終的な組み立ては自社工場で実施しているとのこと(ちなみにKOREはキャビネットも内省しており、そのために木工工場ごと買収したそうだ)。

タイムマシンで時代を飛び越えたような感覚

 ディーアンドエムホールディングスの試聴室でRUBICON/RUBIKOREの主要モデルを聴き比べられた。曲は女性ボーカル(ダイアナ・クラール)に統一。ブックシェルフ型のRUBICON 2とRUBIKORE 2、RUBICON 6とRUBIKORE 6、RUBICON 8とRUBIKORE 8という形で同クラスの製品を順に比較試聴した。

試聴風景(写真はRUBIKORE 2)

 まずはブックシェルフ型の2機種から。重量は新しいものの方が重くなっているそうだ。RUBICON 2のDALIらしい濃厚で美しい音色感は、最近のヨーロッパスピーカーに増えてきた軽くスッキリとした音調と比べると、少し時代を感じさせる面はあるものの、全体のまとまりがよく、いま聞いても違和感がない。ウッドベースは深くはっきりと沈み込み、声はスピーカーの奥に明快に定位する。

 一方のRUBIKORE 2は、解像感、抜けの良さが向上。、音源との距離感やその間の温度感を感じさせるほど明快な空気感の再現ができている。一気に時代が進んだような感覚で、目の前に現代的なサウンドが広がった。

 印象的なのは、部屋の湿気が減ったかのように思えるほど、音の手触り感や質感が実感できたことだ。ボーカルはRUBICONでは幾分かドライな印象だったが潤いや滑らかさがあり、より積極的に前に飛んでくる印象を持った。磁性流体の有無は中高域の抜けの良さに影響が出るとの説明だったが、声の再現の違いを聞けばそれも納得だ。

 ウッドベースやピアノのタッチなど、アタックの強い音の反応も非常に上がっており、声と楽器の質感の違いをより一層意識するようになった。

 RUBIKON 6のボーカルは、RUBIKORE 2と比べても近く感じる。ピアノの音色感、ウッドベースの低域感がより一層リアルになり、バランスがすごくいいスピーカーであることを実感した。ボーカルの勢いの良さは同程度だが、割合柔らかい再現。リップノイズの細かな音もよく拾っているので、情報量は豊富だが、こちらも少し時代が遡ったようなレトロな雰囲気の音色感になる。

 ちなみに、RUBIKOREでは、ウーファーの磁気回路の大きさは変わらないが、磁石が2枚になり、その分重くなっている。磁気エネルギーも1割程度アップしているそうだ。

RUBIKORE 6

 これをRUBIKORE 6に変えると、グッと透明感とか鮮度が変わる。録音環境がわかるぐらいの情報量で、感度も上がっているように思える。楽器のアタックは立ち上がりのスピードが増したようにも思えるし、ベースはよりアグレッシブ。ポルタメント的な弾き方などもよくわかる。音楽の弾む感じがより鮮明になり、声が空間に立ち上がる際のスカッとした爽快感が出て、リップノイズのパチパチとした音もより速く追従していた。

 RUBICON 8はウーファーが追加されるぶん能率もアップ。デモではそれを加味して音量が調節された。充実した低域によって音楽全体のスケール感が一回り大きくなる。さらに低域の嘘くささや、録音したものという人工的な感覚がなくなり、本物の音が鳴っているような響きを出す。

 ベースの沈み込みもより深く(ここは本当に深い)。ピアノの立ち上がりの硬さなどの表現も完璧に近い。その後に、ボーカルが加わってからのバランスもやっぱりいい。ここの楽器の響きが伝わるとともに、音楽的なまとまり感を持った音でもある。

RUBIKORE 8

 こうした感想を持ちつつ、真打のRUBIKON 8を聞く。

 驚くのはさらに一皮剥けた音が発せられたこと。ストリングスは鮮烈で、擦れる音の質感の良さ、ゴリっとした感触、勢いがある低い音の唸りなどを一連の試聴で初めて意識した。これまではDALIの美音系の音色に注意を奪われていたが、続くベースも弦を弾く音のブリンという張り、ズビンと沈み込む感じが積極的に感じられ、印象的だ。

 ピアノの音も極めて自然で、楽器そのものがなっているような感じがより一層増すし、プレーの細かなニュアンスも伝わってくる。

 最後に加わるボーカルは声の勢い、音色感、艶やかさなどあらゆる面で他の機種よりも優れているのに加えて、ピアノとの掛け合いが音楽的、つまり演奏者と演奏者の掛け合いとして聞こえてきたのが印象的だった。

 RUBICONシリーズは10年経っても褪せない魅力を持つスピーカーだが、RUBIKOREを聴くと一気に時代が変わったような感覚を持つ。明瞭さや抜けの良さ、臨場感が圧倒的に変わるのだ。上位モデルの深く明瞭な低域の再現が印象的だが、全体を通して中音域、高域の抜け感が相当に上がっており、空気の振動が軽く細かく伝わってくる感覚が新鮮だった。

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