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ホンダ「ジャイロ」系を凌駕!? 圧倒的な積載性能を実現したピアッジオの3輪スクーター「マイムーバー」とは

バイクのニュース / 2024年1月13日 11時10分

独創的な3輪スクーターで知られるイタリアの「PIAGGIO(ピアッジオ)」は、フロント1輪/リア2輪のデリバリー用スクーター「Mymoover(マイムーバー)」をラインナップし、日本市場へは2023年から導入されています。いったいどんな乗りものなのか? 試乗しました。

■イタリアならではの配達業務用スクーター

 ホンダ「ジャイロ」系のイタリアバージョン? イタリアの「PIAGGIO(ピアッジオ)」が2020年から(日本市場への導入は2023年から)発売を開始した配達業務用スクーター「Mymoover(マイムーバー)」と初めて対面した私(筆者:中村友彦)はそんな印象を抱きました。その一番の理由はフロント1輪/リア2輪というタイヤの配置ですが、フロントボディが左右にスイングすることや、直立状態での停止を可能とするチルトロック+パーキングブレーキを装備している(サイドスタンドとセンタースタンドは存在しない)ことなども、「マイムーバー」と「ジャイロ」系に通じる要素です。

ピアッジオ「Mymoover(マイムーバー)」に試乗する筆者(中村友彦)ピアッジオ「Mymoover(マイムーバー)」に試乗する筆者(中村友彦)

 もっとも、マイムーバーはジャイロ系とは一線を画する魅力を数多く備えています。中でも最も目を引くのは、最大積載量60kg/容量261Lの巨大なリアボックスですが、フロントキャリアも相当に頑丈な構成で、最大積載量は20kgです(ただし法規を考慮して、ピアッジオ・グループ・ジャパンはトータルでの最大積載量を60kgと公表)。

 ジャイロ系がリアボックスを標準装備していないこと、ホンダが設定する最大積載量がフロント5kg/リア10kg(法規では30kgまでOK)という事実を考えれば、マイムーバーの積載性能は驚異的と言って良いでしょう。

 それに加えて、フロント16インチ/リア12インチの大径タイヤ、3輪すべてに配置されたブレーキディスク+キャリパー、10.9psを発揮する排気量125ccクラスのエンジンなども、マイムーバーの特徴です(ジャイロ系は、タイヤがフロント10インチ/リア8インチ、ブレーキは機械式ドラム×3で、排気量50ccクラスのエンジンは最高出力4.6ps)。

 こういった事実から推察すると、マイムーバーは運動性や快適性という面でも侮り難い資質を備えているのです。

 しかし価格(消費税10%込み)の方は、「ジャイロX(ベーシック)」の40万4800円(スタンダードは42万67800円)、「ジャイロキャノピー」の57万900円を大幅に上回る、94万6000円です。

 充実した装備を導入しているのだから、それはまあ当然……と言えなくはないですが、配達業務用スクーターとして考えるとなかなかの高額車です。

■ピアッジオの配達業務用モデルと3輪車

 さて、冒頭からジャイロ系との比較をメインに話を進めてしまいましたが、ピアッジオは昔から配達業務用モデルと3輪車に一家言を持っているメーカーで、そもそもホンダの動向はまったく意識していないような気がします。

ピアッジオ「Mymoover(マイムーバー)」は容量261Lの巨大なリアボックス(最大積載量60kg)、フロントラック(最大積載量20kg)を装備し、驚異的な積載性能を誇る ※合計の最大積載量は60kgまでピアッジオ「Mymoover(マイムーバー)」は容量261Lの巨大なリアボックス(最大積載量60kg)、フロントラック(最大積載量20kg)を装備し、驚異的な積載性能を誇る ※合計の最大積載量は60kgまで

 ピアッジオ初の配達業務用3輪車は、1948年に登場した「APE(アペ)」(イタリア語でミツバチ)です。もっとも、当時の「ベスパ125」の車体後半を大改造して生まれた「APE」は、1950年になるとキャビンを追加し、日本で言うオート3輪的なスタイルになったので、2輪車の発展型というイメージは持ちづらいかもしれません。

 では2輪車ならではの利便性を活かした、ピアッジオ初の配達業務用スクーターは何かと言うと、2001年から発売が始まった「Liberty Delivery(リバティ・デリバリー)」です。排気量125ccと50ccクラスが存在するこのスクーターモデルは、「APE」のような大改造車ではなく、あくまでも「リバティ」の小変更仕様で、現在でも欧州各国で販売が続くロングセラーになっています。

車体を大きく傾けた状態。最新のチルト機構により片側最大45度まで傾けることが可能。また駐車時は車体を垂直の状態でチルト機構をロックし、パーキングブレーキによってホイールも固定されて自立するためスタンドは必要としない車体を大きく傾けた状態。最新のチルト機構により片側最大45度まで傾けることが可能。また駐車時は車体を垂直の状態でチルト機構をロックし、パーキングブレーキによってホイールも固定されて自立するためスタンドは必要としない

 また、配達業務に特化した車両ではありませんが、フロント2輪/リア1輪という構成でスクーターの世界に革命を起こした、2006年以降の「MP3」シリーズも、ピアッジオならではのこだわりを存分に感じるモデルです。残念ながら現在の日本では販売されていませんが、ヨーロッパ市場では根強い人気を維持し、近年では排気量300cc、400cc、530ccのモデルがライナップしています。

 ちなみに、初めてマイムーバーを見たときの私は、どうしてピアッジオらしさが濃厚な「MP3」をベースにしないんだろう? という疑問を抱きましたが、巨大なボックスの採用を考えると、装着位置は車体後部、タイヤはフロント1輪/リア2輪がベストだったのでしょう。

■軽快なハンドリングと、良好な乗り心地

 ここまでに述べたように、マイムーバーは配達業務用スクーターです。と言っても使い方はオーナー次第で、私はキャンプツーリングにも向いているんじゃないか、と思っていました。驚異的な積載性能のおかげで、荷物のパッキングで悩む必要が無いわけですから。

ハンドリングは軽快で乗り心地も良好。大径ホイールに細身のタイヤなどが功を奏しているハンドリングは軽快で乗り心地も良好。大径ホイールに細身のタイヤなどが功を奏している

 そんな意識で臨んだ試乗で、私が意外だと感じたのは軽快なハンドリングです。200kgの車重やリアボックスの巨大さを考えれば、重ったるさや曲がり辛さを感じても不思議ではないのに、実際のマイムーバーはスイスイと表現したくなる感触で車体の向きが変わるのです。

 さらに言うならこのモデルは乗り心地、路面の凹凸を通過した際の衝撃吸収性もなかなか良好です。おそらくそういった特性には、大径なだけではなく細身のタイヤ(3輪とも90mm幅。ジャイロ系のタイヤ幅はフロント100mm/リア130mm)と、あえて控えめにした……と思えるリアのトレッド幅、低めではあっても低すぎない760mmのシート高などが利いているのでしょう。

 ただし、マイムーバーが本当にキャンプツーリングに向いているかと言うと、それは微妙なところでした。私がそう感じた原因は車重に対するエンジンの非力さで、上り坂ではどうしても物足りなさを感じるのです。

 と言っても、本来の用途である配達業務なら現状のパワーでもまったく問題なさそうですが、個人的には排気量150cc仕様があってもいいんじゃないか……と感じました。

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