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台湾KYMCO「KRV180TCS」は完全にスポーツバイク!? 既存の軽2輪スクーターとはまったく異なる乗り味を実現

バイクのニュース / 2023年6月10日 11時0分

台湾KYMCO(キムコ)の「KRV180TCS」は、排気量175ccの水冷単気筒SOHC4バルブエンジンを搭載する軽2輪スクーターです。フラッグシップモデル「AK550」のDNAを受け継ぐコンパクトな車体は、なかなかどうして、スポーティな走りを見せてくれました。

■運動性と快適性の向上を目指して、革新的な構造を採用

 軽2輪でもフルサイズの250ccクラスではない、排気量150~200cc前後のスクーターは、かつての日本では脚光を浴びる機会がめったにありませんでした。それが近年は、原付2種プラスアルファの性能を評価する人が増えています。中でも好セールスを記録しているのは、ホンダ「PCX150」からその後継機である「PCX160」(2021年型)、「ADV150」や同じく「ADV160」(2023年型)、ヤマハ「NMAX155」、「トリシティ155」といった日本車勢ですが、最近になって登場した150~200cc前後のスクーターで、私(筆者:中村友彦)が最も感銘を受けたのは、台湾のKYMCO(キムコ)が2022年から発売を開始した「KRV180TCS」です。

KYMCO「KRV180TCS」(2022年型)に試乗する筆者(中村友彦)KYMCO「KRV180TCS」(2022年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 このモデルの最大の特徴は、スクーターでは一般的なユニットスイング式、一体構造のエンジン+駆動系+スイングアームではなく、新規設計のエンジン+駆動系を3本のマウントボルトでフレームにガッチリ固定し、独立式のアルミスイングアームを採用したことです。

 同社のウェブサイトで各部の図を初めて見たときの私は、バネ下重量の軽減で運動性と快適性の向上を目指したにしても、軽2輪クラスでそこまでやるのか? と感じました。

 ちなみに、そういった構造の先駆車はヤマハ「TMAX」シリーズで、キムコの旗艦を務める「AK550/ST」も同様の構造ですが、スペース効率を徹底追及した「KRV180TCS」は、前後長の短縮に貢献する独創的な同軸式トランスミッションを採用しています。

 また、パワーユニットの超コンパクト化によって実現した50:50の前後重量配分、クランクケース内に備わる軽2輪以下では貴重な2軸式バランサー、ライバル勢を大幅に上回る44度のバンク角なども、このモデルの特徴と言うべき要素でしょう。

KYMCO「KRV180TCS」(2022年型)KYMCO「KRV180TCS」(2022年型)

 さて、構造と運動性の話が先行しましたが、「KRV180TCS」はスクーターの重要課題となる利便性や快適性、さらには高級感もしっかり追求しています。

 シート下のトランク容量は、「PCX」シリーズには及びませんが、「NMAX」よりはちょっと多い25リットルを確保していますし、フロントボックスの上には通常用と急速充電用、2系統のUSBソケットを設置しています。そして鍵の抜き差しが不要のスマートキーや、カスタムパーツ然とした雰囲気のバックミラー、光が内から外に流れるシーケンシャル式ウインカー、任意でオンオフができるトラクションコントロールなどからも、キムコがこのモデルにかける情熱が伝わってきます。

■ユニットスイング式では実現できない世界

 150~200ccクラスの乗り味を語るときは、「250ccと125ccのいいとこ取り」という言葉がよく使われます。事実、最高出力:17ps/装備重量:143kg/ホイールベース:1400mmの「KRV180TCS」は(参考として他のキムコの数値を記すと「X-TOWN CT250」は20.3ps/179kg/1500mm、「レーシングS125」は11ps/127kg/1270mm)、その言葉に合致する資質を備えているのですが、試乗中の私の中に「いいとこ取り」というイメージは浮かびませんでした。パワーや車格よりも、ユニットスイング式を採用する既存の軽2輪以下のスクーターとの差異のほうが、このバイクにとっては重要な要素だったのです。

エンジンをフレームマウント、アルミ製の独立したスイングアーム、同軸トランスミッションを採用し、多くのスクーターが採用するユニットスイング式(一体構造のエンジン+駆動系+スイングアーム)とはまるで異なるエンジンをフレームマウント、アルミ製の独立したスイングアーム、同軸トランスミッションを採用し、多くのスクーターが採用するユニットスイング式(一体構造のエンジン+駆動系+スイングアーム)とはまるで異なる

 と言っても、私は既存の軽2輪以下のスクーターに不満を抱いていたわけでありません。むしろ最近のモデルはユニットスイング式のマイナス要素を感じないほど、運動性も快適性も高いレベルに達していると感じていました。ところが「KRV180TCS」の車体のフィーリングは、ライバル勢とは次元が異なっていたのです。

 具体的な話をするなら、路面の凹凸の吸収性が素晴らしく良好なので、高級車に乗っているかのような安心感が得られますし、リアから伝わるトラクションは素晴らしく濃厚なので、どんな場面でも自信を持ってアクセルを開けられます。

 その恩恵は市街地でも十分に感じられますが、真価を発揮するのは、やっぱりワインディングロードでしょう。そういう場面での「KRV180TCS」の印象は完全にスポーツバイクで、前述した50:50の重量配分や44度のバンク角の効果もあって、コーナリングにひたすら没頭できるのです。逆にこの乗り味を知ってしまうと、ユニットスイング式のスクーターを走らせているときは、自分の中にセーブという意識があったような気がしてきます。

■100km/h巡航が余裕でこなせる

 前述したように、「KRV180TCS」が搭載する新設計パワーユニットの最大の特徴は前後長の短さです。とはいえ、私が試乗中に実感した美点はパワフルさと滑らかさでした。もっとも17psの最高出力と1.58kg-mの最大トルクは、排気量を考えれば驚くほどではないのですが、ふとメーターを見ると、予想以上のスピードが出ていることが少なくなかったのです。また、高速道路で感心したのは、既存の150~160ccスクーターのように、マシンに頑張らせている感が無く、100km/h巡航が余裕でこなせることでした。排気量が大きいのだから当然と感じる人がいるかもしれませんが、その余裕には2軸バランサーや独立式スイングアームも貢献しているはずです。

ワインディングロードでの「KRV180TCS」の乗り味は、完全にスポーツバイクの印象ワインディングロードでの「KRV180TCS」の乗り味は、完全にスポーツバイクの印象

 そんなわけで、興味深い要素が満載の「KRV180TCS」ですが、日本メーカーの150~160ccスクーターより10~15万円ほど高い56万1000円(消費税10%込み)という価格には、抵抗を感じる人がいるかもしれません。

 とはいえ、革新的な構造を考えればその価格は当然のような気がしますし、現在の250ccクラスのスクーター、69万1900円のホンダ「フォルツァ」や、65万4500円のヤマハ「XMAX」を比較対象とするなら、個人的には妥当、あるいは割安ではないかと思います。

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