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水冷2ストV型3気筒!! ホンダ「MVX250F」は世界GPマシンとともに登場した?

バイクのニュース / 2023年7月17日 19時40分

時代はレーサーレプリカブームの創世記、1983年にホンダが開発した高性能スポーツモデル「MVX250F」は、世界GPチャンピオンマシン「NS500」と同じ水冷2ストローク90度V型3気筒エンジンを搭載していました。

■世界GPも2スト市販車も、チンチンに熱かった1983年

「MVX250Fは水冷2ストV型3気筒エンジンを搭載……」と聞くと、レースファンなら1983年にホンダに16年ぶりの世界ロードレースGPチャンピオンをもたらした「NS500」が2ストV型3気筒だった……と思い出すはずです。

水冷2ストローク90度V型3気筒エンジンを搭載するホンダ「MVX250F」(1983年)水冷2ストローク90度V型3気筒エンジンを搭載するホンダ「MVX250F」(1983年)

 そして同時に「レーサーレプリカ」という言葉も浮かびますが、現在の目線で見ると「どこがレーサーレプリカなの?」と首をかしげる人も多いはずです。

 1970年代はGPレーサーと市販車のスポーツバイクは全く別のバイクでした。レーシーなルックスのフルカウルを装備した市販車が発売されたのは80年代中盤のこと。とくに普通二輪(排気量400ccと250ccクラス)ではGPレーサーのイメージを模したバイクもたくさん発売され、当時は若者を中心に大変人気がありました。

 これらの市販車を改造したレースもブームとなり「レース用車両とできるだけ近い市販車ほどよく売れる」という現象が起きます。

 次の段階ではさらにエスカレートして、レース用車両と市販車を同時開発したり、最初にレース用を作り、公道用に手直しして市販車を発売する、という状況になりました。もはや市販車がレプリカではない時代が到来し、現在のスーパースポーツに至っています。

ハンドルまわりは「VT250F」(1982年)と似た意匠。タコメーターは11500rpmからレッドゾーンハンドルまわりは「VT250F」(1982年)と似た意匠。タコメーターは11500rpmからレッドゾーン

 1983年に発売された「MVX250F」はフルカウル以前のバイクなので、レプリカではなく通常のスポーツバイクの外観です。ハンドル位置もその後の低く垂れ下がるようにセットされたセパレートタイプのハンドルバーから見ると高めです。

 当時のホンダが進めていたスポーツバイクデザインの流れに沿っており、一足先にデビューした「VT250F」(1982年)と共通している部分も多く見られます。

 しかしよく観察すると、「NS500」と同じようにヘッドパイプからメインフレームが2本伸び、その上にGPレーサー風の三角形の燃料タンクを搭載しています。

 さらに、膨らみのあるチャンバータイプのエキゾーストパイプやシルバーのサイレンサーなどは、80年代初期の目線で見ればレーサーの雰囲気を醸し出しています。

 スポーツバイクからの過渡期、あるいはレプリカ創世記と言えそうな「MVX250F」のデザインですが、肝となるエンジンはGPレーサー「NS500」と共通の水冷2ストローク90度V型3気筒なのです。

シリンダーは下側に2気筒を配置するが、市販車としては十分なバンク角を確保。上側のシリンダーは後方排気シリンダーは下側に2気筒を配置するが、市販車としては十分なバンク角を確保。上側のシリンダーは後方排気

 実際のGPレーサー「NS500」は下(前方)のシリンダーが1つで上(後方)が2つのV型3気筒、「MVX250F」では下のシリンダーが2つで上が1つとレイアウトは異なりますが、Vバンクの隙間に3つのキャブレターを配置するなど共通点もあります。

「NS500」とはVバンクの角度も異なる90度で、理論上一次振動をゼロとし、2サイクル特有の振動を軽減しています。

 ホンダが1982年シーズンから世界GPに2ストロークエンジンの「NS500」を投入し、ベルギーGPで念願の初優勝。翌1983年には天才ライダー、フレディ・スペンサー選手がホンダに初の世界GP500ccチャンピオンをもたらします。

 栄光のマシンとなった「NS500」ですが、1984年からはさらにパワーのあるV型4気筒の「NSR500」へバトンタッチしました。

 さて、1982年の初優勝が7月、そこからたったの8カ月しか経っていない1983年2月に「MVX250F」が発売されています。

 ということは……「NS500」がデビューする前から、同時進行的に「MVX250F」も開発が進んでいたはず……いずれにせよ1983年のタイトル獲得時には、多くの「MVX250F」が街を走っていた事になります。

燃料タンクはメインフレーム形状に合わせたレーサーに近い形状。エアクリーナーはタンク前方の内側に配置燃料タンクはメインフレーム形状に合わせたレーサーに近い形状。エアクリーナーはタンク前方の内側に配置

 世界GPレーサー「NS500」(排気量498.6cc)の最高出力は120ps/11000rpmと発表されています。一方の「MVX250F」(排気量249cc)は40ps/9000rpmを発揮。ライバル車を凌駕する馬力となるはずでしたが、国内他メーカーが発売する2ストマシンのパワーアップ合戦に巻き込まれ、奇しくも「NS500」と同じタイミングの1984年春、次期モデル「NS250R」(水冷2ストローク90度V型2気筒エンジン)へバトンタッチしました。

 ホンダコレクションホールに展示された撮影車両は「黒/青」のカラーリングですが、ラインナップにはメインカラーであるホンダワークスの「赤/青/白」のトリコロールのほか、「黒/赤」もありました。

 国内販売計画は年間30000台となっており、「MVX250F」とともに「NS500」の活躍と栄光を味わったオーナーも多かったのではないでしょうか。当時の販売価格は42万8000円でした。

■ホンダ「MVX250F」(1983年)主要諸元
エンジン種類:水冷2ストロークピストンリードバルブ90度V型3気筒
総排気量:249cc
最高出力:40PS/9000rpm
最大トルク:3.2kg-m/8500rpm
全長×全幅×全高:2010×735×1155mm
シート高:780mm
車両重量:155kg
燃料タンク容量:17リットル
フレーム形式:ダブルクレードル
タイヤサイズ(前):100/90-16
タイヤサイズ(後):110/80-18

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

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