公道用とレース専用タイヤは何が違う?ブリヂストンでタイヤの仕組みを聞いた!〜小野木里奈の○○○○○日和〜
バイクのニュース / 2023年4月10日 13時0分
『小野木里奈の○○○○○日和』は、東京モーターサイクルショー2023の「ブリヂストン」ブースで公道用、レース専用タイヤについて詳しく聞いてきました!
■ブリヂストンのタイヤの秘密を聞いた
皆さん、こんにちは!バイク好き女優の小野木里奈です。
世界耐久選手権(EWC)に参戦したマシンに跨らせていただきました
バイクの車体や乗っている私たちを支えてくれているのがタイヤです。以前、鈴鹿8耐で選手の方へ取材をすると、皆さんの口から「タイヤのグリップ力(タイヤと路面の摩擦力)」や「タイヤのゴムの硬さが温度で変わるのを感じる」などの言葉がたくさん出てきていました。
実際に走行した後のタイヤを見ると、表面がボロボロにめくり上がっていました。転倒がなかったカウルなどが綺麗に見えたバイクでも必ずタイヤが一番ボロボロになっているのが目立っていて、まるでレースの壮絶さがこのタイヤの表面に現れているようで、私も本当に驚きました。
ブリヂストン タイヤ開発部門の原田陽一さんに、お話を聞きました
では、「タイヤなら車もバイク、レースなども同じ製品なのか」というと、そうではないのです。タイヤは、公道用やレース専用があるのです。今日は、株式会社ブリヂストン タイヤ開発部門の原田陽一さんにバイクのタイヤについて初心者目線で突撃取材をしました!それでは、いってみましょう!
2022鈴鹿8時間耐久レース取材時、スタート前のマシンのタイヤにはタイヤウォーマーが使われていた
小野木:去年、初めて鈴鹿8耐を観戦した時、新品のレース用タイヤの表面がツルツルで驚きました。タイヤの表面以外にもレース用と公道用の違う点はありますか?
原田さん:構造上では大きな違いはありませんが、レース用の方が路面が高温の場合でもしっかりグリップする素材のゴムを使います。レース用のタイヤは低温ではグリップ性能が低いので、事前にわざわざタイヤウォーマーというカバーを利用してタイヤを温めます。そのため、耐熱性が強いゴムをレース用タイヤでは使用します。一方、公道用タイヤで同じようなゴムの素材を使うと、事前に温めることもしないですし、レースと違ってタイヤの表面温度は低いのでグリップ力が弱くなり、転倒の原因となります。
公道タイヤの表面に付けられている溝のパターンに決まりはない
小野木:ゴムの素材の違いが一番大きいんですね。ちなみに、公道タイヤの表面に付けられている溝のパターンは決まりがあるのでしょうか?
原田さん:決まりはないのですが、この溝についても設計の肝になっているんです。レース用は、単純にグリップ力を優先するので、接地面積を大きくするためにも溝がありません。公道用のタイヤ表面に見られるこの溝は、まず排水を目的にしています。
『T32』は、独自に開発した「パルスグルーブ」と呼ばれる溝の形状が主な特徴
小野木:知らなかったです!この溝はそもそも排水が目的だったんですね!
原田さん:はい。この溝のパターンも色々と工夫されているんですよ。例えば、私が設計した新商品の『BATTLAX SPORT TOURING T32(以下、T32)』は、独自に開発した「パルスグルーブ」と呼ばれる溝の形状が主な特徴です。一般的なタイヤですと、真っ直ぐ溝が入っていることが多いんですよ。それに対し、『T32』は一つの溝でも細い部分や太い部分があります。そして、その太い部分の溝の中には小さい「ディフレクター」が設計されています。これにより、この溝部分で水の流れを整えて排水効率を上げるという設計の思想の下で作りました。この小さい溝とうねうねとした溝が合わせ技でウェットな場面でも排水効率を上げてくれるんです。
小野木:この小さな溝の形でそれだけ排水の効率が変わってくるんですね!
原田さん:ドライなシーンでも、同じようにこの溝の入れ方で変わってくるんです。溝の入れ方で接地面をコントロールすることができます。タイヤのたわみ方を変えるために溝のパターンを変えたりなどで曲がりやすくなるんですよ。グリップ感を感じるような接地状態を作るためにも、溝の入れ方を工夫しています。こうしてタイヤが並んでいるのを見ると、溝のパターンだけでも各タイヤどれも違いますよね。これだけでもそれぞれのキャラクターを感じられると思います。
ツーリングとして使用することが多い人は『T32』がオススメ
小野木:例えば、初心者の方が「最初にタイヤを変えてみたい」と思った時におすすめのタイヤはどれですか?
原田さん:ツーリングとして使用することが多いなら『T32』ですね。やはり、路面が濡れるウェットシーンにも強いというのが大きな理由です。ツーリングで長く走っていると、急に雨が降ってくることがあるので、急な環境変化にも強いといえます。さらに、ハンドリングについても扱いやすく、バランスがしっかり取れているタイヤだと思います。
スポーツライディングを楽しむ人には『S22』がオススメ
小野木:路面が濡れている状況でも活躍できるタイヤなら、初心者だけでなくベテランの方からも好まれそうですね。
原田さん:もう一つおすすめなのは、スポーツ系の『BATTLAX HYPERSPORT S22 (以下、S22)』です。扱いやすいハンドリングを感じられる『T32』に対して、『S22』はさらにスポーツライディングを楽しめるタイヤです。『T32』よりもひらひらと倒しやすいので、公道で走る時もスポーティーさを感じられると思います。
小野木:初心者の方の中ではバイクを倒して曲がる動作が怖い方もいるので、タイヤのおかげで倒しやすいという点はありがたいですね。
原田さん:ゴムの素材や溝のパターンの入れ方でもバイクの倒しやすさが変わってきます。それによって、よりシャープだったり、マイルドさを感じることができるんですよ。
過酷な場面でもライダーの命を守るために誇りを持ってタイヤを設計している
小野木:最後に、タイヤを開発する上で大切にしている思いをお聞かせください。
原田さん:やはり、第一に安全性です。バイクの車両を2つのタイヤだけで支えていることと、路面との接地面は名刺1枚分しかないんです。例えば、サーキットでは時速300km以上で走行するので、過酷な場面でもライダーの命を守るために誇りを持って設計しています。
小野木:初心者の方には、どんなところに注目していただきたいですか?
原田さん: どれを選んでもタイヤの性能は自信を持っているので、乗り味だけでなく、見た目にも注目していただきたいです。バイクのタイヤは、特に後ろから見るとよく見えるじゃないですか。そういう意味では、様々な設計の思想の下、溝の入れ方を変えているのて見比べる楽しさもあると思います。乗り味にはそれぞれのキャラクターの違いがありますが、最初は見た目からタイヤに注目していただくこともおすすめです。
■10年後も20年後も走るワクワクを提供したい
小野木:たしかに、「見た目からでもいいんだ」と思うとタイヤの世界にも入りやすそうです。
原田さん:はい。私たちはモータースポーツ業界やバイク業界を盛り上げるために、今年の東京モーターサイクルショーのブースでも、ただタイヤを展示するだけでなく、レース業界で活躍する技術や二輪車専用タイヤのブランド『BATTLAX』の40年の軌跡についても展示させていただきました。「10年後も20年後も走るワクワクを提供したい」という思いを持って、これからもモータースポーツやバイクの文化発展を支えていきたいと思っています。
二輪車専用タイヤのブランド『BATTLAX』シリーズ
小野木:「10年後も20年後も走るワクワクを提供したい」という言葉、素敵です!これからもたくさんの方にバイクの楽しさを伝えていただきたいです。貴重なお時間、ありがとうございました。
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